メガロドン2
夜の海は、不気味なほど静かだった。
マンハッタンの灯りがうっすら見える。
黒い水平線だけがゆらめいていた。
シティのAIがかすかに届く。スキルが使える状態になったのをユウマはHUDで確かめた。
夜の静寂を破るように――
ドンッ……!
救命ボートの底が揺れた。
巨大な何かがぶつかったのだ。
「――まさか、また来た?」
シュナが身をすくませる。
海面が膨れあがり、
次の瞬間、星空を裂くように白い牙が飛び出した。
メガロドンが跳ね上がった。
海が砕け、潮風が血の匂いを運ぶ。
「二度目は負けない……!!」
フィーンが先に動いた。
二丁のマグナ=ヘリクスを交差させ、
海面すれすれで近接全開の乱れ撃ち。
火花と水柱が同時に立ちのぼる。
シルフィが後方へ跳び下がりながら叫ぶ。
「右から五メートル先!下から突き上げてくる!」
「了解!」
ユウマが舵を急旋回し、
ボートは滑るように海面を逃れた。
牙の山が空気を切り裂き、
海面に巨大な穴を穿つ。
メガロドンが再び潜る――。
「来る!深い角度!」
フィーンの索敵発光が“巨大なシルエット”を照らす。
真下から急上昇。
「ユウマッ!!」
「任せろ!」
ユウマは跳んだ。
身体に宿る“近接加速”が稲妻のように弧を描く。
メガロドンの頭上に着地し、
M4を顎の隙間へ押し込み――
「うおおおおおッ!!」
ゼロ距離三点バースト。
パンッ!パンッ!パンッ!
海霧の中で怪物が金切り音を上げて身をのけぞらせた。
「ユウマ危ない!」
尾が振り回される。
ユウマの身体が海へと投げ飛ばされる。
「捕まえた!」
シルフィが海へ飛び込み、
ユウマの腕を掴んで引き戻した。
「いけえッ!!」
シュナは涙目で叫びながら、
短剣で尾の付け根へ飛びかかる。
逆関節へ突き刺し、怪物の動きを鈍らせる。
フィーンが連射しながら怒鳴る。
「ユーノス!!あんたの出番よ!!」
「了解。
――この距離なら、沈められる。」
ユーノスはボート中央の防水ケースを開けた。
中には、
第二次大戦の悪魔 と恐れられた
MG42を模したLMGが鎮座していた。
「MG42《グラチカ・モデル》……いくわよ。」
ユーノスが構え、
トリガーを絞った。
ドドドドドドドドドドドド!!!!!
船上とは思えない音圧が海を震わせた。
高速連射は弾の雨どころか“弾の壁”。
海面に巨大な円形の弾痕が幾重にも刻まれる。
メガロドンが悲鳴を上げてのけぞる。
鰓の一部がえぐれ、海が赤く染まった。
「よし!
――勝てる!!」
だが、メガロドンは
最後の悪あがきのように跳ねたあと、パンパンパンとM4の三点バーストを食らって絶命した。
するともう1匹のメガロドンが猛烈なスピードで近づいてくる。
「その嘘、本当?!」
「おいおい!2匹目かよ!冗談じゃないぜ!!」
フィーンが索敵発光でメガロドンの輪郭を光らせる。
海上百二十メートル。
シュナが落ち着いてスナイパーを構える。
「シュナ、いける?」
「任せときな!」
メガロドンが海上に大きく跳ねる。
サブァァァ!!
飛沫を盛大に巻き起こす。
シュナはボートの先端に立ち、
風を読み、波を読む、鼓動を合わせ――
トリガーを引いた。
夜空を走った弾丸が、
一本の光の糸となり――
メガロドンの頭蓋を貫いた。
海が大きく盛り上がり、
怪物はしばらく震えていたが――
やがて、ゆっくり沈んでいった。
波紋だけが静かに広がる。
「……やった……?」
シュナの声が震える。
「やったわ。」
シュナが狙撃モードを解除し、息を吐いた。
ユーノスが感心してシュナを見る。
「シュナの狙撃、大したものよ。揺れるボートから当てるなんて」
「ユウマのおかけで絶対距離感覚があるからね」
シルフィがユウマの腕にそっと寄り添う。
「ユウマ……怪我は?大丈夫……?」
「ああ……みんながいたから、生き残れた。」
フィーンが肩を叩く。
シュナがニコリと笑う。
シルフィがつぶやく。
「ハッキング解析によると、もうメガロドンは近くにいないわ」
ユーノスが髪を払って呟く。
「この五人なら……どんな怪物にも勝てるわ。」
ボートは再び、
黒い海の向こう――マンハッタンの灯へ向かった。




