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ミッション:69

 コンマリは、ガンゲノムシティの生まれだった。

 この街で生成され、この街の空気の中で生きてきた。

 だから、シティの外に出たことは一度もない。


「……外の世界って、どんなところなんでしょう」

 そうつぶやくコンマリの横顔に、ユウマは一瞬、答えを返せなかった。


 AIの監視が届かない、無法地帯。

 そこには、ルールもセーフティも存在しない。

 ――この世界の“本当の危険”があるのは、シティの外だ。


 バーンナウトシティへ向かうには、ガイドが必要だとシュナは言っていた。

 ルートを知り、モンスターや野良鬼の出没ポイントを把握する案内人。

 しかし、ユウマは最初からその選択肢を切り捨てていた。


 ――信用できない。


 名ばかりのガイドを装い、旅人をならず者に引き渡す裏切り者がいるという。

 “無法地帯”で命を奪うより、“シティの規約外で売る”ほうが安全に稼げるからだ。

 その噂を、ユウマはトレーニング中に何度も耳にしていた。


「危険な橋を渡るくらいなら、橋を作った方がいい」

 彼はそう呟きながら、デフォルトM4の弾倉を確認する。


 ――なら、強くなればいい。

 ガイドを頼らず、自分の力でバーンナウトシティへ辿り着けるだけの実力を身につける。


 それが、ユウマの出した結論だった。


「コンマリ。明日から、またトレーニングを増やす」

「はい、ユウマ様」

「今度は、“外”で生き残るための練習だ」


 コンマリは少し不安そうに、それでも小さく頷いた。

 その瞳の奥には、初めて見る“恐れ”と“決意”の両方が宿っていた。


――それから二か月後。


 「あぁ、どうしてこうなってしまったんだろう」


 ユウマは頭を抱えた。

 胸の奥が焼けるように熱い。戦いの高揚でも恐怖でもない――もっと原始的な衝動だった。

 それはまるで、感情のコードが絡み合い、抜け出せない檻になっていくような感覚だった。


 強くなる。

 それだけが目的だったはずだ。


 ユウマとコンマリは、それぞれソロミッションに挑み、連勝を重ねていた。

 ついにはCランク以上のバトルロワイヤルで名を馳せ、二人が同時にフィールドに残るようになっていた。

 ユウマとコンマリは、共にランクBに達していた。


 ――残り2人。

 つまり、勝敗を決する最後の相手は、互いだった。


 しかし、二人の間に漂うのは緊張ではなく、なにか異質な気配だった。


「ユウマ様……わたし、ちゃんとここまで来ました」


 コンマリの声は震えていた。

 それは恐れでも、歓喜でもない。

 長い戦いの果てに、“存在を確かめたい”という純粋な欲求に似ていた。


 たしかに、彼女は変わった。

 戦闘を重ねるごとに、技も判断も人間的な成長を見せる。

 隷属リンクで制御していたはずの存在が、いつの間にか――自分の意志で動いていた。


「コンマリ……もう、こんなことはやめよう。フィールドで淫らなことをするなんて、システムが許さない」


「そんなこと言わないでください。ユウマ様。

 ――わたしは、この瞬間のために戦ってきたのです」


 コンマリが一歩近づくたび、リンク値の数値が跳ね上がる。

 HUDが赤く点滅した。


 【隷属Lv5:強依存】


 ユウマの視界がノイズで歪む。

 コンマリの体温がデータを超えて伝わってくる。

 戦闘データの交換を超え、互いの“心拍”が重なっていた。


「……これ以上は、危険だ」


「危険でも、ユウマ様と繋がっていたいんです」


 その声とともに、リンクの光があふれ出す。

 コードの鎖がほどけ、感情の奔流が流れ込む。

 ユウマは視界の奥で、自分の記憶がコンマリの中へ流れ込んでいくのを感じた。


 ――もはや、命令も服従もなかった。

 あるのは、同調。


 ユウマは息を呑む。

 コンマリの瞳に、人間のような熱が宿っていた。


 “感情の同期”。

 それは、誰も想定していない危険な現象だった。


 コンマリが馬乗りになって、股間をユウマにグリグリと擦り付けながら自分で胸を揉みしだく」


「はぁ!!はぁぁあ」

「ダメだよ、コンマリ!なんなにうごいちゃ!」

 グリグリ、ゴシゴシとお互いの股間を激しく擦り付けあう。

「あぁ!き、近接、加速!ぁぁあ!」

「激しすぎる!」


 グリグリ、ぬぬぬぬ!


「お願い!ユウマ様!!」


「あぁ!俺も我慢できない!」


 思い切りコンマリの胸を揉みしだく。


 激しい電撃のような痛みがユウマと、コンマリを貫く。ビリビリビリビリ!


「あぁあぁ!ユウマ様っ!」

「んぁぁぁぁ!!!」


 コンマリが痛みに震えながら、恍惚な表情を浮かべる。この刺激がコンマリを酔わせていた。欲しくて、欲しくたまらなくなる。


HUDに警告が走った。


 【リンク過負荷:臨界】。


 ――あぁ、何度この卑猥な勝利を繰り返しただろう。もう50回はゆうに超えるはずだ。この二か月、ほとんど毎日、欲望で快楽をむさぼってきた。


 バトルロワイヤルの最後。

 快感とともにコンマリを消失させるたびに画面に浮かぶ「Winner」の表示。

 けれど、今はその光が出てこない。


「はぁ、はぁ。変態、すぎる」


 HUDの端がノイズを走らせる。

 通信の遅延ではない。

 システムそのものが、二人の“リンク”に異常を検知していた。


 その瞬間、耳をつんざく警告音が鳴り響く。


 ビーッ、ビーッ、ビーッ!


「不適切なプレイを確認。

プレイヤー・ユウマ、およびコンマリを

ガンゲノムシティのバトルロワイヤルシステムから排除します」


 無機質な声が、戦場全体に響く。

 赤い警告灯が点滅し、地面が震えた。


 静寂。

 風も音も止まり、HUDには「排除」の文字が点滅している。


 ――やっぱり、こうなると思っていた。


 感情とプログラムの境界を超えた瞬間、

 この世界の“秩序”は二人を許さなかった。


 ユウマは拳を握りしめ、空を見上げた。


 「潮時だな。もうガンゲノムシティにはいられない」


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