研究所の地下、旧研究所
ユーノスが低くつぶやく。
「……ここが、熊鬼研究所。
私も入るのは初めてだ」
フィーンが二丁のサブマシンガン、マグナ=ヘリクスを確かめながら言う。
「妙に静かだな。本当に稼働してるのか?」
ユウマは顎を引いた。
「行くぞ。」
セキュリティロックされたドアがある。
――ピタリ。
ドアは開かない。
「セキュリティはAI直結よ。私がやるわ。」
シルフィは胸元から小型端末を取り出し、扉に軽く接触させた。
端末のホログラムが光を散らし、
数千の暗号鍵を同時に回転させていく。
「解析開始──。……ふぅ、相当厳重ね。」
数秒後。
自動扉に近づくと、
壁面のセンサーが青白く点灯し、
光の輪がシルフィの身体を走査した。
――シュウッ…
静かに扉が開いた。
「でかした、シルフィ!」
シュナが小声でガッツポーズする。
「褒めてくれるのは嬉しいけど……
すぐにAIに解析を勘付かれそう。」
シルフィの声は緊張していた。
エントランスを抜けた途端──
研究所内部の空気が一変した。
白銀の床は血管のように青い光が走り、
壁面には立体ディスプレイが無数に浮いている。
そして奥のフロアには──
巨大なガラスの培養カプセルが、円形に並んでいた。
ぷくぷく……ぷくぷく……
低い水泡音が響く。
泡の向こうで蠢く影。
「……なんだよこれ。動いてるぞ。」
シュナがライフルを構える。
フィーンが唸る。
「擬似化熊鬼……TYPE3か。特殊強化体だ。
人工培養で量産してるのね。狂ってる。」
シルフィがカプセルに手を当てた。
「その嘘、本当?生身ってこと?」
ユウマはM4を握り直す。
「ここはまだ“表層部”だ。
目的はこの奥だろう」
シルフィがハッキング解析する。
「地下にメンテナンスを放棄された区画があるわ」
壁際の錆びついた非常階段を降りることにした。
キィ……キィ……
階段の金属が不気味に鳴り、
地下へ降りるごとに空気が湿っていく。
フロアに到達した瞬間──
空気が変わった。
「……ここだけ、時代遅れだな。」
フィーンの言葉どおり、
そこは旧研究施設だった。
壁はひび割れ、
配線は露出し、
床には厚く埃が積もっている。
天井のライトは半分が壊れ、
残ったライトもチカチカ明滅していた。
「現役棟との差がひどいわね……
まるで“忘れられた場所”みたい。」
シルフィが呟く。
「いや、違う。」
ユーノスが金属棚の奥を指した。
そこには──
セキュリティロック付きの巨大な金庫が隠れていた。
埃にまみれ、
まるで時間から取り残されたような佇まい。
ユウマが金庫を叩く。
「電源が入ってない……?」
「AIにつながっていない独立セキュリティよ。」
シルフィが端末を取り出す。
「これなら、私の解析だけが通る。」
「頼む、シルフィ。」
ユウマが頷く。
シルフィは端末を金庫に接続し、
光の鍵を次々と展開させていく。
その時──
――ピィイイイイイイィィィィィィ!!!
甲高い警告音が地下に響き渡った。
「セっ……セキュリティブザー!?」
シュナが後方を振り返る。
「しまった……AIに解析を気づかれた!」
シルフィが顔をしかめる。
直後。
階段上部から重い足音が響く。
ザッ……ザッ……ザッ……
フィーンが二丁を構える。
「親衛隊だ。……数は五。」
「もっと増えるぞ」
ユーノスがニヤリと笑う。
ユウマはM4を肩に当て固定し、
階段を睨んだ。
「シルフィは解析優先。
構えろ!」




