7/11
「工藤、じゃあ明日また学校でな」
そう言うと竹田は、僕の帰る道とは反対方向へ進んで行った。
時刻は夜の9時を回ったところである。
「しかし、今日は暑かったな」
僕はそんなことを思いながら、自宅への帰路についたのだった。
僕こと、工藤と、我が友人竹田は同級生であり、同じクラスで、いわゆる「親友」という仲である。
高校2年生である自分たちは、青春真っ盛りの年頃なのだろう。 世間一般的には。
周りの友人たちは部活動に励み、早いやつは大学への準備をしている。なんて真面目なんだ。
そんな中で僕らは、学校が終わると寄り道をしては、遊ぶことに情熱を注いでいるのだ。
最近では自分たちの街では知らない場所は無いと言えるほど、町を知り尽くしたと言っても過言ではない。
街案内などさせれば、自分の能力を最大限に発揮することができるのでは?と思っている。さすがに言い過ぎかもしれない。
まぁあまり役にたたない知識ではあるが。
もちろん、自分たちの他にも遊ぶ仲間は居るが、僕と竹田はいつも遊んでいるように、周りには見えるのではないのかと思っている。
言っておくが、僕も竹田も、学校でハブられているとか、そういうことは無い。ましてや同性で愛しているなどということもない。友達からホモダチになるなど勘弁してほしい。
ともかく、僕らは僕らの健全な青春を過ごしているのだと自負している。
話は変わるが、今日の僕は素晴らしく運が良いと思っている。
朝起きたとき寝癖が無かった、熟睡できた(ような気がする)、学校では忘れ物も無く、授業では当てられず、隣のクラスの美人の女の子と話すことができた(重要)。 おまけにゲームセンターでは竹田に格闘ゲームで勝利を収めた(僕と竹田の対戦成績は20回に一度勝利を収めれば良いほどだ)
うん、中々のラッキーデーだったと思う。 一か月に一回あれば良いほうだ。僕の中では素晴らしい一日と成っただろう。
他人から見れば、小さいやつだと思われるかもしれないが。
と、まぁ、そんなことを考えて歩いていると、家まであと十五分ほどの距離まで来ていた。
しかし僕は考えた。
このまま真っ直ぐ家に帰って楽しいか?
家に帰ってやることがあるかと聞かれると、戸惑ってしまう。趣味は何ですかと聞かれると、困ってしまう。
そう、僕は他人に誇れるような趣味を持ち合わせていないのだ。
読書は趣味だが、さすがにありきたりすぎる。
後は、散歩が唯一の趣味だが、話題性の乏しい趣味であり、僕の周りでは散歩が趣味の人間など存在しない。
いるのかもしれない、名も知らぬ誰かと散歩の良さについて語り合いたいものだ。
と、僕は迷ったあげく、寄り道をすることを決意した。 趣味は寄り道をすることです、といつか誰かに答えたい。
僕の家は住宅街の一角に位置している。
この住宅街の隣には、森林公園があり、僕が今いるのがそこだ。この森林公園、中々広いのだが、いつも人は少ない。理由はわからないが、管理不足が原因だろうと工藤は考えている。
街頭はなく、雑草の手入れも最低限しか行っていないからだ。
薄暗い森は月の光に照らされて、視界は僅かといったところだ。
とにもかくにも、僕は森林公園を歩いているのだが、視界が悪い。聴こえる虫の声と、カエルの声は新鮮に聴こえるのだが、視界が悪い。町に文句を言ってやるべきだと僕は思った。
まぁ、思うだけで実行になど移さないのだろうが。
薄暗い中を歩くのは中々勇気のいることだ。
というか怖い。
今更ながらに後悔している。
竹田でも連れて来ればよかったと思ったが、なんだか竹田は頼りにならなさそうなのでパスだ。
ホラー映画とか苦手って言ってた気がしたし。
かくいう僕もホラーやオカルトの類は勘弁して頂きたい。
しばらく歩くと、遊具やベンチが置いてある場所にたどり着いた。公園の中では唯一ここだけが活気あふれる場だ(昼間に限る)。
僕はベンチに腰を掛け、一息つくことができた。 時刻は9時40分をもうすぐ回るところだった。
この公園には川の流れている場もあり行こうと思ったが、僕は一瞬でその考えを捨てた。
怖いし。
暗闇の中、川に行くとか、自殺行為もいいところだ。
子供のころ、親に川に近寄ずくなと言われたことがある。 この辺の子供はみんな同じようなことを言われているらしいが、真意は不明だ。
そういえば、あの川で釣りをしている大人を見たことがない。 何も釣れなさそうな川だが……
時刻はもうすぐ十時を回る。
そろそろ帰宅の時間だ。
僕は重い腰を上げ、空を見上げた。町の中から見える景色とは違い、ここから見る星は、素晴らしく綺麗に見えた。星の数も多く見え、なんだか感動的だ。
7月11日、月曜日 晴れ
僕の高校2年生の夏が始まったのだった。
初めまして。うん、書くのって難しいね笑。もっと上手い描写使えるようになりたい。