向こう側の世界に
月が二つ有るようにも見える夜に
タイミングの良すぎた1日を振り返る
最後の仕事が終わり
先頭で信号待ちをしていた頃
ガラスの向こうに見える横断歩道では
幸せそうに寄り添う二人が居た
私の運転する車からは いつものラジオ曲から
こんな歌が流れていた
枯れ葉散る夕暮れは、で始まるフレーズの
曲が流れていた
夕陽が沈み 辺りが暗闇に変わる夕方だった
そして今朝の早朝は 何時もよりも
黒が、はっきり観える闇の朝だったが
今日の夕方になるまでの空は
まるで、洗濯機の中で泡立った様な
空一面の薄い雲ばかりが目立つ
そんな空を無視するかのように
ラジオの天気予報から、
今日一日は晴れという言葉が聞こえた
雲間の拡がりと、梅雨の頃を想い出させる
雨降り前の湿度にも似た、風の吹かない昼間だった
更に今日の早朝からの仕事先で、いつもの現象と
有り得ない現実が、私を恐怖の中に陥れた
いつものように裏口に周り 搬入を始め
やはり見えなくても恐怖心は変わらないので
搬入のやり方を変えて
その場から早く立ち去れる方法で作業を行っていた。
今日は前程、寒気は無かったのだが
暗闇の中、納品をしている最中に
私の耳元に、こんな声が聞こえてきた
見えるんだろ?見えるんだろ?
お前には見えるんだろ?という声が耳元に聞こえ
その言葉に、脳内で答えてしまっては
その声の主が何処からか姿を表すかも知れないと
何も聞こえないふりをして、なんとか作業を終えた。
そして、セキュリティを掛け
出口に向かう通路を歩き
冷蔵のコーナーに差し掛かり
通り過ぎようとした瞬間
触れても居ないのにタイミングよく
冷蔵を冷やす棚にあるロールカーテンが
止めてある引っ掛けを何かが引っ張った様にも観え
バーンという大きな音と共に巻かれて行った。
今日の朝の出来事までを振り返ったが
空に浮かぶ今宵の月は、私には
二つ有るようにも見えるのだが
陽の光に反射している月と
その手前にもう一つ有るようにも見える
今日の月の名は
何という名前がつけられているのだろうか
調べて見ると過去に月は二つあったらしい