きも試し
女子に、きも試しに誘われた。
嬉しいけど、正直怖い。
男子は僕ひとり。
そして、女子は僕が好意を寄せる子と、もうひとり。
男女三人のきも試しは幕を開けた。
「私、こういうの初めてだから怖い」
「大丈夫だよ、私がいるんだから」
“ドンッ”
「ギャー!嫌だー!」
「ちょっと、小さい物音で驚きすぎだよ。ああ、もうダメ。伸びちゃうでしょ?」
「ごめん」
「あの、僕も頼りにしてください」
「あ、ありがとう。ギャー!何か光った!」
「もう。驚いた時に、私の胸元を引っ張るクセやめてよね!」
女子が怖がる度に、好意を寄せるもう一人の女子のトップスの胸元が引っ張られてゆく。
そして、少しずつ谷間が顔を出し始める。
物音や光が現れる度に、伸びてゆくトップスの胸元。
その度に、伸びてゆく僕の鼻の下。
僕は正直、きも試しよりも女子の胸に夢中だった。
女子の役に立つことはなく、胸を眺めることしか出来ず、きも試しは終わりを告げた。
「怖かったけど、思い出にはなったよね」
「うん」
「僕、男らしいこと全然出来ないでごめんね」
「ある意味、男らしかったけどね」
「えっ、そう?」
「実はね、試してたの。気持ち悪いか気持ち悪くないかを」
「どういうこと?」
「これは普通の肝試しではなくて、アンタに好意があるこの子のために、私が仕掛けた、アンタのキモさを試すための[キモ試し]だったの」
「あっ、そうだったんだ。キモさを試す方のキモ試しね。それで、僕って気持ち悪かった?」
「うん。かなり」