クラス同じだったから
~旭成高校 2年棟廊下~
「あ、叶多、」
「ん?」
「口元に塩、ちょいついてる」
「え?!恥ずかし・・」
「ん(ペロ」
「・・あぅ、アリガト」
『キャーーーーーッ!♡』
鈴葉は私の口元についていたらしい塩を、自分の舌でペロ、と舐めとった。
その瞬間、湧き上がる女子の黄色い歓声。
そう、鈴葉は、誰もが認めるイケメン(女子)。
身長174㎝、スラリとした長い手足。 少し低めの声。 首筋を這う綺麗な黒髪。 ちなみに一人称は「私」だ。
男子も羨む紳士振り。
「もー、鈴葉、自分がかっこいいって自覚あるの?」
「はぁ? かっこいい?誰が?」
「す・ず・は・が!」
「私がか?そんな訳ないって」
「もーいいや! 面倒臭くなってきた・・・」
ため息をついたその時、
「あ、カナー、スズー、おはー」
「紫月!おはよ~」
「紫月か・・・。オハヨ」
「んー、何その反応~・・・。 ま、いーや。アタシら、またクラス同じだったから」
この子は雪村紫月。
あたしの中学生の時からの親友。面倒くさがりやで大雑把。若干KYでかなりの毒舌家だけど、友達をとても大切にできる優しい子。
あたしと鈴葉と紫月は、同じ中学校出身で、仲がいい。
「オッス!!お前ら!」
「・・はよ」
あ、あとコイツらも・・・。
「要、悠斗、まさかアンタらも?」
「おう、同じクラスだぜ!」
九条要と水瀬悠斗。
こいつらもあたしたちと同じ中学校だった。
この5人はなんだか気があって、よく一緒にいる。
「なあ、オレら全員同じクラスって、中3以来じゃね?」
「そーね、嬉しくないけど」
「なんか始まりそうな予感しねぇ???!!」
「?別に」
「・・・」
あはは・・出ました、要VS鈴葉&紫月。 よくケンカしてるんだよね・・・
「悠斗、朔兄に会いに行く?」
「!いいのか?」
「大丈夫でしょ、始業式まであと10分あるし・・。3年棟はこの上の階だよね?」
「ああ・・、じゃ、少し行ってくる」
「はーい」
悠斗はバスケ部で、うちの兄貴を尊敬している。あの兄貴を・・・。
「ふふ、なんだか楽しくなりそう♪」
私は、誰にも聞こえないように、そっと、呟いた。