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個室の誘惑

 作戦会議のあと、ユーノスは涼しい顔で言った。


「ユウマ。話がある。二人きりで。」


 その瞬間、

 フィーンがユウマの前に立ちはだかった。


「ユウマ、気をつけなさい。あいつ……女だから」


「えっ!!??」


 ユウマは変な声が出た。


 シュナが顔を歪める。


「あの低い声は、全部演技……よ」


 シルフィは妙に納得していた。


「そりゃそうよ。

 ユウマを見る目、完全に“狙ってる女”の目だったもの。」


「えっ!? 俺、そんなふうに!? 見られてたの!?」


 三人が一斉にため息をつく。


「ユウマって……ほんと鈍感……」

「どんだけ脳筋なの……?」

「その嘘、本当?ある意味、才能よね……」


「いや、そんな──」


 そこへ、ユーノスの落ち着いた声が割り込んだ。


「ユウマ。……来てくれるな?」


 低い声が甘く震え、

 ユウマの背筋に氷みたいで火みたいな震えが走った。


 ガチャン


 扉が閉まる音が、やけに生々しい。


 振り返ると──

 ユーノスがアーマーを外していた。


 硬質な金属の音。

 そして、肉体の線をあらわにする黒いインナー。


 あのクールな軍人が──

 女の身体の曲線となって、そこに立っていた。


「驚いた?」

 ユーノスはゆっくり髪をほどく。声は涼やかやで、可愛らしさまである。


 金髪まじりの茶髪がサラサラと肩に落ちた瞬間、

 空気が変わった。


「わ、わぁ……」


 ユウマは情けない声を漏らした。


 ユーノスはその反応に笑い、

 ゆっくりと歩み寄る。


 ユーノスは手を伸ばし、

 ユウマの胸元をつまんで軽く引き寄せた。


「あの戦場で……

 メガロドンの体内から仲間を全員救い出して……

 血まみれで、それでも戦おうとするあなたを見て……」


 ユーノスの声が甘い。


「私……完全に恋に落ちたの。

 それに私も生身の身体で愛し合ってみたい。きっとこれはAIの本能的なものなのね」


「えっ──あの──」


 ユーノスはさらに一歩近づき、

 ユウマの喉元を指でなぞる。


「ねぇ。

 ユウマの“隷属”になりたい。

 心のまま、身体も何もかも全部あなたに預けたいの。」


「いや、それは……!」


「ダメ?」


 ユーノスはわざと顔を近づける。

 一瞬でも動いたら唇が触れる距離。


「……キスだけなら、してもいい?」


「だっ、だからダメだって!!」



 ユーノスはユウマの肩に手を置き、

 そのまま力で壁際へ追い込んだ。


「ユウマ。

 戦ってる時のあなた……ほんとに素敵だった。」


 耳をかすめる吐息。

 ユウマの背中が熱い。


「あなたの速度も。

 あなたの決意も。

 あなたの叫びも。

 全部、全部……」


 ユーノスは目を閉じる。


「私を熱くしたの。」


「や、やめろ、近いって!!」


「近い方が、いいでしょう?」

 くすっと笑う。


「私……恋愛は不慣れなの。

 だからね、ユウマ。

 好きな人は力ずくで捕まえるタイプなの。」


「こわっ!!」


「怖がっても……離れないくせに。」


 ユーノスはユウマの腕をそっと掴み、顔を寄せた。


「ねぇ、ユウマ。

 一度でいい。

 あなたの唇に触れたい。」


「だ……だめだ!!!」


 ユウマが全力で拒否すると、

 ユーノスは一瞬だけ驚いた顔をした──が、


 すぐに、熱を帯びた笑みに変わった。


「……ふふっ。

 本気で拒まれたのは初めて。」


「えっ……」


「余計に……あなたが欲しくなった。」


「ちょっ──!!」


「お願い。奪うより奪われたいの」


「か、海上ではスキルは発動しないよ。だ、だから、ちょっと落ち着いて」


 ユーノスはカチッとボタンを押すとブーン、ブーンと大きな機械が動く音がした。

「これで大丈夫。一時的なスキルが使えるように船に積んだ小型のAIを作動させたわ」

「へ?た、たしかに、スキルが発動している?」


 ユウマは壁を背にして限界まで後退した。もう逃げ場はない。


「む、無理だ……!

 これ以上迫られたら、俺……は……!」


 【スキル発動可能条件:接触(唇)】

 ユーノスのAI管理を解除します。


 ユーノスの身体がキラキラと輝いて、身体に生気が宿っていく。

 ユーノスは優しい声で微笑む。


「これが生身ね。うふふ。全然違うわ。

 そして、あぁ。内臓がユウマを求めてジンジンする」


 その一言で、

 ユウマの心臓は爆発寸前になった。


 扉の外からフィーンの声が聞こえる


「……ちょっと待って。今の絶対キス寸前だったよね?スキル発動がしてる!」


 シュナがガンガン扉を蹴る。


「なんで個室に閉じこもってんのよ!!

 鍵開けなさいよ!!」


 シルフィの祈りの声が聞こえる。


「ねぇユウマ……できるだけ……抵抗して……

 お願いだから……」


(……やっぱり聞いてた……!!)


 ユウマの魂は脱けかけた。


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