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夏の日 2-1
車のおかげで、10分も経たない内に学校に到着した。
車から降りるのを誰かに見られたくなかったので、そそくさと腰を上げる。
「じゃあ、いってきまーす」
「いってらっしゃい。あ、優」
助手席のドアを開けたところで呼び止められる。
姉が、ガサコソとバックの中をあさっている。そして取り出したのが、
「はい。昨日ゲーセンでゲットしたの。私いらないから、優にあげる」
姉の指につままれているのは、ふわふわの可愛らしいシロクマのマスコットだった。キーホルダー式で、よく筆箱とかに付けたりするやつだ。
シロクマのお尻のタグに『白っちぃ』という名前が書かれてある。
「なんだよこれ。俺、女子じゃないんだから付けないよこんなの」
「いいじゃーん、可愛いくて。女子ウケいいと思うよー」
「こんなんで女子ウケよくなったら、ハーゲンダッツおごってあげるよ。いってきます」
夏の熱気が、また僕を溶かそうと襲いかかる。