第1話 「俺はロボット?」
気楽にサクサク読める話を目指します。
よろしくデス。
『ヒンソーダは小国である。カリブ海に浮かぶ島々のいくつかを領有するこの孤立主義の独裁国家は冷戦崩壊後のグローバル社会においてもっとも遠くにある国と言われている……』
(『ヒンソーダ観光のススメ2010』より)
「ふーん、そんな国のガイドブックがネット通販で買えるんだから現代日本ってスゲーなぁ‼︎」
俺は木海野タケル。どこにでもいる普通のフリーターだ。今日は日本から遠く離れたヒンソーダ共和国に旅行に来ている。趣味は海外旅行とネットサーフィン。自慢じゃないが日常会話で良ければ大抵の国の言葉を理解できるし、話題には事欠かないからコミュ力もあるほうだ。だけど、いつも(どうでも)良い人で終わっちゃうんだよな……
「おっと、今はそんなことより観光を楽しまなくちゃ!ふむふむ、中世ヨーロッパみたいな街並みだなぁ!」
俺はガイドブックを開いた。
『ヒンソーダの首都があるヒンソーダ島に初めてヨーロッパ人が上陸したのは16世紀である。島名は最初に上陸したスペイン人が原住民に「ここはどこだ?」と尋ねたところ、「ヒンソーダ!」と答えたことに由来する。しかし、「ヒンソーダ」は原住民の言葉で「こいつ頭がおかしいんじゃねぇか?」という意味だったとする説もある。スペイン人の上陸後、わずか2日で原住民が消え去ったため真相は……』
ページを間違えた。ええと、首都ヒンソーシティの街並みについてのページは……
「失礼、パスポートを見せてもらえるかな?」
おっと、悪名高いヒンソーダの警察官とエンカウントだ!大人しくパスポートを見せることにするぜ!
「よろしい……日本人で間違いないか?」
もちろん、正真正銘の日本人でござるよ。なんならここで、小学生の時に習ったカラテを披露しても良いぜ!
「そんなことはどうでもいい!貴様を逮捕する!」
俺はアッと言う間に屈強な男どもに囲まれたが慌てない慌てない。ひい、ふう、みぃ……財布に100ドル札が人数分あるから持ってきな!発展途上国じゃこれが効くぜ!
「ドル札だと!やはり貴様はアメリカのスパイだな!日本はアメリカの同盟国だと我々が知らないとでも思ったか!」
あわれ、俺は警察官達に連れ去られてしまった。なんもかんも日本政府が右傾化したのが悪い(つまり、平和を愛するゆとりの俺は悪くねぇ!)
さて、牢屋に閉じ込められた。独房にして欲しかったが1人先着がいる。薄汚れた爺さんだ。はろー、ととりあえず話しかけてみる。
「た、タケルン⁈どうしてこんなところにいるんじゃ⁈」
わーお!なんで爺さん、俺の名前を知ってんの?どこかで会ったっけ?オレだよオレ!タケルだよ!
「なんじゃ、普通の日本人か……だが、ふむ、こやつは使えるかもしれん、ひひひ!」
おじいちゃん、悪巧みがダダ漏れですよ〜いやらしいこと考えてないでお寝んねしましょうね〜
「馬鹿にしおって!聞いて驚け!わしの名はプロフェッサ・サト!偽名じゃ‼︎」
偽名かよ!で、なんか用?俺に利益のある話しなら聞いてやっても良いぜ!
「くっ、最近の若いもんは年上に対する敬意を知らん!まぁ良い、貴様、ロボットのふりをしろ!」
てな訳で、俺のヒンソーダ生活が始まった。ああ、面倒くせぇ。
牢屋を出たと思ったら独裁者と面会とはやれやれだ。ドレスコードとか大丈夫かね?どうせTシャツとジーパンしかないけどな!
次回、第2話 「笑顔の価値は……」
この後すぐ!