『あたしが守ってあげる!』 「私が守るから」
『生徒のみなさんは速やかに体育館に移動してください。只今より、平成〇×年第△□回旭成高校始業式及び入学式を執り行いたいと思います』
校内放送が流れる。
途端に動き出す生徒たち。
その中に、私たちもいた。
「はぁ~あ、始業式はまだしも、なんで1年の入学式にまで私たちが出なきゃいけないんだ・・?」
私は都築鈴葉。
叶多の親友だ。
「あはは・・・、まぁ、あたし達が1年の時も先輩方は出てくれたんだから、しょうがないよ」
「そーかぁ」
いきなりだが、叶多は私の恩人なのだ。私は、生徒で溢れ返る廊下を歩きながら、ふと思い出した。いや、思い出した、というか、思い直した、だ。
私は中学1年生のころ、『男っぽい』という理由で男子から虐められていた。 今思うと、子どもっぽい幼稚ないじめ。
それでも、弱い私の心を傷つけるには十分過ぎた。
心がボロボロで、何にも力を入れれなくなったとき、叶多に出会った。
『ねぇ・・、顔、見せて?』
『え・・?』
虐められてから、自信を無くしてしまった私は、前髪を伸ばし顔を隠して過ごしていたのだ。
『見せて?』
『え・・、あなた、わたしを知らないの?』
その頃私は、虐めの対象、ということで、誰からも無視され続けていた。
そんな中、叶多は話しかけてきたのだ。驚いた。
『? うん。 あたし、つい最近転入してきたの。だから、知らないよ?』
『あ・・・そう、なんだ』
そう。叶多は両親の都合で海外で暮らしていたらしいけど、中学入学を機にこっちに帰ってきたそうだ。
『前髪、どかして?』
『・・・えと・・』
『もうっ! じゃあ、あたしがどかす!』
『え、ちょ・・・っ』
叶多は強引に私の前髪を払った。
『わぁ・・!』
『・・っ』
怖かった。この顔を見られて、どう思われるか・・。
『かっこいい!!』
『へ・・・?』
初めて、そんなこと言われた。いつも『うわ、男みたいな顔!』『オトコ女!!』としか言われたことなかったから・・。
『ねえ、一緒に教室、行こう?』
『・・・でも、みんな・・』
『みんな? みんな、あなたのこと、かっこいいからヤキモチ焼いてるんだって! ねっ、もし何か言われたらあたしが守ってあげる!』
『・・・!!!』
中1の私は、その言葉に救われた。
それから、私は叶多の明るい性格に助けられ、クラスにも馴染めてきた。
女子は男子が怖くて私を遠ざけていたみたい。
それから、私は開き直って、髪をショートにし、叶多に好きになってもらえるようにしてきた。
「叶多、」
「ん?なに、鈴葉?」
「叶多は、私が守るから」
「へっ? えと・・ありがと?///」
だから、叶多のバカ兄貴なんかには、負けない。