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番外編01 女神様詐称……してません。


 その声が聞こえた時、あたしはふて腐れて布団を被っていた。


 アイツとの喧嘩は日常茶飯事だが、今回ばかりはいつものそれとはワケが違う。ふざけんなよ。あたしが今までどれだけ我慢してきたと思ってるんだ。

 そりゃ、あたしは馬鹿だし気分屋でワガママだよ? でも、アンタよりもずっと強いって事、ちゃんとわかってんの?

 その気になれば一瞬で捩じ伏せれるのをぐっと堪えて、暴力に頼らず平和的に対話してるんだからね。そこんとこシッカリ認識して小馬鹿にした態度を改めないと、さすがのあたしもそろそろブチ切れるよ!


 ――――カナシイ


 無理をすれば被害が大きすぎるのはわかっている。でも、あたしはこんな所にいたくない。帰りたい。帰りたいんだよ。


 …………悲しい


 あたしだけじゃない。皆だって帰りたいはずだ。このまま『道』を塞がなければ迷い込む者はどんどん増える。そんなのわかってるけど、一度扉を閉じてしまえば帰る事が今以上に難しくなってしまう。


 ――――クヤシイ

 …………このままではみんな死んでしまう


 そんなの嫌だ。だって、今なら本当は(・・・)帰れるのに。

 この世界への影響を考えなければ、あたしひとりだけなら、無理矢理帰る事が出来るのに。


 ――――死ニタクナイ滅ビタクナイ

 …………なんでこんなことに?


 やっぱり、承知できない。明日もう一度説得しよう。

 道が出来たのはあたし達のせいじゃない。扉を閉めるのはあたし達の義務じゃない。こんな理不尽に、どうして耐えなきゃいけないんだ。


 ――――ナゼダ。ナゼ、ナゼ、ナ、ナナナ

 …………お願い助けて


 そうと決まれば、しっかり寝て明日に備えよう。アイツに口で勝つのは至難の技だ。じゅうぶん睡眠をとって、


 ――――クイ、ニクイ、憎イァアアアアア!


 気合いを入れ、て。


 …………お願い、誰か助けて!




「煩いなぁ! さっきからあ‼︎」




 助けて欲しいのはこっちだよ。あたしはあたしの事だけで精一杯なのに、どいつもこいつも頼ってくるんじゃないよ!


「しかも、この声めっちゃ遠いし。ついでにめっちゃややこしそうだし」


 ハッキリ言って、めちゃくちゃめんどくさいけど。


「コレ、きっとあたししか収拾つけれない事件だよねぇ」


 言葉と共に流れ込んできた魔力にあてられて、痛む頭を摩りながら寝床から起き上がる。

 アイツに相談しようと部屋を出かけて、喧嘩中だったと思い出す。


「どうせ、反対されるよねぇ」


 この世界の事はこの世界が解決すべきだとか、自分達は可能な限り他国と関わりを持つべきじゃないとか、言われるに決まってる。


「めんどくさい」


 国なんかどうでもいいけど、命より大事なものなんて無いでしょう。


「いいや。勝手に行っちゃえ」


 アイツの方が頭がいいから普段は指示してもらってるけど、あたしだってニ帝の左なんだ。緊急事態って事で強権使っちゃお。


 聞こえてくる声の内、位置の掴みやすい発狂してる方を座標に設定する。跳ぶイメージを脳裏に描けば、自然とそこへ魔力が乗せられた。


「……なんでみんなコレが難しいんだろ?」


 上手く言えないけど、『したい』と思えば『出来る』のに。アイツは度重なる暴走にとうとう説明を諦めて、文字に魔力を乗せる方法を編み出したみたいだけど。

 ただ、漢字を使うと威力が強すぎて頭抱えてたな。ひらがなだけだとたまに違う意味拾っちゃうみたいだし、江戸時代とかから来た農民なんかは文盲だし……ドンマイ。お勉強ガンバレ。


 少しずつ座標をズラして、生き物の身体をもいでしまわないように地上30メートル上空を出現地点に本設定する。しっかり繋がった事を確認して、あたしは遠い西の国へと転移した。ちょっとした眠れない夜の散歩に出るノリで。置き手紙も残さずに。

 ……そして、その事を1分足らずで後悔する事になる。



「ちょおぉ〜っとおおおぉ〜〜〜! 何コレ竜? 竜なの? イヤだ嘘おぉっファンタジー‼︎」



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