特別な力
久々に更新します。
「番を忘れる何か……? まさか、王家に伝わるという、伝説の薬か!? 王位を継ぐ方が、ふさわしくない番が現れた時にだけ飲むという、あの薬のことなのか!? ……でもあの薬は、王位を継ぐ方でないと飲めないはず……」
ラッカルさんが驚いた顔のまま、つぶやいた。
「あ、ロイスさんが飲んだのは、その薬じゃないみたい。番の女性と国を出ると言ったロイスさんと、そんなことをしたら死ぬというロイスさんのお母様で公爵夫人との板挟みになった公爵が、国王様にその薬を分けて欲しいと頼んだけど、国王様は断ったんですって。国をおさめるために支障がでないようにするための非常用の特別な薬だから渡せないって。で、落胆した公爵が気の毒だから、かわりの物を渡したって、王女様は言ってた。結果的に、ロイスさんはそれを飲んで、番のことを忘れてしまったって」
「は……? いや、ちょっと待てくれ! わからないことばかりなんだが……。まず、そのかわりの物ってなんだ? 王家に伝わる薬以外、飲めば、番を忘れる物があるなんて聞いたことがない。しかも、なぜ、それをラジュ王女が公爵に渡した……? 王女の持ち物なのか、それは……?」
一気に疑問をまくしたてたラッカルさん。
「そのかわりの物が何かは、王女様は言わなかった。この国の第二バカ……じゃなくて、第二王子がその物を欲しがって、王女様に聞いてたんだけど、ジャナ国の王族の秘密にかかわることだから、今は言えないって言ってた。王女様にとったら、長年使っていない、効果があるかどうかわからない王家の薬より、そっちの物のほうがずっと貴重なんだって」
「王族の秘密にかかわり、王女にとったら貴重な物……。王女自身が持つことができて、公爵に自分の判断で渡せる物……。あっ、まさか……いや、いくらなんでも……違うな……」
「ラッカルさん、もしかして、心当たりがあるの?」
ラッカルさんは首を横にふった。
「ふと、思い浮かんだものがあったが、番を忘れられるかといわれれば、そんな話は聞いたことがないから違うと思う。……他には、王女はその物について、なにか言っていたか?」
「あとは……それを飲めば、確実に番のことは忘れられるけど、その物は、番を忘れるための物じゃない。だから、番を忘れる目的でその物を飲んだら、別の影響がでてしまうって王女様は言ってた。ラッカルさんの話を聞いて、以前のロイスさんを知った今だから私が思うのは、その物を飲んだ影響は、あの感情がないような顔で、ただ王女様に従うロイスさんの状態なんじゃないのかな……」
ラッカルさんが、思いっきり顔をしかめた。
「くそっ! ロイスに変な物を飲ませやがって! でも、なんで、そんな物をロイスは飲んだんだ? まさか、ロイスは無理やり飲まされたのか……!?」
「ううん、自ら飲んだ……というか、ロイスさんは飲まざるを得ない状況に追い詰められたみたい。公爵は、その物を何かに混ぜて、ロイスさんに気づかれないよう飲ませるつもりだったみたいだけれど、その物は薬とは違って、固いし溶けないから、無理だって王女様が言ってたから」
「固くて溶けない物……」
「王女様の説明だと、公爵夫人が、それを飲んでも番の女性と一緒にいたいと思うなら、すきにしたらいいと条件をだしたんだけど、ロイスさんは飲むことを拒否した。そうしたら、公爵夫人が、ロイスさんに言ったみたい。番だからそばにいたいだけなんじゃないのかって……。すると、それを聞いた番の女性が、自分のことを愛しているなら飲んでほしい。番という得体のしれないものでつながっているだけだと不安だって必死で頼んだから、ロイスさんは飲んだんだって」
「ロイスらしいな……。番を忘れるなんて、生粋の獣人にとったら、想像するだけで恐ろしいことなのに、番の彼女の気持ちを尊重して、身をきられるような思いで飲んだんだろう。……あ、そういえば、あの時、ロイス、変なことを言ってたな……」
はっとしたように、ラッカルさんがつぶやいた。
「変なこと……?」
「婚約を報告しにきてくれた時、ロイスが急に真剣な顔で言ったんだ。『俺は番だから彼女の存在にひかれたが、彼女を知るにつれ、彼女自身を好きになった。だが、番がわからない彼女が、こんな短期間で、本当に俺のことを好きになってくれたんだろうか? もしかしたら、俺自身にはわからない特別な力があって、番を認識できない彼女を強制的に好きにさせているのかもしれない。だから、彼女と少し距離をおいて、彼女自身が自分の気持ちを確認できる時間をとるべきかと思うんだが、番の本能で俺は彼女から離れられないんだ……』って。俺は、ロイスが幸せすぎて、変なことを言いだしたと思った。だから、俺は、彼女を好きにさせたのは、特別な力でなく、おまえの魅力だろう。せっかく婚約したのに、離れるなんて何言ってるんだ、マリッジブルーみたいなもんじゃないのかって、笑いながらロイスに言ったんだ。……だが、今思うと、ロイスは本気で、そのことをずっと気にしていたから、そんな物を飲んだのかもしれない……」
「好きにさせる力……あっ! あの、ラッカルさん! 実は、さっき、ルーファスがロイスさんに魅了みたいな力があるって言ってた」
「え? 魅了……?」
「ルーファスが言うには、自分も目を使って威圧するからわかるけど、私を見るときだけロイスさんの視線に、魅了みたいな、ねばりつくような力がのってたんだって。ルーファスの指摘に、ロイスさんが本当に驚いてて……。それを見たルーファスが無意識かって言ってた」
「無意識……」
「その時、私、ロイスさんの瞳から、深い悲しみがあふれ出しているように思えて、大泣きしてしまったんだよね。ルーファスは私にものすごく過保護だから、私につけこむな、番の娘の代わりにしようとしたら許さないとかって、ロイスさんに怒ってたから、ルーファスにはそう思えたのかもしれない。私がロイスさんを見て、勝手に悲しくなっただけなんだけどね」
「いや、あれだけ強い竜の獣人がそう言ったのなら、本当にロイスには魅了の力があるのかもしれない……。そうなると、番だった彼女とララベル様にだけ、ロイスの魅了が発動したってことになるのか……。ロイド公爵家のご子息がロイスを警戒して怒るのも無理はないな……」
そうつぶやいたあと、ラッカルさんの瞳がひたと私を見据えた。
「ララベル様はロイスのために、泣いてくれたんだな。ありがとう……。俺はそんなララベル様にできる限り協力すると誓う。時間がないから、今度は俺の番だ。俺が知っていることをララベル様に教えておく」
おひさしぶりです。バタバタしており、お休みしていましたが、更新を再開します。ラストにむかって、不定期ではありますが、すすめていきたいと思います。よろしくお願いします。




