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青春ミクスチャー ~自殺少女と格闘家~  作者: owlet4242
第一章 青春キメラの誕生
8/34

ギリシャ神話のスケールはでかい(加筆修正済)

 2/4/11に段落修正済み!


 会話のやり取りの間に地の文が少なかったので加筆してます。


 

 女神アトロポス。


 ギリシャ神話において、《運命》を司る女神、モイライ三姉妹の末の妹。


 長姉にクロートー、次姉にラケシスを持ち、三人で運命の糸を繰ることにより人の運命を決する。


 具体的には、長姉のクロートーが糸車で糸を紡ぎ、次姉のラケシスが糸の長さを決める。そして、妹のアトロポスはその長さに従い糸を裁ち運命の最終決定を行う。


 彼女達三姉妹の運命の決定には主神たるゼウスですら従わなければならないこともあり、その力はギリシャ神話の中でも抜きん出た女神達である。



※本人談



◇◇◇



 俺たちの前についに姿を現した女神アトロポス。


 そしてついに、彼女の口から今回の件の真相が語られる時が来た。


 ………はずだった。


《あー、なんかもういいっすわー。アトロポスちゃん営業終了、みたいな?あとは人の子同士、仲良く二人でちゃちやっとやっちゃってー、みたいな?》


「いやいやいや、それは困りますアトロポス様!頼みますからちゃんと説明してください!」


「お願いします、アトロポス様!アトロポス様がいないと私達だけじゃどうにもならないんですー!」


 俺たちの前に現れた女神アトロポスは拗ねていた。


 なぜ彼女がここまで拗ねてしまったのか。それは俺たちと女神の出会いの直後にまで遡ることになる。



◇◇◇



《はっはっはー!どうだ!女神アトロポスちゃん、カッコよく降☆臨!》


「「………。」」


 俺たちの前に(想定外の方向から)現れた女神アトロポスは、決めポーズをとった後に得意気にこちらに近寄ってきた。


 その表情はまさにドヤ顔。もしもドヤ顔の見本市があれば間違いなくサンプルとして陳列されると確信できるほどそれはそれは見事なドヤ顔だった。


 そうして女神アトロポスは俺たちの前まで来ると腰に手を当ててふん反り返る。


 それは別に偉そうにしているわけではなく、女神アトロポスはそこまで背が高くない橘さんよりもさらに背が低いからだった。


 いや、でもこの女神のことだからもしかしたら精一杯偉そうにしているのかもしれない。あんまり威厳はないけど。

 

《ふははは!どうだ人の子達よ!私の超美麗降臨シーンのインパクトは!》


「えっ、あっ、はい。なんかすごかった、です。」

「わ、私もすごいなと思いました!」


 確かに、女神の降臨は凄かった。


 あれだけド派手な演出をかましておいて、まさかまったく関係ない別のところから登場するというのは(ある意味)凄かった。


 もしも、女神が暗殺者だったら俺たちは間違いなく首をはねられていた。それぐらいの意表を突いたインパクトのある降臨だった。


 しかし、やはり正統派の降臨を期待していた俺たちの心は態度に表れていたようで、女神もそれを察したのか眉間に皺を寄せて疑いの眼差しでこちらを見る。


《むむむー?人の子達よ、本当に私の降臨シーンはカッコいいと思ったか?》


「え、ええ。もちろんです!」

「は、はい!嘘なんて吐いてませんよ!」


《それじゃあ、私の降臨シーンのどこがよかったか10秒以内に答えよ(配点10点)》


「「えっ!?」」


 こ、この女神何て無茶ぶりを!?(10)


 しかも配点10点って何点満点中の10点なんだ!?(9)


 と、とにかく誉める点を考えなければ!(8)


 誉めるとすればやはり光の柱の演出か?(7)


 あの光と羽の演出は神々しくて、いかにも降臨って感じだった(6)


 だが、あの光の柱とまったくちがう場所から女神が登場したのが気になる(5)


 もしや、光の柱はブラフで、誉めるべきは女神本体の方が無難か!?(4)


 確かに、女神自体を誉めれば外すリスクは少ない!(3)


 ああ、もう時間がない!思い出せ、女神の降臨シーンの姿を!(2)


 あっ、そうだ!あそこのあの部分を誉めれば………!(1)


 それしか手はない、ええい、ままよ!(0)


※思考時間十秒ジャスト


「ア、アトロポス様が降臨されたときに腕組みをしてからバッと腕を広げたのが大物感が出てすごくよかったです!」

「わ、私は!アトロポス様が着ていらっしゃるトーガの純白が、アトロポス様にとってもマッチしていると思いました!」


《…………》


い、言った!


そして、橘さんも俺と同じで女神の方を誉めた!


やはり光の柱を誉めるリスクは避けた形になった。


だが、それが正解だったのかはまだ分からない。正解は文字通り「神のみぞ知る」というやつだ。


そして、この場で唯一正解を知る女神アトロポスは先程から腕を組み、眉間に皺を寄せて、口をへの字に曲げて俯きながらうんうんと唸っている。


その表情は一体何の感情を表しているんだ………!?


俺たちが固唾を飲んで見守る中、女神はたっぷり10秒ほど唸ってから唐突にガバッと顔を上げた。


その表情は満面の笑み。


《いっやぁー!二人ともめちゃくちゃ私のこと見てるじゃーん!》


((や、やった!))


《ふじっちは腕の動き誉めてくれたけど、あれマジで練習してたんだよね!腕を開くタイミングとかさ!》


「ふじっち!?……あ、いえ、女神様のお考え、しっかりと汲み取らせていただきました」


 唐突に繰り出されたセンスのないあだ名に戸惑いながらも何とか言葉を返す。アトロポスはそれに満足そうに頷く。


《たっちーはトーガに注目してくれたよねー!これわたしの勝負服なんだよね!ちゃんと見てくれてマジ感謝ってカンジ!》


「やっぱりそうだったんですね!真っ白な輝きがすごく印象的だったんです!」


 たっちー。


 たっちー、か………。可愛いな。後でしれっと俺もそう呼んでみようかな………。


 そうじゃなくて。


 よしよし、これでなんとか女神の機嫌を損ねずにすんだ。


 神話の時代から女神の機嫌を損ねた人間はろくなことにならないと相場が決まってるものだ。精神を弄られたり、獣にされて犬に食われたり。


 とりあえず、ひとまずは第一段階クリアというわけだ。


 安心して横に視線を送ると、たっち…………橘さんも似たような表情を浮かべていた。


 そして、内心ほっと胸を撫で下ろす俺たちに気づいていない女神アトロポスは大層ご機嫌ご満悦だ。


《うへへ……、ふじっちもたっちーもマジ最高だよ!私らマジでマブダチじゃん?っていうか、前前前世ぐらいで私と(ゆかり)のギリシャ人だったりしない?え、ない?あっ、そう。》


 ………この女神、絶望的にちょろい!


 というか人との距離感つめるの下手か!急にぐっと来すぎだろ!段階を踏め、段階を!


 などとも考えたが、正直な話、女神の助力を得るならば距離感が近い方がなにかと都合がいいかもしれない。


 友人としての頼みであれば、女神も恐らく親身になって助けてくれるはずだ。女神の加護や祝福ほど心強いものはない。


まぁ、たまに強すぎて外れない呪いの装備みたいになるけど。


 ともかく、女神の機嫌はころころと変わりやすい。俺は女神の機嫌が良い内にさっさとことを進めてしまおうと心に誓った。


「アトロポス様」


《うぇーい!ふじっち何でそんなに他人行儀なのYO!呼び捨てでいいじゃん、私たちマブだよマブ?》


「………アトロポス。そろそろ俺たちを呼んで話したかったことと、俺の身に起きてること飲んで説明を頼みたいんだが」


《あー、それな! 確かにそれは早めにトークしたいNE! 真剣十代しゃべり場! みたいな?》


「………? そうですね?」


 女神の発言にはたまによく分からない単語が混ざるが恐らく神の間でのみ通じる内輪ネタというやつだろう。とりあえずは話をする方向に持っていくことができた。


 見れば橘さんも横でサムズアップしてくれている。


 俺は頷いて、橘さんにサムズアップを返しておいた。


《それじゃー、ちょっと話しやすいところに移動しよっか。この部屋、演出で天井壊しちゃったし、姉ちゃんとか真面目な他の神に見つかったら、ちょー怒られるし》


「「ここの天井、開くようにできてた訳じゃないんだ(ですか)!?」」



◇◇◇



 演出によって壊れた部屋を逃げるように、ではなく実際に逃げてそそくさと後にした俺たちは女神の案内で雲の道を歩く。


 早く目的地に着きたいのだが、道中女神がやたらと話しかけてくるのでその歩みは遅々として進まなかった。


《へー、それじゃあふじっちは格闘家目指してるんだ》


「ああ、橘さんにはもう話してたんだが、次の試合で入賞すればプロ資格がとれるんだ。」


《すげーい!最高じゃーん!私もちょっと前に姉ちゃんたちとレスリングの観戦にハマってたからさ、そういうのわかるんだよねー》


「へー、レスリングかぁ。俺はそこまで詳しくないけど、どんな選手が出てた?」


《んー、私が見てたときに有名だった選手は、ちょっと前の選手だからふじっちは知らないかもね。》


「あー、そうなんだ」


《そうそう。あー、私が推してたプラトン君、かっこよかったなー》


「その人俺もめちゃくちゃ知ってる上に、ちょっと前どころじゃないんですけど!?」


 時たま、女神の会話のスケールの違いに驚きながらもなんだかんだワイワイ賑やかに歩みを進める。


 それを繰り返すうちに、なんだかこんなやり取りも悪くないなと思い始めている自分がいた。


 元から俺は他者とコミュニケーションをとるのは結構好きな方だ。特に自分の引き出しを多く持ってる相手との会話はすごく楽しい。


 その点でいうと、人間とは比べ物にならない時間を生きて、数えきれないほどの記憶の引き出しを持つ女神アトロポスは俺にとって最高の話し相手と言える。正直、こんな状況じゃなければ一度サシでゆっくり話がしたいと思うぐらいに。


 特に女神の語る面白偉人ネタのスベらない確率は高く、橘さんも興味津々で話を聞いていた。


 だから完全に油断していた。


 俺たちの行く手に女神の虎の尾が垂れ下がっているとも知らずに。



◇◇◇



《そーいえば、話は戻るんだけどさ。ふじっちは今度格闘家としてプロデビューするわけじゃん?》


「まだ、決まった訳じゃないけどね」


《でも、ほぼ確実なんでしょ?じゃあさ、じゃあさ!私がふじっちのTシャツにサインしてあげよっか!》


 唐突な女神の申し出に俺は驚く。女神の直筆サインなんてそれこそ天文学的価値だ。


「え!アトロポスのサインを俺のTシャツに?」


《そーそー、なんてったって私のサインDAZE☆ご利益あること間違いなしよ?》


 そう。


 ここまではさっきまでと変わらない、なんてことのない他愛のない会話だったのだ。


 女神はご機嫌だったし、俺たちも会話を楽しんでいたし、全ては順調に進むはずだった。


 だが。


 次に俺が放った一言が。


 女神の虎の尾を全力で踏むことになる。




「へぇー、アトロポスって実はすごいご利益のある女神だったんだ」


《………えっ?》


「「………えっ?」」


 急に下がった女神の声のトーンに俺たちは戸惑う。女神の雰囲気が一瞬で変わり、それまでの和やかムードが一転、張りつめた空気へと変わる。


「えっと、アトロポス……様?俺、何か変なこと言いましたか?」


《あっ、えっと、ごめんね!多分、私の勘違いで変な空気にしちゃった!》


 恐る恐る繰り出した俺の言葉に、女神の雰囲気が元に戻る。


 よかった。何とかなりそうだ。


 俺は内心の動揺を悟られぬように笑顔で返事をする。


「そうだったん……ですか。なんだ、それならよかった、ハハハ………」


《そうそう、ごめんごめん!うふふふ……………………………………あのさ、一つ確認してもいい?》


「………なんでしょうか?」


《ふじっちはさ、私が《何》を司る女神か、ちゃんと分かってる?》


 全身の毛穴から汗が吹き出る。


 ヤバい。


 俺はアトロポスが《何》を司る女神かまったく知らない。恐らく橘さんも知らないだろう。援護射撃は期待できそうにない。


 一応、ヒントがないわけではない。


 アトロポスという名前から察するに、彼女は恐らくギリシャ神話系の女神だ。おれの前世がギリシャ人じゃなかったか聞いてきたし、まず間違いなくルーツはギリシャ神話だ。


 加えてアトロポスには姉が二人いる。部屋飲んで天井の話の時に姉に怒られると言っていたし、レスリングの話でも姉の話が出た。だからアトロポスは三姉妹で《何》かを司る女神だ。


 しかし、このヒントではアトロポスの情報を絞り込めない。


 ギリシャ神話の神々はとにかく数が多い上に色んなところで兄弟姉妹が大量に繋がるので、ギリシャ神話で姉が二人いる女神なんてざらにいる。


 その中からアトロポスが司るものを当てることは不可能に等しかった。


 せめて、《何》の部分が3つに絞り込めれば、当たる可能性はぐっと上がる。


 何かないか。


 3つ、3つのなにかがーーー


「ーーー!」


 その時、俺に天啓が降りる。


 そう、あれは中学の頃友達の家で読んだ週刊少年ジャンプ………!


 週刊少年ジャンプには3つの柱がある。


 努力。


 友情。


 そして、勝利。


 もしもこの3つの柱がアトロポスの三姉妹のものを流用しているとすればどうだろう?


 さらに加えてアトロポスは先ほどプロになる俺のためにTシャツにサインを書くと言ってくれた。


 プロの格闘家にとって、一番大切なもの。


 そう、それはリング上での戦いで手に入れる《勝利》だ。


 アトロポスが《勝利》を司る女神なら、俺のためにTシャツにサインを書くのも納得がいく。


 アトロポスは《勝利》の女神だ!


《………ふじっち? さっきからずっと考え事してるね。一体何を考えてるのかな?》


痺れを切らした女神から声がかかる。先ほどまでの俺なら動揺して狼狽えただろうが、既に答えを得た俺は心穏やかだ。


 落ち着いた態度で首を横に振る。


「いや、別に大したことじゃないんだ」


《………ならいいんだけど。それよりさ、私、そろそろさっきの答えが聞きたいな》


「……ああ、分かってる。答えは最初から分かっていたさ」


《っ! だよね、だよね! んもー、ふじっちったら人が悪いんだから。…………………………………………じゃあ、答え言って?》


 アトロポスの目が据わっている。半端じゃないプレッシャーをひしひしと感じる。神の圧とはここまでのものなのか。格が違うとはまさにこの事だ。


 大きく息を吸い込む。事ここに至ってはもはや退くことはできない。俺は導いた答えを信じ、前へ進むのみだ!


 いざ、決戦の時!


 俺は吸い込んだ息を吐きながら言葉を紡ぐ。


「………アトロポスは……」


《アトロポスは?》


 ここで少し溜めを作る。


 そして、女神の瞳をしっかりと見据えて俺は勢いよく答えを発した。


「アトロポスは《勝利》の女神だ! 俺の人生に《勝利》をもたらしてくれる女神なんだ!」


 俺は両手を天に突き上げ、最後には天を仰ぎながら高らかにそう宣言した。


 ………どうだ!?正解なのか?


 アトロポスからの言葉はない。


 俺はゆっくりと顔を下ろす。


 アトロポスと目があった。


 その顔には微笑みが浮かんでいる。


 その表情は俺に《勝利》を確信させた。


 やった!ついに俺はやったんだ!


「アトロポーーー


《今まで幸せな夢を見せてくれてありがとう不二さん》


ーーー違ったあぁぁぁ!?」


 一気に他人行儀になった女神に、俺は自分の失敗を悟った。


 この女神、やっぱり感情の振れ幅がでかすぎる。


 結局その後、橘さんもアトロポスの司るものを当てることはできず。


 俺たちはアトロポスの説教とアトロポスが《何》の神なのかの話を雲の上に小一時間ほど正座しながら聞いて。


 事態は冒頭へと至る訳である。


 女神の期限を損ねるとろくなことにならないって神話を見たらはっきりわかんだね(確信)。


 アトロポスの期限を損ねた二人を待つものは!?


 よろしければ、コメント・評価・感想・ブクマ、オナシャス!

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