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青春ミクスチャー ~自殺少女と格闘家~  作者: owlet4242
第二章 高校血風録 ~血みどろ羅刹編~
17/34

猿の惑星へようこそ!(修正済)

2/4/10に段落修正済み!


ほんの少し加筆しました。

「おはよー」


「おっ、たっち。おはー」「おはよ」「おはざーす」


 俺が橘さんの体になってから早いもので三週間が経った。そして、この三週間で教室の俺を取り巻く環境は大分変わった。


 それは、俺にクラス内での友達ができたということだ。


 俺は、登校初日にこのクラスにはいじめっ子三人組の他には傍観者しかいないという認識だったが、それは後々になって誤りであることが分かった。


 どうやら橘さんのいじめを知っているのはクラスの半数ぐらいで、残りの半数はいじめについて全く知っていないらしかった。


 特に、審さんのようなスポーツ特待生組には全くと言っていいほどいじめの事実は浸透していなかった。多分、いじめなんて面倒な人間関係よりも部活に全リソースを割いていたから情報に疎かったのだろう。


 だから俺はバレーボールで仲良くなった審さんを通じて積極的にスポーツ組と関わるようにした。


 初めは審さん以外とは少し距離感があったものの、体育の授業の度に全力で競技に取り組んでいたら、授業の後に向こうから話しかけてくれるようになって、今では教室ではガッツリと会話をする仲にまでなった。


 そして、もちろんこれは《夢渡り》の時に橘さんにも許可を得た上での行動だ。


 最初は元に戻ったときに新しい友達と上手く接することができるのか不安そうだった橘さんも、ちゃんと俺の映像を見て予習を頑張るというところで落ち着いた。


 それからというもの、橘さんから聞いていたようないじめっ子からの攻撃は嘘のようにパタリと止んだ。


 どうやらスポーツ特待生とイケイケ系のカーストはふたこぶラクダのこぶのようにそれぞれ別の山を形成して、お互いの山には関わらないのが不文律らしい。


 だからどんなに底辺だろうとどちらかのカーストに所属していれば相手のカーストにやられないということを利用して立ち回るのがこの学校で上手くやるためのコツなのだった。


「たっち様、今日の英語の宿題を私目にお見せくださらぬか」

「ついでに小テストの予想も教えてくださらぬか」

「昨日睡眠学習していたときの社会のプリントを写させてくだされ~」


「……言うと思った。審さん、これが英語の宿題。丸つけしないと再提出だからそこ注意ね。式見(しきみ)さんはこのルーズリーフの英単語とイディオム覚えて。全部無理ならマーカーのところに絞って。吉兼(よしかね)さんはこれ。色の違う文字は定期テストに100%出すって言ってた。」


「ありがたや~、ありがたや~」

「たっち様はわしらに遣わされた天使じゃあ……」

「私たちが猿になる一歩手前で人間でいられるのはたっち様のおかげじゃ~、皆の衆、拝め、拝め!」


 ……………………宗教かな?


 まぁ、橘さんの可愛さが天使級なのはオレも認めるところだけれども!


 というわけで、今の俺が一緒にいるのがこの三人。審さん、式見さん、吉兼さんだ。式見さんはソフトボール部、吉兼さんはテニス部で活躍中の特待生だ。


 出身校も部活も被っていないこの三人の共通点は三人揃って天文学的大馬鹿者ということ。一年生では毎回補習の常連で、他のメンツが入れ替わり立ち替わりするなか、この三人だけが固定メンバーだったことが友情の始まりだったそうだ。


 人呼んで、「青柳の三羽烏」ならぬ「青柳の三人バカ猿」!


「いやしかし、審のゴリラがかわいい娘さんを拐ってきたから何者だと思ったら、まさか天使だったとは。」

「いやいや、式見のオランウータン。いくらなんでもそれは審のゴリラに失礼だ。ちゃんとバナナで取引したに決まっているだろう」

「おいおい、式見のオランウータンと吉兼のチンパンジー。私とたっちは対等な友達だぞ?猿の世界の常識で話を進めるのは困る。」




「「「わっはっはっは!」」」



「「「……………誰が猿だこの野郎!!!」」」



 ………本当に見ていて飽きない猿…………ではなくてクラスメートである。


「三人ともはしゃいでたら勉強の時間がなくなるよ?」


「マジだわ。たっち、このご恩は必ず!」

「今度の部活休みにみんなでスイーツ食べよう!」

「たっちの分は私たちで奢るわ!あ、審はバナナの追加トッピング用意しといて。」

「はっはっは!………死ね!!!」



 …………ダメだこりゃ。


 またわちゃわちゃと騒ぎ出した三人衆を残して俺は自分の席に戻る。


 なんだかんだ言ったが、彼女たち三人はとても良い友人だ。恩には報いてくれようとするし、無理なことを強いることもない。


 力では今の俺では彼女たちにまったく並び立たないが、それでも俺を下に見ず、対等な友人と見てくれる。


 本当にいい友人だ。






「お前らに文明はまだ早い。いい加減山に帰れ、この猿!」

「あ、また猿って言った!猿って言う方が猿なんだぞ!」

「静かにしろこの猿!私を巻き込むな!猿は猿らしくウキウキしてろ!」


「「「ウキーーー!!!」」」





 …………本当にいい猿だ。


ウキッ!ウキキッキ!!


ウホッ!ウホホホホホーイ!!


キエッ、キエッ、キエッ!

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