ハーフビラ 戦いと結末
………………………………………………………..
〜ぬいside〜
俺たちは走っていた。
ここにいないってことは、グローの方にいる可能性が大ってことだよな。
大丈夫かな、グロー達。
俺は、張り切って索敵をする。
洞窟を抜けた後は少し急勾配な坂を登ったり崖を登ったりして険しい道をひたすら北に向かって走っていた。
「ここらで少し休憩をしよう。」
そう言って団長が手で合図を出す。
ラル、俺、リッギは止まりそれぞれ止まり、団長の方へ集まる。
「ルーグ、ちょっと変じゃない?」
「あぁ。・・・判断に迷うな。」
「何?」
そんな二人のやりとりにラルが聞き返した。
「・・・グローからの連絡が遅すぎるんだ。」
リッギが最初に答える。
ルーグも眉間に皺を寄せて考え込んでいる。
「あぁ。可能性としてだが・・・一番良くて敵がいなかったがモンスターなどに伝書コットを破壊されてまだ連絡できていない。最悪の場合は、敵がいて伝書コットを飛ばせないくらい状況が逼迫している。」
「・・・なら、早く行った方がいいんじゃ。」
俺は最悪のパターンを想像して震える。
「あぁ。行きたいが・・・。みんな大丈夫か?」
団長も少し焦っているようだ。
しかしここまで走り通しのため、敵地に着いた時もし戦闘だった場合、疲れていては助っ人の意味がない・・・だが、迷いなく全員が頷く。
ラルも刀に手を伸ばして臨戦態勢だ。
俺もさらに範囲を広げるように、索敵に集中する。
「よし、スピードをあげるぞ。」
団長は眉間に皺を寄せつつ少しホッとしたような顔になり先陣を切る。
3人が走り出す。
遠いところにモンスターの気配はするが、このまま走っても鉢合わせることはない。
なので余計なことは言わずそのまま集中する。
そして・・・見つけた。あの気配だ。
「団長!!いたよ。前方。グローが言ってた洞窟で間違いない。そこに、あの男の気配ともう一つ気持ち悪くてデカイ気配。グローは多分戦闘中、ヂーラは何か拘束されているような・・・。バイルの気配がない代わりにバイルに似ているけどあの男寄りの気配。あと3人、小さい今にも消えそうな気配が奥にある。」
みんなの顔色が悪くなる。
団長がまずいという顔をしながら、無言で更にスピードをあげる。
それに二人がついていく。
そうして、洞窟にそのまま突入し奥へ突っ切った。
日の届かぬ暗闇を抜けた先に上から光が差し込んでいるところがあった。
目の前の光景に皆が状況を理解しようと足を止める。
「団長・・・。」
グローは、肩で息をしながらこちらを見る。頭から血を流し背中には見たことのある矢がいくつも刺さっている。
その反対側にはリッギがあの男に紫の光った縄のようなもので拘束されている。こちらも肩から大量の血が出ていて意識がないように見える。
そこに、とても不快で脳をつんざく様な高い声が響く。
「あら〜、いいところだったのに・・・またお客さん?」
その声の主を探す。
中央。そこだけに明かりを差し込む光は彼女の艶やかな黒い羽とと赤い吊り上がった目に反射して惑わすような輝きを放っている。
「あぁ、トルーこの子らだよ。この前邪魔してきたの。」
「へ〜、なるほどね。じゃあお仲間ってとこかしら。」
「あぁ、きっとそうだよ。」
女と男はこちらを向いて思わず耳を塞ぎたくなるような声で会話をする。
「グロー!!」
視界の端で倒れそうになるグローを支えに団長が飛ぶ。
そこに見覚えのある矢が飛んでくる。矢の方向にいたのはバイルだった。
ひどい顔色をしていて、目からは涙を流し口を震わせていた。
「バイル!何をす・・・」
”ピュン!!”
矢が団長の頬をかすめる。
「あら、外しちゃうなんて悪い子ね。」
そう言ってトルーと呼ばれた女はバイルに扇子の先をむける。
それを合図に、団長はグローを一旦引き離し、バイルと正面から向き合う。リッギはあの”アヴァラス・アエテルヌム・ノビリゥス”と自己紹介していた男に向かって行く。
そして、ラルはトルーという女に刀を抜き”魅カレ”を発動する。女はちょうど俺くらいの大きさだろうか・・・その背中に生えた黒い羽をはためかせてラルの攻撃を躱す。
「あら〜。悪い子のお仕置きを邪魔するなんてもっと悪い子。」
「バイルに何をした。」
「あら〜、悪い子だからてっきりブスかと思ったけど・・・。」
そう言って女はラルを舐め回すように見る。ラルは構えたままだ。
「へぇ〜。おもしろいわ・・・その髪とその目。ふふふ。あなたのこと食べちゃいたい♪」
そう言って、女は扇子を広げて黒い光を纏った風を繰り出す。
俺も、ラルの肩で防御の構えをとる。
「あら、にゃふなんて連れて・・・あなたには似合わないわ。モンスター風情なんて捨てなさい。」
「ぬいは、相棒。捨てない。死んでも一緒。」
その言葉に俺はドキッとする。
聞き覚えのあるその言葉に。
トルーに向けるラルの表情は真剣そのものだ。
「あら、そんなに美しい目でこちらを睨まないで。そうね・・・まずは躾からかしら。」
そう言って、女は口元を歪めて笑う。
…………………………………………………………..
〜リッギside〜
リッギと向かい合うアヴァと呼ばれた男は、リッギなんて興味ないとばかりにトルーを見つめている。
そんな男に対してリッギが話しかける。
「初めまして。まずはその縛ってる子、うちの子なんだけど返してくれる?」
「・・・答えはノーだ。」
リッギは男が答えるのと同時に懐潜りに剣をふる。
男は躱そうとしたが、当たる直前でフッと剣が消えて見失い剣を目で探すが思わぬ所から現れた剣に対応できず、横腹に一撃喰らいよろめく。
その間にリッギは男からヂーラを奪い取り光の拘束も断ち切る。
「素直じゃないね。返してもらったよ」
「若造が。それくらいでどうしたというのだ。」
舌打ちをしながら答える男、その横腹には傷跡はもうなかった。
「へぇ。自己回復?まるでルクスのモンスターだね。それに、どう見てもアンゲルだよねその耳、その格好も。」
「他人のうんちくほど退屈なものはないな。もう一度問うぞ。それがどうした。」
男がそう言った瞬間・・・
”ラクス・ペスタ”|《光乱》
リッギの剣が光を乱反射し、まるで嵐のように風が吹き荒れる。
あちらこちらの壁に傷跡がついていき、光の乱反射によって視界も奪われる中、リッギは動きを止めずに男の死角に回り込む。
「ふん。そくらいの光でどうにかできると思うなよ。若造。」
そして紫の光に包まれる男にリッギが仕掛ける。
だが、男は何もしようとしない。
リッギの剣が猛烈に傷をつけていくが、その側から回復していく。
不思議なのは洋服までもが再生すると言うことだ。
「気色悪いね。おじさん。」
「若造には、私のスマートさは一生わからないだろうな。」
「わかりたくもないね。」
そう言って、今度は男が紫の光った鞭を表し仕掛けるがリッギも姿を消す。
それを鼻で笑い。
男は紫の鞭で周囲に攻撃を振るっていく。
「っ!!」
そのうちの一撃がリッギに当たる。姿を表したリッギを見てチャンスとばかりに、男の顔が歪み紫の光がリッギへ向かう。
その瞬間、体制を崩したリッギの前に大きい影ができる。
「ごめん、リッギさん。ポーションありがとう。」
そう言って、ヂーラが紫の光を受け止めていた。
「はぁ・・・あなたも大人しくトルーの餌になれば楽なものを。」
やれやれと呆れながら、口を開くアヴァラス・アエテルヌム・ノビリゥス。
その男が出した杖が真っ黒に光だし、男の顔が黒く照らされる。
セプトペカタ
男がそう呟く。
すると、円を描くように天井に広がったのは何か生き物の様なものを型どった光だった。
3人を黒黒と照らし、唯ならぬ雰囲気を醸し出す。
「貴様ら若造にはどう話してもわからんだろうが・・・この世界はとうの昔に見捨てられているのだよ。
神・・・創世神・アルアラーマは何を考えこの世界をつくったのか。ほんと甚だ疑問だ。・・・我ら神子をまだ恨むというのか。」
自ら創り出した天井に浮かぶ光をはるか遠く過去を憂うように呟く。後半はもはや何を言っているのか、2人とも聞き取れなかった。
「おじさん。いや・・・おじいちゃんかな?大丈夫?老人の昔話ほど退屈なものはないよ?」
眉間に皺を寄せ、アヴァを怪訝そうに見るリッギ。
「だから、言ったであろう。貴様らのような単細胞には分からぬと。貴様らは感謝した方がいい、何故なら私は生きる化石なのだから。せっかくだ・・・少し神話で遊んでやろう。」
そう言ったアヴァは、
ファスト・プライド
と呟き、天井で描かれた絵から1頭の獅子が出てきてアヴァの隣へ行く。
そのライオンは、金色の光を放つたてがみと目、黒黒と揺らめく胴体だ。
リッギとヂーラが構える・・・
………………………………………………………………
〜ルーグside〜
「やめろ!バイル!」
バイルの矢は容赦無くルーグを襲う。
バイルの”ウェント・アルカス”は怒涛の攻撃を見せる、ルーグは躱しながら隙がないか探すが的確に急所を狙ってくるバイルの攻撃は防ぐので手一杯だ。
「おい!グロー。状況説明できるか。」
肩で息をしているグローはとても苦しそうだが、ポーションのおかげか先ほどよりも顔色が良くなっていた。
「団長・・・バイルは・・・。」
ルーグはグローの言葉に耳を傾けるが、その続きが返ってこない。
「・・・」
「・・・」
「おい!!!グロー!」
「・・・」
「・・・」
「あの妖精に・・・隷属されました。」
やっと口を開き、細々と答えるグロー。
「隷属!?」
「あれがいうには、血の契約をしたと。」
「じゃあ、どうなるんだ。バイルは。」
「・・・わかりません。」
・・・重く苦しい。そんな空気が流れている。
グローの声は、どんどん弱くなり消え入りそうになりながらも団長に情報を渡す。
そんな会話が続こうともバイルの攻撃はやまない。
「グロー立て・・・立て!」
「・・・」
「グロー!!」
グローを奮い立たせるため声をかける団長。
それに応えたグローは、口から血を流し喉を掻っ切ったのではないかと思わせるほどの荒声をあげた。
「僕に何しろっていうんですか!バイルを・・・バイルを殺すんですか!」
グローは体全体が震えている。
ルーグたちが来るまでひたすらに状況を改善しようとしてうまくいかなかった。
今の彼には、彼女を殺すという選択肢が脳内をよぎって仕方ないのだろう。
「違う!動きを封じる。周りをみろ!今は俺たちがいる!今、ラルがあれを足止めしてるんだ。その後のことは・・・後で考えろ!」
「っ!はい・・・。」
そう言って、血を流しながらグローが立つ。
そして、ルーグと二手に別れる。攻撃対象が増えたバイルは迷うことなくグローを狙って攻撃する。
バイルは訓練場で見せた”ウェント・アルカス 第十式 プルウィア”の構えをとり矢を放つ。グローの脳裏に、先日の訓練場の時にあの技を繰り出したバイルの笑顔が蘇る。
グローは泣きそうな顔をしながらも矢を全て弾き返す。決して彼女の方に矢が返っていかないように。
「バイル、止まれぇぇぇぇぇ!」
そう叫ぶルーグが、バイルの後ろから風のオーラで包み拘束する。
「はぁはぁ、手強かった。こんなに強かったのかバイル。」
「・・・彼女はハンターをやめる前はもっといろんな技で敵を翻弄してました。」
そう言うグローの肩は震えていた。
っと、その時。
ルーグと団長に物凄い風とふたつの影が襲う。
ラルとぬいだ。ぬいは身を翻して着地するが、右前足を怪我したのか少し体勢を崩す。ラルも着地するが、こちらも腕から血を少々流している。
更にこちらに向かって、金切り声が飛び耳を劈く。
「ちょっと!あなたたち、目を離した隙に他人の玩具をそんな雁字搦めにして!何してんのよ!」
物凄い剣幕で怒るトルー。
それにキレたのはグローだ。
「バイルはお前の玩具じゃない!」
訳のわからない理由で怒ってるトルーにグローは叫びながら素早い足さばきでフェイントをかけながら攻撃を仕掛ける。
「そうそう、その表情。癖になりそう。あの子と契約してよかったわ〜。」
そう言いながら、トルーと呼ばれた女はグローの顔をみてうっとりする。だが、すぐに扇子を構えてグローに鋭く黒い風を送る。
「でも、私にそんな物騒なものを向けるのは感心しないわね。」
グローは剣と一緒に後ろへ飛ぶ。
「これが・・・妖精。」
ルーグは相手の力量を図るため、全てを見逃すまいと見ていたが・・・。あまりの差に思わず鳥肌が立つ、まるでここにある全ての神素が彼女の思い通りのように見えた。
「さぁ、私の可愛いラルちゃん。あなたもそろそろ私の魅力に気づいたのではなくて?」
「全然。」
ラルはキッと妖精を睨む。
先ほどまで、笑顔だったトルーだが扇子をパチンと閉じ真顔でラルに向けていう。
「いいわ。それなならもう力尽くで気づかせてあげる。」
「ラル!!血に気をつけろ!恐怖を感じた血を奴が取り込むと契約になる!!」
グローが叫ぶ。
トルーは、ラルの側にきて扇子で攻撃を仕掛けながら口を開く。
「あら、あんなに取り乱してたのに。よく私の話を覚えているわね。ほんと、優秀だこと。まぁ、でもラルちゃん。あなたと仲良くなりたいの。早く私の魅力に気付いて。」
ラルは、防御と特有のオーラを使ってうまく立ち回っているがキツそうだ。
それをフォローするように、ぬいとルーグがトルーをサイドから挟む。
トルーは軽々しく上に避けるが避けた先にいたのはグローだった。トルーは目を見開き、宙を舞うグローは剣を抜き光を放つ。
”コーラス・グラディウス
トルーのちょうど真上からほぼゼロ距離で降り注ぐ光にトルーは悲鳴をあげる。
「ぎゃあああああ!」
そして、光が収まり土煙が立ち込める。
それぞれ次の体勢を整えながら情報をこれでもかと待つ。
やがて見えてきたトルーは、羽が無数に散った状態になりあのさくらんぼのような赤い目はさらに濃く暗い赤に染まり光っていた。
「・・・怒らせたわね。」
”ドレイン”
そう言った、彼女は全身から黒い風を吹き散らした。
ぬいはとっさに"ラ・ピーラ"を発動する。
だが、団長、グローは苦しみながら膝を着く。顔色もどんどん悪くなる。
「おかしい」そう思ったぬいは、ラルをみる。こちらも苦しんでおり、今にでも倒れそうだ。
「死んでも一緒。」
頭の中で言葉が反響する。
そして蘇る記憶。
初めての生で俺を拾ってくれた女の子。
毎日、爆発音が響く中俺をずっと抱きしめてた女の子。
そして、あの日笑顔で走ってきた途端飛び散った女の子。
・・・同時に蘇る感情は身体全体に纏わりつきぬいの身体を硬直させる。
その時、ラルがこちらを苦しそうに見る。
そしてその時動いた口は「逃げて」とそう言っていた。
はっと我に帰るぬい。
・・・絶対に死なせない!
足にありったけのオーラを流しラルの方へ必死に駆けつけ肩に乗る。
"ラ・ピーラ"をラルも覆えるくらい広げる。
オーラの消耗が激しいが、なんとか形になった。
「あ、ありがとう。ぬい」
ラルの声を聞き、少しホッとするが状況は好転していない。
「なんだ、あの風。俺は何も感じなかったんだけど。」
「多分オーラを奪う技。力が抜けた。」
ラルが説明してくれる。なるほど、オーラが体から抜けるのか。
「あら・・・これが効かないなんて。そのにゃふ。ただのにゃふじゃなさそうね。なら、これはどうかしら。」
トルーはさらに扇子を仰ぎ、風を増す。範囲も広がったようでリッギ達と戦いを続けていた男の方から叫ぶ声がする。
「あぁ!トルーやめておくれ、私まで枯れてしまう!!」
男の方を見ると、リッギとヂーラもボロボロだった。
肩で息をしているから生きているんだろうが身体のあちこちが腫れて血を流している服もほぼ破けていて危険な状態だ。
「あら、アヴァ。・・・あなたもういらないわ。飽きちゃった。じゃあね。」
「トルー!」
そう叫んだ瞬間、男は砂と化した。
ラルと俺は唖然とその光景を見る。
先ほど、男が枯れると言った。・・・もしかしてみんなああなるのか!?
俺は、すぐみんなを囲えるほどのドームを作ろうとするが倍にしたところから全く大きくならない。
見ている景色も霞む中、無我夢中でオーラを流す。
・・・くそっ!みんなが!みんなが!早くしないと!
焦っている俺の頭に手が乗る。ラルの手だ。
「私のも使って。」
頭から暖かく透き通るようなものが流れ込んでくる。
なんだろう、ものすごく馴染む。力が湧いてくるようだ。
「ありがとう。ラル!」
流れてくるラルのオーラも使いながらどんどん範囲を広げる。
「な、何よそれ!なんで、魔力なのにドレインが効かないのよ!おかしいでしょ!」
そう言ってさらに扇子から黒い風を出す。
だが、気づけばトルーをも包み、やがては洞窟を丸ごとを俺たちのオーラが包んでいた
暖かく満月のように優しい光。まるで空気を浄化しているようだ。
「な、何よこれ!神素感じられないし!!!っていうか、あなたこっち側なんじゃないの!?なんでこんな力があるのよ!」
訳のわからない言葉をラルに浴びせる、トルー。
ラルは刀を抜く。俺もその刀に手を載せる。すると、刀が凄まじい光とともに少し長くなった。その激しく光る刀を見たトルーは怯え、羽は散っていき先ほどまで赤々と光っていた目の光は消えていた。
「や、やめて・・・!」
やめない。こいつは許さない。
ラルが動く。俺はラルの手から肩へ飛び、光の風をラルに纏わせる。
そして・・・
”魅カレ”
ラルの渾身の一撃がトルーに入る。
彼女は光の粉となって消えた。
辺りには静寂が残る。
お、終わった・・・。俺は緊張の糸が途切れラルの肩から落ちそうになる。
ラルもフラッとし一緒に背中から地面に倒れ込む。
その時、"ポスッ"誰かが受け止めてくれる。
「ありがとう。ラル。ぬい」
グローだった。
グローは頬に涙を伝わせていた。
そして、優しくラルと俺を地面に寝かせる。
グローは口を震わせている。
「グロー!」
聞き覚えのある声がグローを呼ぶ。
グローが振り返る。
いつの間にか拘束が解けたバイルが立っていた。
力が抜けて立てないグローにバイルが駆け寄る。
抱き寄せる。二人は激しく抱き合った。
バイルは「ごめんね」を何回も繰り返していた。そんなバイルを声を押し殺すようにずっと撫でるグロー。
俺は、ラルを見る。
ラルは天井を見上げていた。
そして俺を見ると微笑んでお腹に乗せてくれた。
上下に心地よく揺れるラルのお腹の上はとても暖かい。
・・・にしても、鬼ごっこ以上に疲れた。もう戦いたくない。もう寝たい。
そうしていると、団長やリッギとヂーラもやってきて側に座る。そして俺たちを撫でてくれた。
「ありがとうな。」
「いやぁ、あの光にはびっくりしたね。急にオーラが回復するんだもん。すごいよ君たち。」
「本当に助かりました。ラルちゃんとぬいくんがいなかったら死んでいましたね。」
「あの妖精が使ったドレインとかいうのやばかったね。」
「あぁ。本当に危なかったな。」
みんな、生きて帰れることにホッとしているようだ。
だが、そこに重々しく口を開いたのはヂーラだった。
「ルーグさん。子供たちの件なんですけど・・・。」
雰囲気がまた重くなる。
「あぁ。」
「私たちがここに来た時、鳩はあのアヴァという男に壊されました。そして戦闘が始まろうとした時、一番最初にグローさんが聞いてたんです。子供はどこにいるのかと。」
「あぁ。」
「あの妖精が案内すると俺たちを連れていき、あの穴へ・・・中は・・・」
ヂーラの顔がどんどん曇る。
「・・・行こう。ヂーラ、リッギ一緒に来てくれるか。」
「はい。」「うん。」
そう言って、3人は奥の方へ行った。
グローとバイルはまだ抱き合っていた。お互いに存在を確かめ合うように何度も何度も口づけを交わしていた。
ラルを見ると寝ていた。相当疲れたんだろう。あの妖精と戦っている時のラルは本当にすごかった。器用にいろんなことしていて、邪魔しないようにフォローするのがいっぱいいっぱいだった。・・・うん。眠たい。もう無理・・・。意識がそこで途絶えた。
……………………………………………………………
〜ハーフビラ〜
黄昏時、現実とは思えないあの空間からやっと抜け出しハーフビラへと1歩ずつ近づく。
意識が途絶えたラルとぬいはグローの腕の中にいた。
バイルも顔色も良くなり動きも悪くないがまだ晴れた表情はしていない。
そして、生き残った子供たちはラルたちのあの光が影響したのか顔色はいいが意識を失った状態にあった。3人をルーグとヂーラで運んでいる。
全員が帰還すると、ガミル、ゴス、ヴァンリー、村長、ビーメが迎えてくれた。
ハーフビラの者達はもう帰路についているようだった。
服はズタボロだが目立った傷もなく無事帰ってきたみんなを見て、ビーメは泣き出しルーグの元へ駆け寄る。ガミルとゴスは子供たちを受け取った。ヴァンリーはグローの腕の中にいるラルとぬいを見てなんだか難しい表情をしごにょごにょ言っている。そこにグローが蹴りを入れる。
それぞれ無事に帰って来ることが出来た興奮で騒ぎ出す。
そこへ村長がルーグに話しかける。
「帰ってきたところすまないが・・・ルーグ、報告だけでも聞いて良いか?」
村長は、ちょっと申し訳なさそうにするも心配で気になるのだろう。ルーグに声をかける。
「あぁ。わかった。グロー、ぬいとラルは拠点の方に頼む。そして、バイル。お前ら二人は当分休みだ。しっかり休めよ。
ガミルは子供達を運んだら、ゴスと一緒に来いお前も気になるだろう、よくここに残って守ってくれた。
リッギ、ヂーラ二人ともありがとう。
今日は疲れているだろう、しっかり休んでくれ。あとのことは明日ゆっくり話そう。
ビーメ、すまないが子どたちを頼んでいいか?」
「・・・ええ。3人ね・・・。」
ビーメはちらっとルーグをみる。ルーグは目を伏せて首を横に降った。
ビーメはさらに目に涙を浮かべるが、子供たちをみて頷く。
ルーグの指示にそれぞれ従い分かれていく。
そして、またハーフビラは宵に包まれる。
今宵は満月。
満ちた光は少し強い光を落とし、影を濃くする。
ハーフビラに刺す闇の中の光は幻か希か絶か遙か。
日が昇り道を照らすまで、月の光は暖かさだけを落とす。
......................................................................




