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①光源氏の屋敷にて

屋敷に入った途端、私は注目の的。


格好はこちらの物だけど、

髪は茶髪だし、化粧もしてる。


明らかにおかしい。


でも・・・


「まぁ、なんて素敵な殿方。

女に見えてしまいそうな程、綺麗な顔ですこと」


「あの方のお傍に、お仕えしたい」

そんな女の声がチラホラ・・・


なんとか、私は男に見えてるらしい。

そう思うと、安堵の溜息が出た。


屋敷の一角、

人気のない部屋に私を通した。


「フッ」

私の顔をマジマジと見た光は、

小さく笑った。


「何が可笑しいの?」

私は怪訝な顔で光を見る。


「しっかり男に見えてるらしい。

このまま男だと言い張れ朱音」


そう言って光は微笑んだ。


私は黙って頷いた。


「な・・・何?!」

突然、私の顎を持ち上げた光。

…私の顔を観察している。


「こんなに綺麗な顔、

男にしておくのはもったいないな」


「何をバカなこと言って」


「まぁ、女だと知っているのは私だけだ。

他の者にバレると厄介だ。

…体つきは、他の女どもとは、比べものにならないな。

犯されないように気をつけろ」


光の言葉に顔を真っ赤にした。

…私は、その、まだ、


そう言う経験がない。

下ネタは私にはご法度。

やめてほしい・・・


「そんな恥ずかしいこと言わないで」


私を見た光は、未経験だと言う事を察したのか、

クスリと笑う。


「まだ、男を知らぬのか?」


「う、うるさい!」


逃げ出そうとしたら、光が私の腕を捕まえた。


「手取り、足取り、教えてやってもいいが?」


「///~!!」


暴れ出した私を見て、


「からかうのはこれくらいにしておこう、屋敷を案内する。

それから、ここが今日から朱音の部屋だ。

着物などは用意させよう…ついて来い」


「・・・」


不機嫌な私を連れ、光は屋敷を案内する。

…しかし、大きな屋敷だ。


なれるまで、迷子になりそうだ。

暇な時は探索に出よう。

「あ、お菊。今日からしばらく、

ここで暮らすことになった朱里だ。

身の回りの世話を頼むぞ」


「かしこまりました、源氏の君様」


とっても愛らしい笑顔。

…もしかすると、私よりも、年下かもしれない。


「よろしくお願いします」

そう言って頭を下げると、お菊は顔を赤らめた。

やっぱり、私は男…だよね。


そうでなくちゃ困るんだけど、

ちょっと寂しい気もする。


気を取り直した私は、踵を返し部屋へと帰った。


「私はこれから職務で出かける。

ゆるりと休まれよ・・・」


そう言って光は、私の頬にそっと触れた。

いちいちボディ―タッチの多い男だ。


…それに一々反応してしまう私も私だけど。


きっと、

光は私の反応を見て遊んでいるに違いない。


そう思うと悔しい・・・


…誰もいなくなった部屋。

私はゴロンと寝転んだ。

これからどうすればいいんだろう。


両親は私がいなくなった事に、

気が付いているのだろうか?

友達や彼氏から連絡は?


・・・そう言えば、

ポケットに携帯入れてたっけ。


私はそそくさと携帯を取り出した。


…ガックリ。


そうよね。

当たり前だよね…


『圏外』


ここは平安時代。携帯の電波が通じるわけがないんだ。


・・・死んでないなら、

やっぱり元の世界に帰りたい。

こんな誰も知らない土地で、

死にたくない・・・


「不思議なものをお持ちですね?」


頭上から聞こえてきた少女の声。


私は驚いて飛び起きた。


「・・・あ」


部屋に入ってきたのは、

さっきの少女、お菊。


「す、すみません・・・

おやすみのところ・・・」

お菊は真っ赤な顔で土下座した。


私は慌ててお菊に頭をあげさせる。

「そんな、気にしないで。

それより、何かご用ですか?」


優しい口調で問いかけると、


「源氏の君様から、

朱里様の着物の用意を頼むと言われ、

持ってまいりました」


ふすまのところに、

着物が積まれていた。


「ありがとうございます。

これから色々とお世話になると思いますが

宜しくお願いします」

そう言って頭を下げた私。


お菊は必死に首を振る。


「そんな!

源氏の君様の大事な友人とか・・・

私はただの女中です・・・

当たり前の事ですので、お気になさらないでください」


「お菊さん・・・でしたよね?」


「・・・はい」


「歳はいくつです?」


「16になりますが」


「私と同じですね・・・

それならなおの事、仲良くしたい。

私とお友達になってくれませんか?」


「?!・・・そんな。

殿方とお友達なんて」


・・・あ。


そうだった。私は今・・・男。

友達なんて、無理、か。


ここで、一人でも友達ができると、

嬉しいのに。


「お菊、朱里は女だ」


「「え?!」」


ふすまの裏から、

突然男の声が聞こえてきた。


「…源氏の君様?!」

お菊は姿を現した光に驚きつつ、


更に、私が女だと言う爆弾発言に

もっと驚いている。


私を見る目はパチクリと、何度も瞬きをし、ちょっとかわいい。


「朱里の、朱里の本当の名は、朱音。

女だと私の傍には置いておけぬ。

だから男だと偽っておる」


「・・・」

それを聞いて、お菊の顔がキリッとなった。


「朱音は見ての通り、

茶色い髪で、この国の者ではない。

それゆえ、何かと心細いだろう・・・

お菊、朱音の良き友人となってやってくれ」


「私なんかでよろしいのでしょうか?」


私の顔をチラッと見たお菊。

私は何度も頷いて見せた。


「朱音もいいと言ってる。

ただ・・・」


その後、光の顔が曇った。


「…源氏の君様?」


お菊は不安そうな顔で光を見つめる。


「この事を他言するようなことがあれば、

そなたを殺さねばならぬ」


「「?!!」」


光の言葉に、

私もお菊も顔が青ざめる。


「言い過ぎよ、光!

そんな事を言ってはお菊さんが可哀相」


「・・・いいんです、朱音様」

私を止め、お菊は微笑んだ。


「わかってくれ・・・

朱音を死なせるわけにはいかぬのだ。

元の国に帰すと約束したのだから」


光はお菊の顔を見つめる。


お菊はそれに応えるように、

満面の笑みを見せた。


「源氏の君様。このお菊、

命に代えても、朱音様はお守りいたします。

源氏の君様の大事なお方のようですから」

お菊は静かに言った。


・・・ん?


大事なお方?どうしてそうなるの?

首を傾げる私に光はクスッと笑った。


「…お菊、湯の用意を頼む。

朱音も疲れをとりたいだろうから」


「はい、かしこまりました」

お菊は微笑み、部屋を出ていった。


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