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メキシコの伝説 鹿の眼  作者: 三坂淳一
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鹿の眼

メキシコの伝説


鹿の眼


 鹿の眼を持つテノチカ族の戦士に対するパハロ・アスール(青い鳥:チュイン)の激怒の物語です。

 首長チュインの美しい妻は「花」という意味のアドネイという名を持っていました。

 彼女は、「雨」として知られる名高いオトミ族の戦士アニェーの一人娘でもありました。

 現在はゴルダ山脈と解されている地域に住んでおりました。

 その場所は自然が居住民には優しいところであり、それ故に、彼女はそこに住むことに満足を感じておりました。

 或る日の午後のこと、アドネイは森の果実を摘んでいた時、年老いた魔法使いのサホーに出会いました。

 サホーは彼女を見て、死と部族の悲嘆を予言しました。

 というのは、アドネイを激しく愛するであろう強い戦士との出会いを予見したからです。

 アドネイはびっくりして走り帰り、夫にこのことを話しました。

 首長のチュインは悪い予感を感じ、サホーを部落から追放することを命じました。

 時が経ち、その地域の住民はこの出来事を忘れました。

 しかし、或る日のこと、山から強いテノチカの戦士が来ました。

 彼はメシカの皇帝モクテスマ・イルイカミナ、「天の射手」の代理でありました。

 チュインは彼をふさわしい敬意を持って応接しました。

 歓迎の儀式が始まるや否や、天は不可解なことに曇り始め、稲妻を伴った強い嵐がその地域を襲いました。

 その戦士はチュインの前に出て、コヨルトトトル、「パン作りのスズメ」と名乗りました。

 彼は自分の目的はテノチティトランに帰還することであるが、長旅を前にして、自分と戦士たちは休息を必要としており、それゆえ、歓待を乞いたいということを説明した。

 チュインは拒否しませんでした。

 というのも、強い存在感に加えて、コヨルトトトルはとても謎めいて射抜くような視線を持っていたので、ずっと強い男ですら衰弱させることが出来たからです。

 ゴルダ山脈には穏やかな流れの清冽な川が流れておりました。

 或る日の朝、アドネイは泉の水でさっぱりするために水浴をしようと決めました。

 その道で戦士コヨルトトトルに会いました。

 アドネイの眼に視線を会わすと、アドネイはテノチカの男の前で麻痺し、抜け殻のようになってしまいました。

 すぐにその場で、彼女はコヨルトトトルの誘惑的な腕の中に身を投げ出し、彼をキスで満たしました。

 数時間が過ぎ、夜となり、その美しいアドネイは帰りませんでした。

 チュインは起こったことに関して何か恐ろしいがあると予感した。

 彼の脳裏に、年老いたサホーが言ったことがその時実現したのだという思いが駆け巡りました。

 嫉妬が彼の心を支配し、妻を捜しに行くために、最も勇敢な男たちを派遣して捕らえるよう命じました。

 彼女は発見されず、彼女は死んだものと信じました。

 長い捜索の道ですっかり疲弊して、戦士とチュインは部落に帰還しようと決めました。

 その首長は疲れと悲しみに打ちひしがれて歩いていると、突然甘い囁きのような何かの声を聞きました。

 その声がする方向に行ってみました。

 見たことは悲しみと怒りで殆ど彼を殺すものでした。

 コヨルトトトルの逞しい腕の中で、愛に陶酔して横たわっているアドネイがおりました。

 怒りがチュインを支配しました。

 服から黒曜石の鋭い短剣を取り出し、テノチカの戦士の心臓に突き刺しました。

 次に、妻をたらしこんだ呪われた眼を引き抜きました。

 アドネイは無反応に全てを見ていました。

 戦士が死んだのを見た時、長い眠りから覚めました。

 絶望して、滝に駆け寄り、断崖絶壁から身を投げました。

 予言は成就してしまったのです。

魔法使いたちの間で、クアウシトルと呼ばれる果実があります。

その種は「鹿の眼」として知られています。

おそらく、良くない願望と眼の悪さを追い払うために役立つものと思われます。

この果実は首長チュインが住んだ地域の木に生ります。

現在、その部落の住民は、妻の死後、恋敵の眼を埋めたところに一本の奇妙な木が生え、その木の果実は今でも神秘的な眼の形をして蜂蜜色をしていると語っています。



- 完 -


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