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この作品は、「小説家になろう〜秘密基地〜」掲示板の「即興小説を書こう!」スレッドから生まれました。全ての著作権は作者様に属します。
今回の参加者さま
■マグロ頭さま(W6336A)
■AKIRAさま(W7052A)
■yoshinaさま(W6246A)
■更紗ありさ様(W3245A)
■影之兎チャモさま(W6270A)
■松原志央さま(W5773A)
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■水音灯さま(W9935A)
■琉珂さま(W2632A)
■アオキチヒロ様(W0113A)
■有葉千野さま(W5216A)
作者名は各作品の冒頭に設置されています。
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「証明」「水芭蕉」「茜色」
有葉千野
あなたに、この鉢をあげます。これには『夢見て咲いている』という水芭蕉が植えてあります。今のあなたにピッタリの花です。
何も言わなくていいんです。夢を捨てられないんでしょう? 忘れることができないんでしょう? どんな夢かは聞きません。でも、忘れないでください。その夢はきっと、あなたという人間が『この世界に存在する価値があった。』という事を証明できる、ただ一つの大切な夢なのです。
苦しかったら、泣いてもいいんです。怒りたかったら、怒鳴ってもいいんです。殴られたら、殴り返してもかまわないのです。その方が、あなたらしい輝きを放ちます。そして、あなたらしく夢をつかんでください。
あの茜色をした夕日も、夜になれば沈んでしまいますが、それでもやがて朝日が昇ります。
あなたの夢も、その鉢から芽が出て、そして花を咲かす頃には、きっとあなたの夢も花開いているでしょう。
約束します。
夢を捨てないでください。
あ、ちなみにその鉢は、税込で七万五千円になります。分割なら八回払いでご購入できますが、キャッシュカードはお持ちですか?
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「春」「りんご」「猫」
琉珂
今日は卒業式だけど、学校の桜は満開だった。
微かに色のついた白い花びらがちらちらと舞い、落ち、僕は少しだけ感無量。
「先輩いっちゃうね。」
右下から、一人言とも二人言ともとれる呟きが聞こえた。
由依は僕の隣に座って正門を睨むように眺めている。
僕たちは小学校から今まで一度もクラスが離れたことがないという奇跡に近い腐れ縁だ。
「そうだなぁ。」
由依がどうして「先輩たち」と言わなかったのかを知ってる僕はぼんやりとそう返した。
卒業式はしょっぱなから脱け出してサボっている。
にゃん、と何かが足元で鳴いた。
見ると、それは案の定猫だった。
「ああ、リンリン。」
由衣が猫を抱き上げる。
「リンリン?」
「名前。先輩と世話してたんだ。」
「何でリンリン?」
「先輩が初めに持ってきた餌がリンゴだったから、リンリン。」
「‥‥僕とうとう会えなかったんだけどさぁ、その先輩って頭大丈夫なの?」
「だっ、大丈夫に決まってんでしょ!」
何を考えたら猫がリンゴを食べると思うんだろう。
僕が頭を撫でようと手を伸ばしたら、リンリンは首を振って桜の方へ走っていってしまった。
白い地面に立って、にゃんと小さく鳴く。
「桜も何でこんな日に咲くかなぁってリンリンは言ってるんだよ。」
「はぁ?」
「まだ春にもなってのに咲くなんて、お祝いしてるみたいじゃん。先輩の卒業をさ。」
全部切り倒してやりたいと、由衣は中々の危険思想を口に出した。
何を考えてるのか知らないが、先輩を持って行くのは正門でも桜でもないんだぞ。
僕はそう教えてやる代わりにまたそうだなぁと返事した。
春になろうがなりまいが、僕と由依は離れそうにない腐れ縁なのだ。
それはどうでもいいことでもあるけど、素晴らしいことでもある。
にゃんと鳴いたリンリンはまるで、春を間違えた桜を愛でているようだった。
END
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「ジャージ」「化粧水」「椿」です
マグロ頭
通された更衣室で開いたロッカー。深緑で統一された、いかにも高校生が着る様なジャージが目に入った瞬間、速攻で閉めた。
ロッカー間違えたかな?
確認した番号は言われた通り。ロッカーは間違っていない。
崩れ落ちそうになった。どうやら俺はあれを着ねばならないらしい。あの女の笑い声が想像できて、俺は泣きたくなった。
あいつ、ぜってぇSだ。精神的ドSに違いねぇ……。
嫌な予感はしていた。罰ゲームだからと連れてこられた店前では、くねくねしたおっさんに熱烈な歓迎を受け、この前の部屋では初めて化粧水をつけられたのだから。
最後はこれかぁ……。手にとったジャージを見る。名札に『椿』とあった。
「椿ちゃ〜ん、いきなり四番様がご指名よ〜」
不意に店内から顔を見せた『加織』さんが俺を呼んだので、もう自棄になって、俺はジャージを着た。
初仕事で即指名っていうのはどうなんだろう。複雑な感情を胸に、女の子にさせられた俺は、出来れば知らずにいたかった世界へ踏み出し始める。
父さん母さんごめん。俺、コスプレオカマバーで働く事になっちまった……。
それは、冬のある夜のお話。
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『恥』『オムライス』『お日様』
春野天使
「もー! ダメでしょ、マー君!」
出張先の小さな食堂で、若いママが小さな男の子を叱っている。
「ケチャップでお絵かきしちゃダメっていつも言ってるでしょ」
男の子の前のテーブルには、オムライスが一つ。男の子はちっちゃな手でケチャップの容器を握ってる。
「やだ! ボク、いつもオムライスにはお日様の絵を描くんだもん」
男の子のオムライスは、ケチャップで描いたお日様で真っ赤だ。俺はちょっと恥ずかしい気持ちになりながらも、自分のテーブルの上のオムライスを見つめる。
三十過ぎてオムライスを注文するのもなんだが、俺は出張先では必ずオムライスを食べている。で、あの男の子と同じようにケチャップでお日様の絵を……。
苦笑いしながらも、俺はお日様の部分をスプーンですくって口に含む。うまい! お日様のオムライスを食べると仕事も上手くいく。恥ずかしくて妻には言えない、俺のげんかつぎだ。