第二話
その後、飯山ゆかりは満ちゃんに対し集団で暴行したらしく。
満ちゃんが泣きながら私の元にやってきた。
「ねえ、委員長。私やっぱり駄目だ……」
満ちゃんは泣いている。
彼女は、弱いのだ。
彼女は、自分の非を認めたくない。
だから、反撃をしないようにしているのだ。だけど、今となればそれは全て裏目に出る事となる。
「私は反撃せずにただ自分を守ってたんだけど、無理かも」
そこで私はある決意をした。
このことを彼女に言えば嫌がるだろう。だからこそ、私が一人で行うしかない。
「ねえ、飯山ゆかりさん」
私は個別に声をかけた。
「私たちね、ヤンキーの知り合いがいるいるの。ねえ、このまま私たちをいじめっぱなしじゃあどうなると思う?」
そう、虎の威を借りろ作戦だ。
実際ヤンキーの知り合いは今もいるはずだ。
ならば、私が今そう言っても何の問題もなかろうという事だ。
「もし、辞めなかったらどうなると思う?」
「どうなるっていうのよ」
「あの子の友達があなたを襲いに来るだけよ」
そもそも満が本気を出すだけで、いじめなんてすぐになくなると思う。
「だからお願いね。もうやめて」
そしてその翌日からいじめはひとまず収まったように見える。
勿論見えるだけで、治まったとは言えないのだろう。
今の状態はそう、脅しを受けてビビっているだけだ。
だが、本当は満ちゃんはその手の人たちの助けを借りたくない。
そう、嘘だとばれる前に、次の手を打たなければならない。
早速私はそのために動き出す。
もはや教師は役に立たない。
と、なればだ。
次の手はこれだ。
私は、お兄ちゃんに相談した。
「お前がここに来るなんて珍しいな」
私のお兄ちゃんは、今一人暮らしをしている。
勿論そこまで遠い家にいる訳でもない。
が、家から一時間半も離れた学校に通うのなら、一人暮らしした方が楽だろうという母の生きライだ。
「それで、どうしてここに来たんだ? しかも」
そう言ってお兄ちゃんは彼女の方をちらりと見る。
「友達連れで」
話しは一時間前にさかのぼる。
「お兄ちゃんに相談してみる」
私は満ちゃんに対してそう言ったのだ。
その言葉に満ちゃんは心配していた。
「でも、他人に迷惑はかけられないし……」
心配している様子だ。
「大丈夫。私のお兄ちゃんはそういう事が得意だし、お兄ちゃんは私に甘いし」
「でも……」
そう言う問題では無い様だ。
「大丈夫。責任は私が取るから」
「実は今日は相談があってきたの」
お兄ちゃんは法学部の生徒だ。
いい方法をきっと知っているだろう。
「かくかくしかしかで……」
私は訳を話した。
なぜ、今日ここに来たのかも。
「なるほどな」
そう言ってお兄ちゃんは腕を組む。
「それで、アドバイスが欲しいと」
「うん」
「脅すという方法で、今は落ち着いているけど、後々また過熱する可能性があるという事か。僕がどうにかしてあげる」
「どうやって?」
「脅しに行ってあげる」
その言葉に満ちゃんが、どういう事とでも言いたげに目を丸くする。
「大丈夫」
私は満ちゃんの頭を撫でる。
「お兄ちゃんは、怖いから」
その翌日。
「委員長、すごいよ。謝ってもらえた!!」
満ちゃんが元気よく、報告をしてくれた。
「すごいね」
「うん。私の兄ながら」
自分自身の力ではなく、お兄ちゃんの助けを借りなくては解決できなかった、という事は少し悔しいけど、その結果満ちゃんが笑ってくれるのならありがたい。
「本当に委員長ありがとうね」
「私は、そこまで大きいことはやってないよ。感謝するなら私のお兄ちゃんにかな」
「っでも」
満ちゃんは感謝の気持ちを伝えたいのか、私に抱き着いてきた。私はそんな満ちゃんを優しく撫でる。
「おい!」
そんな声が聞こえた。
帰り道での事だ。
「お前に言ってんの、聞こえない?」
そして、その姿に満ちゃんは見るからに怯えている。
「どうしたの?」
「この人たち……」
その言葉で察した。
「ああ、昔おめえに凹されたやつだよ」
やっぱり、
「委員長」
「なに?」
「逃げて」
小さく満ちゃんは言った。
「っ何で?」
「本当の私を見せたくないから」
「っそれって」
そう言った瞬間、満ちゃんは地面を蹴った。
★★★★★
院長には、こんな姿見せたくなかったな。
私は今も戦えないわけじゃない。ただ、怖いだけ。
昔の荒れてた時に戻るのが。
だからこの前も甘んじて相手の暴行をただ受けてた。
でも、今は後ろに委員長がいる。
っ守らなきゃ。
私の大切な人を。
「うやぁああああ」
私は戦う。大事な人を守るために。
あの日の事は後悔してる。だってそうでしょ。荒れてる時代なんて今となっては黒歴史。なにもいいことが無かった。
武勇伝なんて言う人もいるけど、そんなの嘘。
いい事なんて何もない。悪い事しか起きない。
私がアンナことを、あんなことをしちゃったから、今委員長にひどい目に逢わせている。
私の生なんだ。
だから、私はもう振るわないとこうと思った拳をもう一度振る。
大切餡人を守るために。
★
「す、すごい」
私は思わずこぼしてしまった。
凄すぎる。
自分よりも明らかに大きい子を軽々しくぶっ飛ばしていく。
なんだか、憧れる。
憧れてはいけないはずなんだけど。
でも、不思議と応援してしまう。
頑張れ頑張れと、応援した。
その姿を見て。青山さんは目を丸くする。
「なんで……」
そう呟いた。
「どうして?」
「どうしてってどういう事?」
どうしてっていう理由が分からない。
「だって今私は某力を」
「あっちから仕掛けて来たでしょ」
満の事を悪いなんて思わない。
「あなたは正しいわ。だって、正当防衛だもん」
そう言ってにっこりと笑う。
「私、嫌われるんじゃないかって」
「そんなので嫌うんだったら、もっと早くに嫌ってるって」
そう私が笑うと、
「ありがとう」
そう、消えそうな声で、いったのだった。
その日の後、満ちゃんに停学の処罰が下った。
だけど、わたしはそれに猛抗議した。
だって、向こうから来たのに、
正当防衛じゃん。
満ちゃん、何も悪くないじゃん。
そんなことを言っても、判決が変わることはなかった。
だけど、言ってやったという感じが下。
その日から停学中に授業に置いて枯れない様に、学校帰りに毎日満ちゃんの家に行って、勉強を教えてあげた。
「ありがとう」
満ちゃんが言う。
「どういたしまして」
私がそう言うと、嬉しそうににっこりと笑う。
その笑顔が可愛らしくて、たまらない気持ちになった。
そして、満ちゃんに思わず抱き着いた。
「な、なに?」
そう、動揺しながら言う、満ちゃん。
そんな彼女に対して、
「不安がる必要はないよ。だって、わたしがしたくてしたんだもん。教えるの嬉しいし」
「楽しいの?」
「うん。満ちゃんが大好きだから」
満ちゃんが一歩引く。
「そんな事言ったらだめなの」
「駄目じゃないけど」
「じゃ、いいじゃん」
にっこりと笑った。
その日、勉強を教えた後、
一緒にベッドに寝転がる。
「ねえ、満ちゃん」
わたしは満ちゃんの顔を見ながら言う。
「あの日、助けてくれてありがとう」
「っわたしが迷惑をかけたから」
「わたしはそんなふうには思ってないよ」
思ってない。だって、満ちゃんは何も悪くないから。
「ねえ、満ちゃん」
「なに?」
「満ちゃんってさ、強いよね」
「え?」
「満ちゃんが戦ってる姿、本当に凛々しいと思っちゃった。だから、自信持ってよ」「自信もっていいのかな」
「強いっていいよ」
そして、わたしは満ちゃんの腕をつかむ。
「ね、力入れてみて」
「っうん」
満ちゃんの腕が太くなる。
「ほら、太いじゃん」
「そうかな」
「太いと思う」
アスリートみたい。
「ほら」そう言ってわたしは手を差し出す。「掴んでみて」
「うん」
そう言って満ちゃんが私の手を掴む。
「ぷにょぷにょ」
「でしょ。だから、満ちゃんは凄いんだよ」
そう言って満ちゃんの体を私の方に寄せる。
そして、背中をさすった。
「他の全部が敵になっても、わたしは満ちゃんの事守るから」
「っうん、ありがとう」
満ちゃんは私に抱き着いた。そして、互いに背中をさすりながら、
寝てしまった。
次に起きたのはそれから一時間後だった。
そして、わたしたちは互いに顔を見合わせて、
「ふふ」
「えへへ」
二人で笑いあった。




