秋風が揺らす心
過ぎたはずの夏の暑さを思い出させる日々が
数日と続いたあの日
朝晩と秋を感じさせていた涼しくも冷たい風は
集まる雲間に
青空が遮られてゆくようで
やがて雲は 陽射しを雲間に集め
陽射しを遮る雲が まるで鏡のように
終わったはずの恋を想い出させた
数日と続いた暑さに
儚く散った淡い想い出が
2日と地表へと雨を降らせていた
1人観る 雨の日の百万ドルの夜景が
とても懐かしく そしていつしか
心まで雨に消されていきそうな程
うっすらと灯る夜景を観つめていた
震災のあったこの地に
建ち並ぶビルと 雨の日でも美しい夜景は
20代だった あの日の恋を思い出させる
強く降り続ける雨と 続く渋滞の波に押され
更に心は 十代の何も知らなかった頃の
淡く儚く散った恋を思い出させた
中学1年だった当時の私の姿を観る為に
集まる上の学年の人達
体育館でのクラブの様子を観てるだけにしては騒がしく
さほど気にはしていなかった
その日から時期が少し過ぎてから
体育館内でのクラブの最中に
人づてに呼び出され
誰が呼んでいるのかと 呼ばれた方に行ってみると
私より2つ上の学年の女性が居た
今 好きな人とか付き合ってる人はいるの?
ここでもし
好きな人が居たけど告白して振られたと
言うに言えず
好きな人とか付き合ってる人は居ないよと返事をした
するとその女性はこれを読んでと
私にラブレターを 渡した
それからは毎日のように 私の姿を見かけては
上の階から声を掛けてきたり
一緒に帰ろうと言われ一緒に帰った日もある
上の階から声を掛けられた日は
周りには友達も居て 照れ臭くて手だけ振って帰り
後から 何であの日待っててくれなかったの?
手紙を渡そうと想ってたのにと怒られた事もあった
そして夏のある日
勉強を教えて上げるからと
二人で図書館へも出掛けた
勉強だけだったかな
そうだ好きな歌手の話とかもした様な気がする
この歌を聴いてみてと
徳永英明のカセットテープを貸してもらった
薦められた中で 風のエオリア を気に入った
それから秋が過ぎ 冬を超えて
彼女の進学の話になった
どうやら女子校に通うようで
中1だった私は 中学を卒業したら
彼女の通う女子校の近くの男子校に通うからと
約束はしたが 現実は厳しく
いつしかその事は忘れ
昼間に働ながら 夜は定時制の工業高校へと通った
中学まで住んでいた家を引越し
彼女の住む家の近くに親が家を買い
あの時の恋人の家の近くだと思い出し
忘れかけていた淡い思い出を蘇らせた
何時か また会えるだろうと想い
仕事と学校の往復の中に
懐かしい姿を見かけ 声を掛けた
度々と見かける回数が増えていき
色々と話をしていくうちに
辛い仕打ちが待っていた
合わないうちに冷めたと言われた日には
恥ずかしい話ではあるが 涙が溢れた
夜遅くの高校から電車に揺られ帰る日々の
帰り道に通る彼女の家の前で
どうやら 私の帰りを待っていたようで
17歳の其の日に初めてを経験した
中学生の時には手すら握った事もなかった
淡い恋に
17歳の あの時も手も握って貰った覚えも無く
いきなりそれで
誘ったのも変わらず彼女の方であったが
高速を走る私の耳には
YouTubeからの 風のエオリアが聴こえていた
懐かしい歌声に 気分はブルーへと変わったが
それと同時に少しだけ記憶が蘇っていく
会わなくなったあの日以降
あの日の恋人は元気にしているのだろうか
また いつの日か逢えるのだろうか
二人が卒業した中学も今年で廃校らしく
私よりも だいぶ上の芸能人になった先輩が
廃校式には来てくれるようで
大人になった当時の彼女に
また逢えるのだろうかと 淡い想い出を胸に
心の中で願おうと思う
その日の帰宅は夜10時半と遅く
4時間の睡眠の後に再び出勤をした
自家用車で向かう道を走りながら
小雨の降る空を観上げると
空一面の曇り空の雲間に
微かにオレンジ色が輝いていたが
まだ日の出には1時間も早く
しかも陽の昇る方角ではないのに
やがてオレンジ色の雲間は
時間と共に消えてゆき
昨日から降り続いていた雨も
次第に止み始め
灰色の空も次第に白い雲に変わりつつあった
高速の上から観る街並みには霧が掛かり
遠くに観る山並みには まるで雲海のように
雲が掛かっていた
まだ陽も沈まない夕方には
吹く風にメジロのさえずりが運ばれ
いつしか強風へと変わったときには
街の騒音と共とその声も聴こえなくなっていた
淡い想い出と儚く散った恋
まだ微かに残る記憶と
過ぎていった日々を語り合う事が出来ればと願う
秋の風 揺らす風鈴 淡い恋
秋の冷たい風が いつかの恋を思い出させる
人とのふれあいの中で 明るく振舞っていても
独りになれば 何故か心は寂しく
気持ちも一瞬で十代だったあの頃を思い出させる
儚くも悲しく過ぎ去る秋の風に
心だけは1人置き去りのまま