表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/69

ミッション:92

 警告音。ゲートの光がほどけ、視界が一気に俯瞰から一人称へ落ちる。

 砂混じりのダウンタウン、風切り音。HUD上に敵影候補が点滅――ドロップ開始。

 バーンナウトシティでの21戦目。もう慣れたものだ。


「武器もあることだし、ねぇ、ユウマがほしいの」


「敵に見つかる」


「その嘘、本当?ハッキング解析によると近くに敵はいないわ」


「……キスだけだよ」


「もう、いけず」


 軽く唇を触れ合わせたつもりが、シルフィは蛇のように身体を絡めてきた。

 次の瞬間、ねっとりと熱いキス。舌が絡み、息が混ざる。


 ユウマの舌をれろれろ、ちゅっちゅっとシルフィが吸っては舐める。


「あぁん、いい……もっと、もっとちょうだい」


 んんんっ!れろれろ、ちゅちゅん


「AIに排除されたら、フィーンを探せなくなるぞ」


「分かってる。でも――リンクが上がったみたい」


 ユウマの囁きと同時に、胸骨の奥で鼓動が二重になる。

 隷属進化リンク――呼吸、視線、筋収縮が同期し、反応速度が跳ね上がる。

 シルフィがハッキング解析した情報がHUDに表示される。

 敵の場所が手に取るように分かる。


「(左の非常階段、三階)」「(了解)」


 もはや声はいらない。

 思考の端同士が触れ、戦術が――跳ぶ。


 ユウマ、着地と同時にダッシュ。

 アスファルトを蹴る音が一拍遅れて返る。

 シルフィは壁面の手すりを踏み台に、非常階段を三段飛ばし。

 踊り場、反射で光。敵一。


 ユウマが近接加速で一歩だけ世界を縮め、M4の銃口で敵のストックを弾く。

 肘、肩、トリガー、三拍子で3点バースト。

 壁に弾痕の花が咲き、キルログが流れた。


 上階で金属音。扉が開く。

「(二)」「(任せて)」


 シルフィが滑り込み、ショットガンが吠える。

 シルフィのショットガンは、ダイヤモンド武器のベネリM1014――M3の進化モデル。フルオートで信頼性が高い。

 散弾の雲がバイザーを粉砕。

 続けてハッキング解析。建物内部のセンサーログを引き抜き、赤いワイヤーフレームが展開。

 熱源、三つ。階段裏。


 ユウマは腰を落とし、ダッシュ→ジャンプ。

 階段の手すりを蹴って壁走り。俯角で三連射。

 降りざまにサイドアームへ持ち替え、残る一人の足首を撃ち抜く。

 転倒した敵の後頭部に、シルフィの銃口が触れる。

 「アウト」――AI審判の声が遅れて届く。俺たちの方が速い。


 マップ中央、高架の下に補給ポッド。

 開けに出れば狙撃の餌だ。

「(煙、投げる)」「(高架梁、走る)」


 スモークが広がる瞬間、ユウマは近接加速で速度を上げる。

 空白の縁を走り抜け、梁に飛び乗ったシルフィがケーブルをワンハンドスイング。

 流星のように軌道を描き、下に陣取る二人組の背後へ落ちた。

 ショットガンがドンと低く一発。

 続いてユウマのM4が刻む。

 AI審判がまた遅れる――「ダブルキル」。遅延0.18秒。リンクの方が速い。


 ユウマはスライディングでエアコンの影に滑り込み、反応の遅い狙撃手を一瞬で仕留める。

 シルフィは別ルートから突入、護衛の胸甲を粉砕。

 屋上制圧。「残り12」。


 工場棟中腹、コンベアの上――三人チーム。盾・突撃・支援。定番の構成。

「(正面、捨てる。上を使う)」「(了解)」


 ユウマは正面に飛び出し、敵の視線を奪う。

 盾が突進。近接加速で一歩、横へ世界を滑らせ、盾のリムを掌で押し流す。

 軸足を殺し、膝蹴り、M4で3点。

 突撃が迫る。支柱を蹴って背後の梁へジャンプ。

 シルフィが天窓からスライディング降下――ショットガン一閃。

 至近距離で胸甲に花を咲かせる。

 ユウマはスモークの縁で赤外輪郭を頼りに連射。

 「残り6」。


 外へ。円は最終縮小。

 廃線の上、風が強い。遠くで銃声、砂が舞う。

「(残り二チーム。右土手に二、左積荷に二)」「(右、飛ぶ)」


 ユウマが全力ダッシュ。

 レールの継ぎ目をポン、ポンと踏み、土手の手前で大ジャンプ。

 着地と同時に近接加速。視界が伸びる。

 敵が構えるより早く、バレルを押し下げ、肩で突き、M4でパンパンパンッと 3点。

 もう一人がナイフで詰める。

 ユウマは半身でかわし、肘→ストックで顎をはね上げ、一発。クリア。


 左――積荷の陰から連射。反動のクセが鋭い。

「(抑える)」「(回る)」


 ユウマが短距離ダッシュで弾幕を張り、顔を上げさせない。

 シルフィは貨車の屋根へ跳び、鉄骨を駆け、縁から空中スライディングで背後へ落ちる。

 着地と同時にショットガン。

 もう一人が振り向く。銃身をたたむように叩き落とし、腹部へ一射。沈黙。


 「残り――二」。

 無線が静かになり、風だけが乾いた線を引く。

 最後のチームが見えない。


「(見せないんじゃない、消えてる。ログがない)」「(地形スキャン?)」「(やる)」


 シルフィの指が空を裂くように踊り、ハッキング解析が深層へ潜る。

 機械室、保守カメラ、古い監視網。死んだ目を一つずつ起動し、ばらばらの画角を縫い合わせる。

 ――見えた。積荷の下、錆びたピット。二つの熱源。

「(下)」「(行く)」


 ユウマが梯子を半段飛ばしで降下。

 ピットの空気は冷たく、古い。

 最奥、金網の向こうで二人が狙っていた。


 真正面は悪手。

 ユウマは配線管を蹴り上がり、ジャンプで金網上に手をかけ、ぶら下がりから前転落下。

 同時にシルフィが上からフラッシュ。

 白光の中心でユウマは近接加速を重ね、M4の二点を一人の胸に、体の回転の終わりで二点をもう一人の肩へ。

 肩を撃たれた男が膝をつく。その隙にシルフィが降り、ズダダンッとショットガンで仕上げる。


 ――静寂。


 AI審判のアナウンスが、ようやく追いつく。


 「winner:チーム“ユウマ&シルフィ”。」


 「勝数:21、勝率:91%。昇格条件を満たしました。――Sランクへ」


 HUDに昇格通知が浮かぶ。

 シルフィが息を吐き、ユウマと視線を交わす。

 リンクの鼓動は穏やかだが、まだ熱い。


「……行けるね」


「ああ。ここから、もっと厳しい戦いになる」


 ロビーへのエレベーターで、ユウマは記録保管庫を呼び出した。

 スクロールの隙間――一つだけ強い光。フィーン。

 彼女はSランク限定のバトルロワイヤルへ行っていた。


「フィーンの足跡を……見つける」


 ユウマは拳を握る。リンクの脈が、ひとつ強く打った。

 「――次はそこだ。失踪のヒントは、きっとバトルロワイヤルにある」

 シルフィが頷く。

 扉が開き、ロビーの光が二人を包む。

 AI審判の視線よりも速く、彼らはもう――次の戦場を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ