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青春ミクスチャー ~自殺少女と格闘家~  作者: owlet4242
第一章 青春キメラの誕生
7/34

自分を神って言うやつは大概ヤバい(加筆修正済)

 2/4/11 段落修正済み!


 主人公二人の掛け合いの部分に一部追記しました!


 最後の主要キャラクターがついに登場。しばらくこいつらで話を回します。

 俺が身を呈して助けた少女。


 それが目の前にいる。


 俺のことを見て、俺に話しかけている。


 俺はなんて話しかければいい?


 こんにちは?


 初めまして?


 君の名前は?


 なんだかどれも正しくて、どれも違う気がする。


 謝罪の言葉は途中まですらすら出たのに、相手があの少女だと分かったとたんにこの様だ。


 思考が乱れて秩序を失う。


 頭を回せ、回せ、回せ。


 それができるのが俺の美徳だろう。


 ………よし、決まった。


 この言葉でいこう。


 さあ言うぞ。


 すぐ言うぞ。


今ーーー


「ーーーあ、あの、お兄さんさっきから固まってますけど大丈夫です、か?」


「おふっ!?あ?あ、ああ!大丈夫、大丈夫!元気、元気!」


 ………先に話しかけられて変な声が出た。めっちゃ恥ずかしい。返事もなんか変になったし。


 とりあえず、俺は大丈夫なことをアピールするために精一杯の笑顔を作って両手をピースした。


 ピースサインは元気の証!


 そして世界はラブアンドピース!


 しかも俺のピースは二つ。


 1+1は2じゃないぞ。俺のピースは1+1で200だ。10倍だぞ10倍。


 いえーい、ピースピース!







 ………アホか!俺は!


 あまりの軽挙妄動っぷりに、俺が一人頭を抱えて踞っていると、


「ふふっ」


 可愛らしい笑い声が聞こえてきた。


 顔を上げるとそこには口元を押さえて笑う少女の姿があった。


「お兄さんって見た目は少し怖いけど、いい人なんですね」


「え?そ、そう?そう見える?」


「はい、お兄さんわたしが怖がっていたから場を和ませようとして変なピースしてくれたんですよね?」


「あ、ああ!そう、そうだよ!ははっ、分かっちゃった!?」


「ええ、だってさっきのお兄さん凄く変だったんですから」


 そう言って少女はクスクスと笑う。


 その笑顔はさながら誰も知らない野辺に咲く名も無き花のような美しさだ。


 可憐、あまりにも可憐。


 この笑顔を見て俺は確信した。


 やっぱり俺の選択は間違っていなかった。


 あの時俺が動かなければ、この笑顔はこの世から永久に失われていたのだ。それは間違いなく世界の損失だ。


 正しいことをしたという充足感が俺の心を急速に満たしていく。


 そして、思っていた流れとは全然違っていたけれども、ちゃんと少女と打ち解けることができた。


 俺の心はほんわかした気持ちで一杯になった。




 ………でも、少ししてから変なピースと言われたことを思い出して、俺のほんわかした気持ちは少し減った。




◇◇◇



「俺の名前は不二 柊人。修学館高校の3年だ。」


「私は、私立青柳学園の2年、橘 薫です。」


 少し落ち着いてから、俺たちは向かい合ってソファーに座り自己紹介をすることになった。


 そしてようやく俺は少女の名前を知るに至った。


 ーーー橘 薫。たちばな かおる。タチバナ カオル。




 ……かーっ!名前まで可憐かよ!


「………お兄さん?また固まってますけど………?」


「……んあぁ!平気、平気!大丈夫、大丈夫!」


 危ない、危ない………表情には出さなかったが名前を知った嬉しさでまたフリーズしていた。


 ステイクール。冷静に、冷静に行け、俺。


「お兄さんって修学館の生徒だったんですね。あそこって文武両道で優れた生徒しか入れないって評判ですよね。カッコいいなぁ……」





 あ、ダメだこれ。かわいい。死ぬ。


 昨日の尾越とのスパーよりもヤバい。


 すまぬ、尾越。お前が弱い訳じゃないんだ。俺の目の前のこの少女が強いだけなのだ………許せ。


「いや、大したことないよ。俺は中学ではそこまで部活で活躍した訳じゃないし。ただ生活態度がよかったから、担任の先生が点数以外の内申をかなり盛ってくれて滑り込ませてくれたんだよ」


「でも、それって不二さんの人柄を担任の先生が評価してくれたってことですよね。本当にいい人じゃなかったら先生だって不二さんのためにそこまでしてくれなかったと思います。やっぱり不二さんはすごい人です。」







 ………おいおい、天使かよ。


 おーい、神様の皆さーん!天使がここにいますよー!


 間違って地上に落としてませんかー!天使ですよー!


「…………私の担任も、不二さんの先生みたいだったらよかったのに」


「………えっ?橘さん今なにか言った?」


「あっ、何も言ってないですよ。不二さんの聞き間違いです」


「そう?ならよかったんだけど」


……いかん、いかん。折角、橘さんが頑張って話をしてくれてるのに何トリップしてるんだ、俺は。集中しろ、集中。


「そういえば、不二さんは中学では部活で活躍しなかったって言ってましたけど、中学ではってことは高校ではなにかやっていらっしゃるんですか?」


「そうだよ。俺、総合格闘技やってて学校のボクシング部と外部のジム掛け持ちしてるんだ。実は、次の試合で入賞したらプロになる資格も貰えることになってる。」


「えー!そうなんですか!じゃあ、もしかしたらテレビで不二さんを見る日も近いかもしれませんね!」


「いやー、格闘技もしかしたら最近ブームが下火でさ。よっぽど活躍しないと厳しいよ」


「そうなんですね。でも、不二さんすごくシャープな体してますからきっとバリバリ活躍しますよ!」


「あー、でも今の俺の体は………あれ?」


そこまで言ったところで気づいた。


橘さんは俺の姿を見たときに怯えはしたけど驚きはしなかった。


 だが、それはおかしい。


 なぜなら、今の俺は橘さんの姿をしているのだ。自分の後ろにもう一人の自分が立っていればまず最初に驚きの感情が出るはずだ。


 それに橘さんは最初から俺のことを「お兄さん」とよんでいた。橘さんは女性的でとてもお兄さんと見間違える外見じゃない。


 それが意味することはひとつ。


 俺は部屋の壁に掛かった鏡を見つめる。


 そこにはーーー


「ーーーうわっ!俺が俺に戻ってる!?」


 驚きのあまり思わず大声が漏れた。


 鏡に映っているのは紛れもなく元の男の俺だ。


 一体いつ戻ったんだ。どうやって戻ったんだ。全く分からない。


「えぇ!?不二さん急にどうしたんですか!?」


 急に慌てふためいた俺を見て橘さんも驚いた声を挙げる。


 しまった。驚かせてしまったみたいだ。


 すぐに手を振って何でもないことをアピールする。とりあえず軽い説明もした方がいいかもしれない。


「ごめん、ごめん。大丈夫だから。あー、いや、実は俺、つい最近まで本当の俺じゃなかったんだよ」


 うわ、自分でも要領を得ないすごいフワッとした説明になった。


 しかし、俺自身がいまいち状況が分かってないから仕方がない。


 そして、案の定橘さんもよく分からないみたいで首をかしげる。 


「えーっと、それって自分探しの旅に出てたんですか?見つけたんですか、自分?」


「いや、そういうモラトリアム的なのじゃなくて、もっと物理的な……あー!説明が難しい!」


 自分でも理屈が分からないことを、さらに分からない相手に説明するというもどかしさに俺が頭を抱えているとーーー


《ふふふ、それじゃあ、ここからは私が説明しようじゃないか!》


「「!?」」


 ーーーそこに、突如として第三者の声が響き渡る。


 その声は、短期間に聞きすぎたせいでもはやお馴染みとなったあの声だ。


《待たせたな、人の子達よ!お色直しついに完了!さあ、完璧にきまった私の姿を見て感涙に咽ぶがいい!》


「「女神様!!」」


 俺たちが叫ぶのと同時に、部屋の天井が音もなく開く。突然オープンテラスみたいになった部屋に驚愕しながらも俺たちは開いた天井から天を仰ぐ。


 天からは温かな光の柱が降り注ぎ、その柱の中を純白の羽が舞う。光を受けた羽は舞い踊るたびにキラキラと極彩色の煌めきを放ち、光の柱を彩った。流石は女神と納得させられるほどの荘厳さ。


 なるほど、お色直しといったがここまでの登場演出を入れるなら時間がかかるのも頷ける話だ。


 俺たちは、女神がまさに降臨する瞬間を固唾を飲んで見守る。


 そして、ついにその時は来た。


 光の柱が一段と輝きを増し、舞い落ちる羽が輪を描いて道を作り出す。それはまさに神にのみ許される天上の花道だ。


 輝きを増す光の柱、その頂点が極彩色の光を放った時、部屋に声が木霊する。


《刮目せよ!人の子達よ!ついに女神降臨の時である!》


 その瞬間、柱を見上げる俺たちの後ろで勢いよく音を立てて部屋の扉が開いた。


 突然のことに呆気にとられて扉を見る俺たちの目に写ったのは、古代ギリシャ風の純白のトーガを身に纏い、腕を組んで仁王立ちする一人の少女の姿だった。


 俺たちの視線が集まったことを確認し、少女はうんうんと頷いてから、組んでいた腕を解き放ち高らかに宣言した。


《ふははは!我こそ運命を司りし三女神が一柱、女神アトロポスであーる!》


 ついに現れた女神様。


 その姿を確認した俺たちは顔を見合わせる。


 そして、お互いに頷いてからまた女神の方を向く。口を大きく開いて、肺いっぱいに空気を吸い込む。


 準備完了である。


 俺たちは一斉に女神に向かって叫んだ。






「「そっちから来るんかい(ですか)!?」」



 俺たちと女神アトロポス、その初対面は見事にハモったツッコミから始まった。


なんだこの女神(驚愕)


やべぇよ、やべぇよ…………


ごめん、神界パート4話になるかも(HMは嘘つき)。

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