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メガロドン

 海が低く、鈍く、震えた。


** ドゥン……ドゥゥン……**


「何……この振動……?」


 シルフィが怯えた声を漏らす。


 次の瞬間、

 海の底から 巨大な影 が浮上した。


 クジラほどの大きさ――

 だが形は違う。


 鋭い三角形の背びれ。

 楕円形の巨大な胴体。

 海面がボコッと盛り上がり、

 砕ける波の奥で 無数の歯列 が光った。


 フィーンが短くつぶやく。

「チッ。メガロドンかよ」


 メガロドン。


 古代の怪物が、目の前の海を割った。


「嘘……だろ……」

 ユウマの喉が震える。


「その嘘、本当?」


「全員、構えろ!!」


 フィーンが叫び、

 四人は濡れた銃を構えたが――


 銃は海水で完全に沈黙していた。


「ダメだ……作動しない……!」


「銃じゃない、ナイフだよ。ナイフに切り替えろ!!」


 フィーンが腰のサバイバルナイフを抜き、

 シュナとシルフィも続く。



 メガロドンは波を割り、

 ゴムボートめがけて突進した。


** ドォオオン!!**


 ボートは真上に跳ね上がり、

 木の葉のように宙へ投げ出される。


「くっ……!」

「掴まって!!」


 着水の衝撃で船底に亀裂が走る。


 メガロドンはすでに再び潜り、

 黒い影となって円を描いていた。


 海面が、沈黙している。


(次だ――)


 巨大な影がボートの下を通り抜け、

 急浮上してきた。


「来る!!」


** ズバァアアアッ!!**


 海面を突き破る巨体。

 その勢いでボートは傾き、

 ユウマたちは海水の上に投げ出された。


「ユウマ!!」

 シルフィが必死に腕を掴む。


 その瞬間、

 メガロドンの顎が二人に迫った。


「行かせない!!」


 フィーンが躊躇なく飛び込み、

 ナイフで巨体の眼の上を裂く。


 水が爆ぜ、怪物が暴れる。


「フィーン!!戻れ!!」


 だが――


 白い泡の向こうで、

 フィーンの姿が大きな影に呑まれた。


「うそ……フィーン……」

 シュナが凍りつく。


 海面に赤くも黒くもない、曖昧な色が広がる。


 メガロドンが円を描いて回り込み、

 次のターゲットを定めていた。


「来るわ……ユウマ、シルフィ、離れて!!」


 シュナはナイフを構え、

 波の上で立つように蹴り出した。


「シュナ!!」

「ダメ!!」


 怪物が海面を割る――


 白い飛沫、巨大な影、鋭い軌道。


 次の瞬間、

 シュナの姿は波の中へ掻き消えた。


「……シュナ……?」


 シルフィの声が震える。


 残されたのは

 ユウマとシルフィだけ。


 怪物は完全に標的を定めていた。


「ユウマ……」

 シルフィが震える指先でユウマの腕を掴む。

「私……行かせないから……絶対に……」


「シルフィ、離れろ!お前まで――」


「離れない!!」


 メガロドンが真正面から跳び上がる。


「来い……!!」


 シルフィは叫び、

 ユウマを突き飛ばした。


 次の瞬間、

 白い波がすべてを飲み込み――

 彼女の姿は見えなくなった。


「シルフィィィィ――ッ!!」


 ユウマひとりが残された。


 波が静まり返る。

 水音が耳鳴りのように響く。


(……近接加速を使えば……!)


 ユウマは限界まで集中し、

 海中に潜る巨大影を捉える。


(来い……ッ!)


 視界が引き延ばされる。

 世界が遅くなる。


 近接加速――

 だが 水中では加速の効果は薄まる。


 怪物が目の前に迫る。


 巨大な顎、黒い眼、

 海を割る力。


「ああああああッ!!」


 ユウマはナイフを構え、

 その喉元へ飛び込んだ――


 が。


 海の力は、あまりに重かった。


 刃は届く前に、

 彼の身体は白い泡の中へ吸い込まれ――


 白い泡が弾ける。

 海の世界が反転し、光も音もねじれる。


 ユウマは巨大な顎に引きちぎられる寸前、

 “本能そのもの”で近接加速を発動した。


(離すかよ……こっちは……全員、置いていけるかよ!!)


 視界が裂け、世界が何倍にも引き延ばされる。

 メガロドンの口内――暗黒の洞窟のような空間で、

 ユウマの身体は めちゃくちゃな速度で跳ね回った。


 加速、斬撃、反転、また加速。


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