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爆発の手前

 夜が、砂を呑みこんでいた。

 風は息を潜め、星々がまるでこちらを見張るように瞬いている。

 どこまでも続く砂の海――サンドホロウ。

 昼の灼熱を失った砂は、冷たく、それでいて妙に湿ったようなぬくもりを孕んでいた。


 テントの中。

 焚き火の明かりが揺れて、二人の影を壁に映し出している。

 ユウマとシルフィ。

 ただ二人きり。


 沈黙。

 それは静けさではなく、張りつめた緊張だった。


 貞節のマスクが二人の口元を覆う。


 シルフィが、ゆっくりと顔を上げる。

 その瞳は、闇の中でも光を失わない。

 彼女は戦士の顔ではなく、ただの“ひとりの女”として、ユウマを見つめていた。


「……やっと、自由になったのね」


 小さな声。

 それは、風が触れたら壊れてしまいそうなほど儚かった。


「ここには、もう誰も見ていない。

 ――あなたと、私だけ」


 ユウマの胸が波打つ。

 彼女の言葉は、ゆっくりと血の中に染み込んでくるようだった。


「ユウマ、わたし……もう我慢できないの。

 あなたの名前を呼ぶたびに、身体が熱くなるの。

 どうしてこんなに、あなたを求めてしまうんだろう……」


 その声は震えていた。

 欲望ではなく、痛みに近い震え。


 ユウマは唇を噛んだ。

 わかっている。

 これは、隷属スキルの影響だ。

 キスというトリガーを発動させる前の、未確定の状態。

 まるで“磁石のSとN”が至近距離で引き合い、

 どちらも爆ぜる寸前で止まっているような、危うい均衡。


 頭の片隅で理性が警鐘を鳴らす。

 だが、心と身体がまるで別の意志を持ったように、熱を放ち続けていた。


 シルフィの唇が、ほんの数センチ先にある。

 マスクで覆われていなければ、もう何度キスをしただろう。

 その距離が、永遠よりも遠く感じられる。


「……シルフィ」


 名を呼ぶと、彼女の肩がびくりと震えた。

 その反応が、また熱を呼び覚ます。


「これ以上は、危険だよ」

「危険でもいいの」

「俺は……お前を隷属させたくない」

「その嘘、本当?隷属のことなんて、どうでもいいの。あなたがいるなら、それで」


 シルフィの瞳が潤む。

 それは涙ではなく、光の反射だった。

 焚き火の橙が、彼女の横顔を濡らすように照らす。


「ユウマ。

 あなたを見ていると、心臓が痛いの。

 それが“恋”なのか、“スキルの呪い”なのか、わからない。

 でも、どちらでもいい。

 私はこの痛みを、生きている証として感じていたい」


 ユウマは、喉が焼けるような息を吐いた。

 自分もまた、同じ渦の中にいる。

 理性は叫ぶ。――「これはスキルの呪いだ」。

 けれどその錯覚が、あまりにも甘く、現実だった。


 唇が触れたら、すべてが壊れる。

 でも、触れないでいるのは、もっと苦しかった。


 シルフィがそっと、ユウマの頬に手を伸ばす。

 手袋越しのはずなのに、熱が伝わる。

 静かな呼吸が、重なる。


 そして――二人の影が、ゆっくりと重なった。

 唇が触れる寸前、彼女は小さく笑った。


「……ねえ、ユウマ。

 もし、これが呪いなら、あなたと一緒に受けたい」


 焚き火が、ぱちりと音を立てた。

 その一瞬で、時間が止まったように感じられた。


 だが、ユウマは――踏みとどまった。


 ほんの数ミリの距離で、息を止めたまま、彼は囁く。


「シルフィ。……お前は自由でいてくれ。

 俺は、お前を“愛して”しまった。」


 シルフィの瞳が、深い夜の色に沈む。

 それは悲しみではなかった。

 どこか誇らしげで、切ない笑みだった。


「ユウマ。

 あなたって、ほんとにずるい人ね」


 そう言って、彼女は肩にもたれかかる。

 体温が重なり、息が混じる。

 それだけで、世界は満ちていた。


 ――唇を触れずに、愛する。

 

 【隷属Lv0:契約不成立】


「隷属なんて嫌だろ?」


 あぁ。目の前のシルフィをどうして大切にできるだろう。


「そんなことどうでもいい。何よりも、わたしは、もう悲しいよ」


 え?


「悲しいの?」


 何が?何がシルフィを悲しませているんだろう。


「わたしはずっとユウマと一緒にいたいのに。お願い。今夜だけ、悲しみを聞いてほしいの。

 もう言わないから」


 どうしたらいいか分からなくて、シルフィを抱きしめる。


「シルフィ、愛してるよ」


 そう。この気持ちを何度でも確かめる。

 

「ユウマ、ありがとう。わたしもよ。ねぇ、わたしを死んでも覚えていれるくらい。強く強く思って。お願い」


 強く、強く。

 まるで明日にでもユウマが死ぬかのように、シルフィは泣きじゃくる。


「シルフィ。どうしたの?まだまだ生きてるよ。明日も、明後日も」


 どうしたんだろう?


「きっと欲望に負けて、わたしたちはキスをする。欲望に溺れて、わたしは消失するんだ。嫌だ、嫌だ、嫌だ」


 小さな子供みたいにシルフィが泣きじゃくる。

 白い手でユウマの胸板を弱々しく叩く。

 初めて見た。こんなシルフィは。


「わたし、今まで生きてきた中で、今日ほど、恥ずかしくて、緊張して、戸惑って、嬉しかった日はない。

 生きてるって感じた。今までで一番。

 その日をくれたのはユウマよ」


 はらはらと泣くシルフィの頭を撫でる。目も目の下も白い肌が真っ赤に腫れてピンク色だ。


 ドキッ


 心臓を貫くように可愛い。


「ヒック」


 ああ、めちゃくちゃに愛してしまいたい。



「よしよし。大丈夫だよ。一緒にいるから」


 泣きすぎて、またヒック、ヒックとしゃっくりをするシルフィを抱っこしてテントの寝袋の上に連れていく。

 テントに入ると灯りがついた。


「ユウマ、今夜は一緒にいて。わたし、もう泣き疲れたよ」


「分かったよ。2人しかいないよ」


「ユウマなしではもう生きられない。もうわたしはユウマに隷属してしまいたい。いや、もう、してるかも」


 ユウマはシルフィの口を手で優しく塞ぐいだ。

 シルフィがユウマを抱きしめる。

 少し乱暴にシルフィの上着を剥ぎ取るように脱がす。


 シルフィの甘い匂いがふわりと広がった。

 

 真っ白な肌にたわわな乳。ピンク色で小さな乳首が硬く締まっている。

 

 なんて綺麗なんだろ。


「ねぇ、たくさんして?ユウマで、わたしを満たして欲しいの」


「シルフィ。大好きだよ」


 シルフィの柔らかい胸を鷲掴みにした。

 白いおっぱいに手の跡が赤く残るくらいに。


「あぁん、ユウマ。もっと強くしてほしいの。あぁ」


 近接加速!


 激しくシルフィをもちくちゃにする。


「んんんんっ!!んぁぁ!!」


 本能が駆け巡って、お互い欲情のままに身を任せる。


 マスクがあるのをいいことにガンガンとお互いのマスクをぶつけあう。

 もう爆発してしまいそうだ。


 【隷属Lv0:契約不成立】

 エラー

 エラー

 エラー


 高めの声でひゃぁん、ひゃぁんっと初々しい喘いでいたシルフィの声やユウマの荒々しい喘ぎ声が砂漠の夜に響いた。


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