【小海】(後)
はえ^~
お姉ちゃん、元気ですか。
わたしは元気です。
相変わらず暑い日々が続いているので、夏バテしちゃいそうですが。
お姉ちゃんがいない毎日はやっぱり寂しいけれど、でも、お姉ちゃんが少しでも安心できるように、頑張っていきます。
今日は毎年恒例の夏祭りです。
去年まではお姉ちゃんと来ていたけれど、今年は最近できた友達と行くつもり。
もうすぐ待ち合わせの時間だから、そろそろ来るはず――あ、来たみたい。
おーい。
お――
「ええっ!? 誰あんた!? 何これ? エクステ? ウィッグ?」
「うわっ、いきなりなんだよ」
駅の構内、約束の時間に現れた少し変わった二人組は、以前会った時と髪型が違っていた。
「地毛だよ。伸びたの」
「いやいやありえないでしょ! あんたこの前会った時ショートだったじゃん!」
黒髪の少女――火宮清火はとある事情で、わたしと同い年なのにとても幼い容貌をしている。男の子みたいな快活な子で、短い髪がさらに少年っぽさを光らせていた――のだけれども。
どういうわけか肩の辺りまでのミディアムになっていた。
「いやー、やっぱりこっちの体に慣れちゃったから、身長は元に戻したんだよね。でも髪は元に戻らなかったから。これでも一応切ったんだよ」
「は? 何言ってんの?」
そしてもう一人。
麦藁帽子を被った肌の白い女の人――イーリスさん。外国人ではなく、イアカスの女性である。白いブラウスにスカートというシンプルな出で立ちなのに、彼女が着るだけでほかの人には到底真似できないほど綺麗に映える。いつ見てもとてつもない美人だ。
「イーリスさんも、どうしちゃったんですか? あんなに綺麗なロングが」
イーリスさんは帽子を押さえながら照れたように笑った。腰に届く銀白色の髪が、影も形もなくなっている。
「あ、やっぱりわかりますか……? 恥ずかしいので帽子を被ってきたんですが……」
「恥ずかしがることなんてないのにねえ。僕なんてずっと短かったのに」
「うーん……。ねえ清火、あんたその髪型、正直微妙だよ」
「えっ」
「あ、でもイーリスさんがショートにしたんなら、清火は長いほうがバランス取れてていいかも」
そんなにショックだったのか、清火は頭を抱えて項垂れた。
「うう、まどちゃんは似合ってるって言ってくれたのに……。まどちゃんのセンスをあてにしたのが間違いだったよ……」
「そんなことないですよ、清火。とても似合っていると思います」
「ほ、ほんと?」
「ええ。私はそういう清火も好きですよ」
二人の周りに、きらきらと花が咲き乱れている。
前も見せつけられたけれど、この二人の互いを見つめる瞳が熱すぎて熱すぎて。本人達は気づいていないのだろうけれども。清火をからかいすぎてイーリスさんを怒らせないようにしようっと。
混雑する駅前から離れ、浮き浮きしている清火に連れられて呉服店へ向かった。そこで二人は浴衣に着替えるらしい。清火の友達だという外国人の女の子(金髪ロリ。可愛い。合法)も連れて、そのあとは夏祭りを満喫する予定である。
夕陽が街を紅く染める。
前を歩く黒髪の少女も、隣を歩く白髪の美女も、ちょっと前の自分には全く縁のなかった存在だ。あまりに現実離れしていて――けれど、とても強く生きているかっこいい人達。
お姉ちゃん。
世の中にはまだまだわからないことがたくさんあります。
わたしは全然知りませんでした。
でも、あのできごとをきっかけに少しだけ知ることができました。
世の中には不思議なことがいっぱいあって、楽しいことも嬉しいこともいっぱいあって――悲しいことも、つらいことも、たくさんあります。
わたしはこれからも、この不思議で残酷な世界で生きていきます。
お姉ちゃんの分まで、一所懸命生きていきます。
だからお姉ちゃん、もし見ていてくれるなら。
応援、よろしくね。
次で最後です




