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ハーフビラ 集合と出発

......................................................................


〜村長宅〜


「よし、みんな集まったか。急に招集かけて悪かったな。」


なぜ、ルーグがみんなにこんな話をしているのか。少し時を遡る。


薄明の空。重たい目を擦り向かった先は村長の家だった。

ここ最近、疲れ果てるまで鬼ごっこをやってとにかくオーラの使い方について学んでいた。昨日もオーラの練習と3回目になる鬼ごっこをやったのだが3回目ともなるとあの二人、オーラ使って逃げたりしやがったから俺もついて行くのに必死だった。グローは空飛んだり、リッギなんか夜にめちゃめちゃ目立つ服の癖に目の前からスっと消えたんだ。気配は消えていなかったから、なんとか捕まえられたがあれには驚いた・・・。

リッギ曰く空気中の光の反射をどうにかこうにかして姿を消したらしい・・・要するに何言ってるのかわからなかったんだ。

まぁ、そんなわけでまだまだ眠たいんだがグローに起こされてラルと一緒に欠伸をしながらここに来た。


村長宅に着き、周りを見ると勢揃いって感じだ。

団長、ビーメさん、村長が奥の方に。

そこから、リッギ、ヂーラ、グロー、ガミル、バイル、ラルと俺。

ゴスは体調もだいぶ良くなり、日常生活に問題はないとの事だったがまだ安静にすると言うことで最近は引きこもりだと苦笑いで言っていた。

その話を聞いて安心した覚えがある。


俺が眠いながらも今朝と昨日を思い出したりして思考を回転させていると、団長が話を続ける。


「それで、集まってもらったわけなんだが・・・。誘拐の件についてだ。

ここ3日間みんなのおかげで情報がだいぶ集まった。それでだ。早めにこの件を片付けたい。今この瞬間にも子供が誘拐されている可能性もあるからだ。」


それぞれ真剣な目で団長の話を聞く。


「今、妖精付きの根城の有力候補が2つある。・・・グロー。」


グローは徐に大きい地図を取り出して、皆に説明する。


「はい〜。1つは、森の北。それぞれのハーフビラのちょうど中央から北の方へいったところの洞窟。2つは、森の東。リッギさんのハーフビラのところから少し北へ行ったところにある滝に隠れた洞窟。消去法で絞ったんだけど〜この2つだけは調べられる材料が少なくてね〜。でもまぁ、どちらかが黒だと思う〜。」


「さすがだね。ここまで絞れるとは思わなかったよ、グロー。」


グローを褒めるリッギ。グローは嬉しくなさそうにリッギを見て次に褒めてほしそうにバイルを見る。


「うん。すごいわグロー。」


「ありがとう!バイル〜。」


リッギは面白くなさそうな顔をするが、すぐに真面目な顔に戻り先を促すように団長を見る。


「というわけだ。さすがに洞窟の中に突っ込めとは言えないのでな。2つまで絞ってもらいそこで止めてもらった。

そして、今日の昼からここをあけて二手に分かれて敵を叩きたい。」


「完全にハーフビラを空けるのですか?」


ガミルが問う。


「いや、ここにはガミル。お前に残ってもらいたい。」


「・・・・。」


ガミルは納得行かなそうな顔をしている。


「人数を捜索にさきたいが、ハーフビラも護りたい。だから、俺たちの中でも手練にここにいて欲しいと考えた。ガミルお前だったら村全体を監視出来るだろう。何かあった場合もお前だったら俺たちにすぐ知らせる方法がある。1番の適任だ。ちなみにヴァンリーにも任せているから何かあったら頼るといい。」


「・・・。分かりました。」


ガミルは、少し目線を下げるが団長の言葉に頷く。ゴスの事を思い出しているのだろうか・・・。


「それで、二手に別れるチームだが・・・。2つの候補が割と近いところにあるのはせめてもの救いだな。

北の方へは、グロー、バイル、ヂーラ。

東の方へは、俺、リッギ、ラルとぬい。

ビーメと親父には今日はハーフビラの者達を徹底して見てて欲しい。」


「なるほど、バランスがいいですね。」


「うん〜。異議なし〜。」


グローとリッギは、すぐ様に反応し賛成の意思を見せる。

グローの横にいるバイルはとても不安そうな表情をしている。ヂーラは目を瞑ってうなづいている。

ラルは・・・俺をなでている。不安を拭うためだろうか・・・、ずっと撫でられているがそのままでいる。

ビーメと村長も、無言で頷く。


「あと、準備に関する事だが日を跨ぐことことなくいける距離だからな。荷物は出来るだけ少なくしよう。ポーションはヴァンリーが持ってる分を全部買った。あとでチームで分けて持って行ってくれ。そして、今回でケリをつけたいが焦りは禁物だ慎重に事を進めるようにしてくれ。それと、これだが・・・。」


そう言って団長が取り出したのは白い鳩のような人形?だ。


「この伝書コットにオーラを通すと俺のところに来る。敵がいるとわかった時点で飛ばしてくれ。いないとわかったら足に何かメモを貼り付けて飛ばしてくれ。グローに預ける。」


グローは鳥を受け取る。


「俺の方にもグローに飛んでいく伝書コットがある。こちらはこっちにいると分かった時だけ飛ばそう。」


「わかった〜。」


皆が頷く。


「では、後はチーム事にやり方やらを決めてくれ。この後、食事をして準備万端にしてから出るぞ。」



「「「はい。」」」


それぞれが返事をしながら首を縦に振る。


「では、拠点に移動しよう。まだ、朝早いのでな。ハーフビラの皆にも挨拶を忘れるなよ!」


ここで解散のようだ。次はご飯か。

にしても、俺が鬼ごっこで疲れている間にいろいろあったようだ。

俺も引き締めなくちゃな。

チームを見る限り、両方とも限りなく黒に近いから五分五分になるように設定したって感じだな・・・足引っ張らないようにしなきゃ。


その後は、皆パタパタと忙しなかった。

ご飯を食べている間も、敵の力についての考察と対処法や子供たちの安否など、どちらにしても妖精付きの場合妖精と一緒に倒さないといけないらしいのでこちらから出向く必要がある。

・・・ん?なんか頭の上で影が揺れている。


「ラル?」


ラルはコクコクと船を漕いでいた。

俺は起こそうとするが、それをリッギに止められた。


「いいよ。ぬいくん。ラルアちゃんは起きたらちゃんと動ける子だ。少し寝かしておこう。」


そう言って優しいスマイルで微笑む。


「最近のお前らの頑張りは俺の方にも報告がきてるぞ。」


そう言ってリッギの隣に座ったのは、団長だった。


「そうなのか?そういえば団長は最近見てなかったけど忙しかったのか?」


「ははは。俺もやることが色々合ったんだ。国に要請してみたり、ギルドに依頼を出してみたり・・・結果は散々だったが。」


「まぁ、そうだよね。妖精付きなんてここ何十年も聞かない話だったし。最近は妖精も姿を見せなくなったみたいだからね。」


「あぁ。信じちゃくれなかったからな。それにこの目で見たわけでもないし、確固たる自信が俺にもなくてな。」


団長とリッギの間でどんどん話がすすむ。


「まぁ、しょうがないよ。ルーグ。それに今ここのハーフビラには優秀な者が集まっている。きっと大丈夫さ。」


「あぁ、できれば皆に危険な真似はさせたくないが。そうも言ってられないのでな。」


「子供たちも・・・。」


リッギがそう言って黙ってしまった、そして誰も先の言葉が見つからず沈黙が続く。

そうなんだよな。子供たちが待っていればいいが・・・覚悟はしとけと団長も先ほど言っていた。

ここ最近自身のオーラのことしか考えていなかったが、この問題に関わった以上俺もちゃんと考えなきゃいけない。


「さて、そろそろ。本格的に準備するぞ。ぬいもラルもまだ寝起きだろうから、少しアップしとけ。ラルもそろそろ起きるだろう。」


俺は頷く。団長とリッギはそれぞれ立ち上がり武器やポーションの確認を行なっている。

ポーションってやつは聞いたことがなかったのでご飯の前にラルに聞いたんだが、あの緑っぽい液体を傷の部位にかけると止血と細胞の活性化を促してくれるらしい。便利なものだ。



「ラル・・・。ラル!」


俺は、ペチペチとラルの頬を痛くないように叩く。

するとラルの目が開き、ニヘッと笑う。

っ可愛い!!

が、今日は見惚れている暇がないのでそのままペチペチと叩いてラルを完全に起こす。


「ラル。団長が少し体を動かしてこいって。」


俺がそういうと、うーーんと両手をあげて背伸びをするラル。

目に涙を浮かべながら、俺の方を向き「わかった」と言って立ち上がる。

俺は、ラルの肩に移動し一緒に裏手にある訓練場に行く。

訓練場には人影が見える。


「あら、ラルとぬいじゃない。あなたたちも体を動かしに?」


バイルだった。彼女はヴァンリーの元で新しく手に入れたであろう深い青のタイトなワンピースに腰からひらりと体半周分の白い布が巻かれている。やはり胸元は大胆に空いていて彼女のファサッとした胸の羽が生えている。今日もセクシーだ。


「うん。」


ラルが答える。


「そうなのね。」


・・・そう言って、バイルもラルも無言で体を動かしている。

すごい緊張感だ。

俺はこんな緊張感を体験したことはないので体が硬っているのを感じる。

ふぅ・・・、なんだかもう一杯一杯だ。

正直、このいつもと違う空気は嫌だ。

早く日常に戻りたい。


「ぬい。動き変。大丈夫?」


「え?あ、あぁ。」


「本当ね・・・ん〜どう?私と少しやってみない?軽い試合。なんだかんだ、私はぬいちゃんの成長を見ていないから少し見たいわ。」


「いいのか?」


体を動かすと言っても、全然動いている気がしないのでバイルとやることでいい刺激になるかもしれない。


「うん。軽くね。全力でやると疲れちゃうから。」


「わかった。」


それぞれ、位置に着く。


「行くよ。スタート」


バイルが距離を取る、早い。接近戦しかやってこなかったぬいは後手に回ってしまった。

だが、バイルの動きを観察しオーラを使って風を纏う。

一本一本の矢を十分に交わしながら近づく・・・が、バイルは的確な位置に矢を放ちなかなか近づけさせてくれない。さすがだ。

うう・・・近づく道筋が見えない。どうする。


「ここまでかしら?ぬいちゃん。」


「まだだ!」


俺はずっと練習してきた、あれをやってみる。


”ピーラ”|《猫玉》


体を覆うように、丸い球体が出る。そして、その球体の下からは光を纏った風を肉球の形で出す。その風をコントロールしながら一直線にバイルの元へ行く。

バイルは矢を次々と放つが全て弾かれる。そして、バイルにもう少しで届くというときに”パァン!!”と、ピーラが弾けた。


「きゃっ!」


小さく悲鳴をあげるバイル。動揺した俺は空中で身動きが取れずそのままバイルの胸に体全体を埋める。あわわわわわ!!?ふかふかで気持ちいい!ちょっとスリスリしてしまいそうだ。そう思いながら、張り付いていると後ろから二つの殺気が飛んでくる。

俺の背筋と尻尾が伸びる。


「いつまでくっついてるんだ〜。エロにゃふ〜。」


「ぬい。えっち。」


え?え???????

なんで、ラルも怒ってるの〜!?

俺は、ヒョイっとグローに持ち上げられラルの方に投げられる。ラルは俺を受け取るとじーっと俺を覗き込む。

俺は気まづいのでチラチラとラルを見ながら目を逸らす。


「バイルの胸は気持ちよかった?」


「へ?う、うん。ふわふわだった。」


ラルに聞かれ、素直な感想を口にする。

が、間違いだった。ラルは、ジト目で見てきて俺の背中からはあからさまな殺気が飛んでくる。この殺気はグローで間違いない。


「そっか、ぬいも大きい方がいいんだね。」


ラルは自分の胸を見てため息をつく。

背中を向けて見ないようにしていたが、グローがまたもや俺を持ち上げ・・・


「帰ってきたら俺ともやり合おうね〜。ぬいくん」


グローがニコッと笑う。

足から頭まで無意識に震えた。

寒気がしたので、グローの手からするりと抜け出して地面に降りて文句を言う。


「な、なんだよー!グローもラルも!ただの事故じゃん!故意じゃないって!」


「ぬいって中身実はおっさん?」


「違うって!」


あ、いや総年齢を考えるとおじいちゃん?

だけどなんでラルにまで責められてるんだ。ショボーンとする。

バイルは後ろでクスクス笑っている。先ほどの緊張感が嘘のようだ。


「まぁ、バイルのを堪能してしまった罰は帰ってら受けてもらうよ〜。」


「ば、罰!?やめろよ〜!!」


訳がわからないが相当不味かったらしい。


「何ワイワイしてんの?もう準備はできたのかい君たち?」


そう言いながらやってきたのはリッギだ。


「あ〜!リッギさん。聞いてくださいよ〜。ぬいが俺のバイルの胸に張り付いてあのふわふわを堪能してたんですよ〜。」


リッギがこちらを見る。


「それは、本当か?ぬいくん。」


「え・・・っと。うん、でもなんでみんなに責められているかわからないんだ。事故なのに。」


「それで?気持ちよかったのか?」


「え・・うん。」


そのとき、リッギの首筋に剣が止まる。


「リッギさん。何考えてるんですか〜?」


グローは、ニコニコしながら剣をじわじわと首に寄せている。

その横で俺は、ラルにじわじわと寄られていた。


「ぬい、私も頑張って大きくする。だから、こっちにおいで。」


俺は、何がなんだかよくわからない状態に目を回していた。

ううう、どうすればよかったんだよ〜。もう〜。

そう思いながらもラルの腕の中に収まる。


「ぬい。ラルもいつかああなるからね。」


とヨシヨシしてくれる。

その隣の、リッギとグローは一触即発な感じで互いを睨み合っている。


そこへ、準備を終えたであろう団長とヂーラが来て声を掛ける。


「何してるんだ、お前たち。仲がいいのはいいが、気を引き締めていくぞ。ほれ、時間だ。」


リッギとグローは互いに舌打ちをして離れる。

リッギはこっち側に、グローはバイルの元へ行き、ヂーラもグローの後に続く。


「じゃ、行くぞ。連携が大事だ。些細なことでも報告しあえよ。」


皆が無言で頷く。


「さぁ。行こうか。」


そう言って俺たちは、門へ向かう。

門には、村長とビーメ、ガミルとゴス、ヴァンリーもいた。


「気をつけてな。」


「みんな無事を祈っているわ。」


村長とビーメが代表して、送りの言葉をかけてくれる。

横にいる3人もそれぞれ頷いて送り出してくれる。ヴァンリーもガミルも黙っているとやはり緊張感がものすごく上がる。ドキドキしてきた。

俺たちも静かに頷き門を出る。


さぁ、初体験の森だ。俺は緊張とワクワクとプレッシャーを感じていたがラルが隣にいる安心感を覚え、朝とは違うリラックスした気持ちでみんなについていった。


……………………………………………………………


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