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ガラスの世界  作者: 伊集院 大和
9/30

秋風が揺らす心





過ぎたはずの夏の暑さを思い出させる日々が

数日と続いたあの日



朝晩と秋を感じさせていた涼しくも冷たい風は

集まる雲間に

青空が遮られてゆくようで


やがて雲は 陽射しを雲間に集め

陽射しを遮る雲が まるで鏡のように

終わったはずの恋を想い出させた


数日と続いた暑さに

儚く散った淡い想い出が

2日と地表へと雨を降らせていた


1人観る 雨の日の百万ドルの夜景が

とても懐かしく そしていつしか

心まで雨に消されていきそうな程

うっすらと灯る夜景を観つめていた


震災のあったこの地に

建ち並ぶビルと 雨の日でも美しい夜景は

20代だった あの日の恋を思い出させる


強く降り続ける雨と 続く渋滞の波に押され

更に心は 十代の何も知らなかった頃の

淡く儚く散った恋を思い出させた


中学1年だった当時の私の姿を観る為に

集まる上の学年の人達

体育館でのクラブの様子を観てるだけにしては騒がしく

さほど気にはしていなかった


その日から時期が少し過ぎてから

体育館内でのクラブの最中に

人づてに呼び出され

誰が呼んでいるのかと 呼ばれた方に行ってみると

私より2つ上の学年の女性が居た


今 好きな人とか付き合ってる人はいるの?


ここでもし

好きな人が居たけど告白して振られたと

言うに言えず

好きな人とか付き合ってる人は居ないよと返事をした


するとその女性はこれを読んでと

私にラブレターを 渡した

それからは毎日のように 私の姿を見かけては

上の階から声を掛けてきたり

一緒に帰ろうと言われ一緒に帰った日もある


上の階から声を掛けられた日は

周りには友達も居て 照れ臭くて手だけ振って帰り

後から 何であの日待っててくれなかったの?

手紙を渡そうと想ってたのにと怒られた事もあった


そして夏のある日

勉強を教えて上げるからと

二人で図書館へも出掛けた

勉強だけだったかな

そうだ好きな歌手の話とかもした様な気がする


この歌を聴いてみてと

徳永英明のカセットテープを貸してもらった

薦められた中で 風のエオリア を気に入った


それから秋が過ぎ 冬を超えて

彼女の進学の話になった

どうやら女子校に通うようで


中1だった私は 中学を卒業したら

彼女の通う女子校の近くの男子校に通うからと

約束はしたが 現実は厳しく

いつしかその事は忘れ

昼間に働ながら 夜は定時制の工業高校へと通った


中学まで住んでいた家を引越し

彼女の住む家の近くに親が家を買い


あの時の恋人の家の近くだと思い出し

忘れかけていた淡い思い出を蘇らせた

何時か また会えるだろうと想い

仕事と学校の往復の中に

懐かしい姿を見かけ 声を掛けた


度々と見かける回数が増えていき

色々と話をしていくうちに

辛い仕打ちが待っていた


合わないうちに冷めたと言われた日には

恥ずかしい話ではあるが 涙が溢れた



夜遅くの高校から電車に揺られ帰る日々の

帰り道に通る彼女の家の前で

どうやら 私の帰りを待っていたようで

17歳の其の日に初めてを経験した


中学生の時には手すら握った事もなかった

淡い恋に

17歳の あの時も手も握って貰った覚えも無く

いきなりそれで

誘ったのも変わらず彼女の方であったが


高速を走る私の耳には

YouTubeからの 風のエオリアが聴こえていた

懐かしい歌声に 気分はブルーへと変わったが

それと同時に少しだけ記憶が蘇っていく


会わなくなったあの日以降

あの日の恋人は元気にしているのだろうか

また いつの日か逢えるのだろうか


二人が卒業した中学も今年で廃校らしく

私よりも だいぶ上の芸能人になった先輩が

廃校式には来てくれるようで


大人になった当時の彼女に

また逢えるのだろうかと 淡い想い出を胸に


心の中で願おうと思う



その日の帰宅は夜10時半と遅く

4時間の睡眠の後に再び出勤をした


自家用車で向かう道を走りながら

小雨の降る空を観上げると


空一面の曇り空の雲間に

微かにオレンジ色が輝いていたが

まだ日の出には1時間も早く

しかも陽の昇る方角ではないのに


やがてオレンジ色の雲間は

時間と共に消えてゆき

昨日から降り続いていた雨も

次第に止み始め


灰色の空も次第に白い雲に変わりつつあった


高速の上から観る街並みには霧が掛かり

遠くに観る山並みには まるで雲海のように

雲が掛かっていた



まだ陽も沈まない夕方には

吹く風にメジロのさえずりが運ばれ

いつしか強風へと変わったときには


街の騒音と共とその声も聴こえなくなっていた



淡い想い出と儚く散った恋

まだ微かに残る記憶と

過ぎていった日々を語り合う事が出来ればと願う



秋の風 揺らす風鈴 淡い恋





秋の冷たい風が いつかの恋を思い出させる

人とのふれあいの中で 明るく振舞っていても

独りになれば 何故か心は寂しく

気持ちも一瞬で十代だったあの頃を思い出させる

儚くも悲しく過ぎ去る秋の風に

心だけは1人置き去りのまま









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