大チキンレース
他にも何か無いかと歩いていると、
「ゴゲーゴゲゴゲ」
とけったいな鳴き声が頭上から聞こえた。見上げてみると
俺「なんだ?!」
矢野ちゃん「どしたの!?」
2m級に太った鶏?が上空から俺達目掛けて落ちてくるところだった。
俺「矢野ちゃんごめん!」
俺は矢野ちゃんを抱えながら横へ跳んで、地面をスライディング。
丁寧になんてできなかったから、矢野ちゃんの肌が傷を受けてしまったかもしれない。
すまん、天使矢野。
先ほどまで俺らがいた場所は鶏のヒップドロップにより、くぼんでいた。
全体的に茶色でデカイ腹、デカイ胴体と飾りのような小さな羽と立派な脚。
申し訳程度のトサカ。
そいつはとても飛行能力が高いようには見えなかったので、樹から飛び降りて来たのだと予想した。
俺「逃げよ!」
矢野ちゃん「うん!」
とにかく逃げるんだよぉー!
樹の間を通ることでデカイ図体のあいつは
ついてこれないと思ったが、
やつは太い脚と鉤爪を使い、地上5mほどのところを樹から樹へ跳び移りながらどんどん距離を縮めてきた。
はええよ!こりゃ逃げ切るのはきびしいか、
森は抜けられそうにないし、てか今どこだ、帰り道どっち?冷や汗垂れてきた。
俺は牽制にエアロを放つが大した効き目はなさそうだ。
せいぜい変顔になった鶏の羽が抜ける程度だ。
距離がありすぎるか?射程みじけぇなおい。
逃げられんなら、やき鳥にしてしまいたいところだ。
山火事?大丈夫だろ?たぶん!!
俺「矢野ちゃん、囮になってくれ!」
矢野ちゃん「え、どうするの?!」
俺「矢野ちゃんが引き付けてる横からファイアする!俺はあの大きな樹の上に登るから、引き付けながらこっちに走ってきてくれ!」
「ファイアする」とか、変な動詞だがこの際よかろう。
矢野ちゃん「う…うん!」
躊躇いながらも、了承してくれた矢野ちゃんに感謝しつつ、俺は全力で走り、矢野ちゃんと距離を取った。
そして鶏が矢野ちゃんを追いかけるのを見届けてから、死にもの狂いで木を登った。
焦りすぎて一度足を踏み外したが、目的の高さ、鶏が通るだろう高さ5m付近まで到達した。
その間、矢野ちゃんは走りながら必死に引き付けてくれている。
矢野ちゃん「ファイア!…ハッ…ハッ…ファイア!」
見るからに苦しそうだ。
矢野ちゃんは振り向きながら魔法を鶏へ放っているが、息が切れ、足の動きもなんだか頼りない。今にも追い付かれ、嘴の餌食になりそうだ。
矢野ちゃん「はっ…はっ…!」
頑張れ!そうだそのまま走ってきてくれ!!
鶏が俺の射程に入るまであと
20m…15…10………!?
矢野ちゃん「や、あっ…!」
もうちょいで目標地点というところで矢野ちゃんの足が何かに取られて、転んだ。
鶏はそれを血走った目で見て、足場にしていた樹を蹴った。
転けた矢野ちゃんの背中に嘴を突き刺さらんと急降下!!
俺は反射的に樹を蹴り、鶏に向かって跳んだ。