作戦会議
「ユウマ!!」
扉が開いた瞬間、
光のようにフィーンが飛び込んできた。
その勢いのまま、彼の胸へ抱きつく。
包帯が巻かれた腕が震え、頬がかすかに触れた。
「生きてて……よかった……ほんとに……」
肩口が濡れる。
フィーンの涙だった。
少し遅れて、シュナが歩み寄る。
包帯の下からこぼれる指先は弱く、震えていた。
「ユウマ……もう……いなくなったかと思った……」
泣き声は、彼女の胸に溜め込まれた恐怖そのものだった。
シルフィは他の二人より一歩後ろに立っていた。
けれどその瞳は揺れている。
海の色を映したまま、不安を抱えきれずに。
「……あの男の言うこと、信じるの?その嘘、本当?」
静かだが、消えてしまいそうな声。
ユウマは深く息を吸い、
三人の顔をひとりずつ見つめた。
命を取り戻したばかりの暗い医務室で、
彼女たちの瞳だけが確かな光だった。
「話は聞いたんだな」
ユーノスは三人が扉の外で耳を澄ませていたことを、
最初から分かっていたのだろう。
わざと聞かせたに違いない。
フィーンが腕を組んで言う。
「大体ね。
……で、どうするの?」
ユウマはうなずき、全員の声を求めた。
「フィーンはどう思う?」
フィーンは迷いなく答えた。
「《ゴッドイーター》……。
AIの“神”を食うなんて名前、ろくでもないわ。
ユーノスの話は筋は通ってる。
少なくとも、あいつがあたしたちを殺す理由はない」
次に、ユウマはシュナを見る。
「シュナは?」
シュナは唇を噛み、俯いて――
それでも勇気を振り絞って顔を上げた。
「私は……信じられない。
でも、このままじゃどこにも行けない。
マンハッタンに向かう途中でゴッドイーターが何をしてくるか……考えたくもない」
背中を丸め、拳を握ったまま続ける。
「……でも、マンハッタンには行かないといけない。
そこで、全部決めるしかない。……シルフィは?」
シルフィは胸に手を当て、微かに震えていた。
「……ユーノスは嘘をついてない。
そう思う。心がそう言ってる。
それにユーノスが私たちを殺そうと思えば、すでに全滅している。
傷の手当も武器の整備してくれた」
ひと呼吸置いて、彼女は静かに続ける。
「でも、《地上の星》の全員を信じることはできない。
味方だと決めるのは危険。
協力するなら、覚悟がいる」
ユウマは息を整え、最後に自分の想いを言葉に変えた。
「俺は――
SSSランクのバトルロワイヤルで勝つ。
赤鬼熊だろうがゴッドイーターだろうが、全員倒すだけだ」
三人が息を呑む。
それは、生きる覚悟と戦う決意を同時に宣言する声だった。
ユウマは医務室の鉄の匂いの中で、
静かに、確かに言った。
「……俺たちは、マンハッタンシティに行く」
フィーンの目が細く優しくなる。
シュナは安堵の涙をまたこぼし、
シルフィは胸に手を当てたまま深く頷いた。
ユウマは続ける。
「ゴッドイーターはそこにいる。
どんな相手でも、俺たちの前に立つなら倒す」
そして、遠くで船体が軋む音の中――
「ユーノスの言葉が本当なら……
奴は、俺たちの味方になり得る。
一緒に戦えるなら、それに越したことはない」
三人が、同時に呼吸を整えた。
信頼ではない。
希望でもない。
それは“共に立つ覚悟”が、四人のあいだに結ばれた瞬間だった。
ユウマは静かに言う。
「行こう。マンハッタンシティで――」
「ゴッドイーターを倒す」
その声は、医務室の空気を震わせ、
静かな船室の鉄壁を揺らすほどの熱を孕んでいた。
外では、夜の海の灯りが揺れている。




