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ひきこもリューヘー ~携帯を買う~

作者: 椎贔

御観覧ありがとうございます(m。_。)m

引き籠りの葛藤を描いた今作、シリアス・コメディ・感動

3ジャンルを無理やり組み込んでみました。

引きこもリューヘーシリーズ初の感動要素を含んだ今作

如何せん無理があったような気がしないでもないです^q^


リューヘーは御NEWの携帯を手に入れ、一人優越感に浸っていた。


いつもの様に自室の隅に体育座りでニヤニヤしながら携帯を


開けたり閉じたり延々繰り返していた。そう、リューヘーは引き篭もりだった。


かれこれ4年以上自室に引き篭もり続け外に出ていない。無論友達と呼べる


存在がいるはずもなく、リューヘーが携帯を持つという事実そのものが


この世界の秩序を乱し、貪欲で面妖な人間の悪意がそこにはあった……。


そして無秩序な混沌の闇の中で尚、暗黒な影が揺らいでいた。つまり、電話を


掛ける相手すらいないリューヘーに携帯など正に愚の骨頂、猫に小判。一言で


説明すると無意味である。そんな傍から見た世論を知ってか知らずか、リューヘーは


親の猛反対を押し切ってまでこの世で最も醜い過ちを犯したのだ。それ以来、寝る間も


惜しんで携帯を愛でているのだった。


話を整理するとリューヘーは携帯を持てば自然と電話やらメールが来るものだという


度し難く救い様のない勘違いをしていた。しかし、世間一般の常識など引き篭もりの


リューヘーに理解出来るはずもなく、ただひたすら来るはずもない着信を一人待ち続けていた。


すると奇跡が起こった。リューヘーの携帯に一通のメールが来た。初めての経験にリューヘーは


興奮を隠し切れなかった。そしてそのメールにはこう書かれていた。


「リューヘー、久しぶり!突然こんなこと頼んで申し訳ないんだけど金貸してくれないかー?^q^」


差出人の名はわからなかった。知り合いだろうか。リューヘーがこれまで生きてきた人生の中で、


三次元において会話をした事がある人間なんて家族を含めても指折り数えられる程度の人数しかいない。


そもそもなぜアドレスを知っているのか。


それ以前にリューヘーが携帯を持っている事を知っている人間だって


ごく少数にすぎない。となると、かなり的が絞られてくる。家族と……携帯ショップの人間だけだ。


リューヘーが携帯欲しさに押され、最大限の勇気を振り絞り何とか外出を試みて


携帯ショップに行った時の事だ。


その時担当していた人間……ネームプレートには「イワキ」と書いていた。


彼はリューヘーが携帯を購入する事に対してまったく理解を示していなかった。


「え、リューヘーさん引き篭もりなんですか!?引き篭もりが携帯なんて必要なんですか?


なんとも滑稽な話ですね~。言わせていただければ携帯なんて、あなた様の様な人にとって


この世で最も遠くかけ離れた一番必要の無い代物だと思いますよ。いいですか、携帯というのはね、


人とコミュニケーションを取る為に作られた道具なんですよ、玩具じゃないんですよ。


ええ、少なくとも私はそう思いますね!!」


イワキはそれを見ていた周りの視線を感じ興奮気味になった自分に気付き、


落ち着きを取り戻す為に一度深呼吸をした。



「失礼、失言でしたね、如何せんこの様な人知を超えた狂言、戯言を初めて聞きましたもので……。


リューヘーさん、この世にはね、二種類の人間しか存在しません。引き篭もりか否か。


無論後者には未来があります、しかし前者にはない。言ってる意味がわかりますね?


そして前者であるあなたに携帯が必要ですか?携帯を持つ資格が自分にあると御思いですか?


いえ、仕事なので携帯はお渡ししますが世の中にこれほど無意味な事例もそうないでしょう。


引き篭もってよく考える事ですね、すべては運命なんですよ。いうなれば出来レース。


あなたが引き篭もる事も神のご意志、いくら足掻こうとも結果は変わらないのですよ」


そんなイワキの説法も、リューヘーの耳には右から左、馬耳東風といった所だった。


しかし、あんなに侮辱していた人間がこうも親しげな様をチラつかせたメールを


送ってくることなど考えられない。リューヘーの頭は混乱の極みだった。そして悟った。


やはり携帯を購入した事は間違いだったと……。とどのつまりは束の間の儚き夢から


現実に醒めてしまったという事だ。そして気付くのだ。それはもう、茶番以外の何物でも無い事に……。


そして結局この相手にリューヘーが返事を返す事も無く真実は闇の中へと消えていった。


翌日リューヘーは携帯を解約する為に再び携帯ショップへ訪れた。


そして以前と同じ様にイワキはそこにいた。


「リューヘーさん、あなたが今日此処に来るのをお待ちして居りました。」


イワキは満面の笑みを湛えてリューヘーを迎えた。リューヘーは携帯を解約する旨をイワキに


伝えようと口を開きかけ、それを制止された。


「リューヘーさん、今日貴方が来ることもその理由も全て承知しておりました。


その携帯はすでにこちらで解約が完了しております、ご安心ください」


ここまで来てリューヘーはようやく真実を悟った。あのメールはやはりイワキ、


彼が送った物であり、全ては彼の策略だったと言う事に……。


つまりリューヘーはイワキの術中に物の見事に嵌り


イワキの手の中で踊らされていたにすぎなかったのだ。


イワキは続けた。


「私達はね、貴方の様な引き篭もりに携帯を売ると必ずあの様なメールを送っているのです。


そして後日必ず解約に来る。貴方が今日此処へ来ることは予定調和だった


と言っても過言ではないでしょう。」


引き篭もりは泣いていた。策に嵌められた事にでも、イワキ独特の丁寧な毒舌にでもない、


自分の弱さに。


リューヘーは切っ掛けが欲しかっただけだった。引き篭もりから開放されるための……。


人との繋がりの切っ掛けを。


リューヘーは泣きながら人生初の強がりを言った。


「携帯解約は無しだ!続行だ!倍プッシュだ!それがシュタインズゲートの選択だ!」


それを聞いた人間は半分くらいしか意味が伝わっていなかったがどうやら言いたい事は判った様だった。


イワキは一瞬固まって動揺していたが、咳払いをしてからこう言った。


「分かりました、解約は取り消しましょう。ただし、そこまで言われるならば条件が御座います


これが達成できない場合速やかに解約と致します。」


イワキの出した条件は「一ヶ月以内に親族以外の5名を電話帳に追加する事」という事だった。


帰りは夜になっていた。リューヘーの歩く道の先には闇が広がっていた。


先の見えない夜道それは彼の今後を示すかの


如く険しい物に違いない。しかし、それらを照らすかの様に携帯が光り輝いた。


一通のメールだった。そこにはこう書かれていた。





「今日の晩御飯はカレーだよ早く帰っておいで  母より」



~END~


最後まで読んでいただきありがとうございました(m。_。)m

ひきこもリューヘーシリーズは他3作、また、短編物もいくつか

投稿してます。興味がありましたらぜひご覧いただきたく思います!


∑d(・ω・*)ネッ!

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― 新着の感想 ―
[一言]  文学と言うより、文法や要素からして、ライトノベルと思える作品でした。
2012/03/15 01:13 退会済み
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感想一覧
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