行ってきます!
主人公・叶多とその周りの仲間たちの感情が、叶多の想い人により様々な形で交差する。
そんな物語を、どうぞ。
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『叶多。叶多には、何か願いごとある?』
『ねがいごと? あるよ!お花やさんになるの!』
『叶えたい?』
『? うん!』
『じゃあ、とっておきの方法を教えてあげる』
『え?! ほんとう?教えて教えてっ』
『願いごとはね、十回口に出すと叶うんだよ』
『十回?』
『そうだよ。叶多の叶って言う字は、十回口に出すって書くんだよ』
『へえ!教えてくれてありがとう!』
『いいよ、またな、叶多』
『うん!ばいばい、陽お兄ちゃん!』
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「陽お兄ぃちゃぁん・・むにゃ・・・」
PiPiPi・・・
「叶多~!朝だぞー!」
「はっ」
「俺のかっわいい叶多ちゃ~ん!遅刻しちゃうぞー♪」
「朔兄!キモいっ!もう高3でしょ?」
「うぅ・・」
「もーいいや、おはよう!」
「おう!おはよ! 朝ごはん、ベーコンエッグでいいか?」
「うん」
あたしは泉水叶多。旭成高校2年生の美術部。
さっきのはあたしのバカ兄貴。泉水朔。同じ高校の3年生。バスケ部主将。一応。
あたしの両親は海外で働いていて、年中出張状態。だから、朔兄と2人で暮らしてる。
昔はあたしたち兄妹も海外に住んでたけど、中学生になってから日本に帰ってきた。
家のことは基本あたしと朔兄でやっている。
重要なことは近所に住んでいる祖父母に頼む。
これが、あたしたちの日常。
「そういや、お前寝言で陽お兄ちゃん、陽おにいちゃんって言ってたぞ?」
「えっ、嘘? 恥ずかし・・・」
「むぅ・・お前のお兄ちゃんは俺だけで十分だろ~?」
「え・・」
「え?! おい、そんなこと言ったらお兄ちゃん悲しいっ」
「キモ・・・」
「・・・・・うん。 あ、制服そこね」
「・・あ、アイロンかけてくれたんだ、ありがと」
「! いやあ、叶多のためだからな★」
「とか言って、自分のやってないし・・もぅ・・」
「あ」
「ふふっ、ま、お礼にあたしがかけてあげるから感謝するよーに!」
「!! よっしゃあ!やったー!」
「あはは、はー、ごちそうさま!」
「おう、おいしかった?」
「うん」
「よかった!」
「さ、制服制服・・」
~10分後~
ピンポーン
「あ、叶多、リンちゃんじゃない?」
「ああ、鈴葉、迎えにきてくれたんだ!」
リン改め鈴葉は、私の親友。都築鈴葉。本人は「こんな言いにくい名前ヤダ」って言ってたけど、かっこいくてあたしは好き。
あ、リンっていうのは、鈴葉の「鈴」の字を音読みにした朔兄の呼び方。鈴葉は凄く嫌がってるみたいだけど・・・。
ガチャ
「鈴葉! おはよう」
「叶多、おはよう。あ、朔さんも」
「おはよーん」
「今日も相変わらずのキモっぷりですね、朔さん」
「今日も相変わらずの毒舌っぷりだね、リンちゃん★」
「それはどうも。では、叶多は預かってきますんで」
「そ? じゃ、よろしくね、リ・ン・ちゃん★」
「うぉ・・」
2人のあまりの殺気に後ずさってしまった私を鈴葉が引っ張る。
「あ、じゃあ、朔兄、いってきます!」
「おう、行ってらっしゃい、叶多!あ、リンちゃんも」
「うん!」
「(無言の殺気)」
タタタッ・・・
「さて、俺も行くとするか」
昔の記憶。
それは、一生残る大切なもの。あなたは、昔の自分を思い出しながらむことができましたが?