ピンチです!
ララベル視点に戻ります。
庭にとびだした私。
ルーファスを早く追いかけなきゃいけないのに、遅れをとっちゃったな……。
まあ、第二王子のだらだらした歩きっぷりだと、普通においかけても追いつきそうだけれど、さすがに、他の人たちは、もっと先を歩いているだろうから、間に合わない。
でも、私には秘策がある!
ここからだと、マラミの咲いている場所までいくには、まずは、メインの小道をとおって、一旦、噴水のある庭の中心にでる。
そこから、少し戻るようにして、マラミへ続く道を歩いていくというのが、普通の道順だと思う。
が、もちろん、私は近道をする!
それも、究極の近道!
子どもの頃、かくれんぼの時に通っていたんだけれど、まだあるかな……?
あった!
道というよりは、植物と植物の隙間をぬけていくような感じだけれど、ここをたどれば、マラミのところには、割とまっすぐにいけるから、圧倒的に近い!
小柄な私でも、せまいと感じるほどの隙間なので、植物を傷つけないよう、ドレスの裾をもちあげて走る私。
貴族の令嬢としてはアウトだろうけれど、誰も見ていない!
ということで、なりふりかまわず走っていると、「誰だっ!」と、いう声とともに、植物の中から、いきなり、目の前に人が現れた。
「えっ……!? ララベル様!?」
「うわっ、コリンさん!?」
同時に声がでた。
手に持っていたスコップを、あわてて、おろした庭師のコリンさん。
「申し訳ありません、ララベル様! ここを通るのは私くらいのもんで、侵入者が走っておるのかと思いまして……」
コリンさんが、申し訳なさそうに頭をさげる。
いやいや、こっちこそ、申し訳ない。
誰だって、不審者だと思うよね……。
「コリンさん、こっちこそ、驚かせて、ごめんなさい! でもね、今、ルーファスの一大事なんです! ルーファスとその敵がマラミのところに向かってるから、先回りして、ルーファスを守りたいと思って! 確か、この道が一番近いんですよね!?」
「ルーファス坊ちゃまの一大事!? それは、いかん! 確かに、この道も近いですが、マラミのところになら、もっと早く行ける抜け道があります! 私についてきてください! 案内しますから!」
いつも、にこにこして、優しいおじいちゃんみたいなコリンさんが、きりっとして言った。
ルーファスを孫みたいにかわいがっているコリンさんだから、ルーファスの一大事と聞いて、戦闘モードに入っている。
コリンさんが案内してくれたら、間に合うかも!
「コリンさん、お願いします! ルーファスのために案内してください!」
私のよびかけに、コリンさんは大きくうなずいた。
「もちろんです! ルーファスぼっちゃまを守るためなら、なんでもやりますよ! 庭仕事で鍛えとりますから、そう簡単には負けません!」
と、スコップをにぎりしめる、コリンさん。
なんか、頼もしいよ、コリンさん!
もしかして、コリンさんって、すごく強いのかな……?
私はコリンさんの後に続いて、木々の隙間をぬけたり、くぐったりしながら、進んでいった。
これは、さすがに、コリンさん以外はわからない抜け道だわ。
「もうすぐですよ、ララベル様!」
と、コリンさん。
「え、もう!? 早いっ!」
「ララベル様、どうしましょうか? マラミの咲いているところにでるには、こっちの道。マラミの咲いている場所が見えるところにでるには、別の道になります」
「じゃあ、マラミの咲いている場所が見えるほうで。そこで隠れて見守りながら、いざという時に、私がとびだしていきます!」
「なるほど。じゃあ、私もララベル様と一緒に見守ります。ルーファス坊ちゃまに危害を加えようとする奴らは、この長年の相棒でやっつけてやりますよ!」
そう言って、スコップの柄を不敵な笑みをうかべて、なでたコリンさん。
おお、やっぱり、コリンさん強そう!
心強い味方がいてよかった!
そして、あっという間に、私たちは、目的の場所にたどり着いた。
「うわあ、ここからなら、マラミの花がよく見える!」
「そうでしょう? 向こうからは見えにくいですが、こっちからはよく見えるんですよ」
背後から、コリンさんの声がした。
私は、大きな木の後ろにはりつくようにして、マラミの咲く場所を確認する。
ルーファスたちはまだ来ていない。
コリンさんのおかげで先回りできたみたい。
向こうが油断している時に、ここから、さっと飛び出すこともできるし、ここから、石や靴をなげつけることもできる。
「ここなら、ばっちり、ルーファスを見守れるし、……ありがとうございます、コリンさん! 一緒に、ルーファスを守りましょう!」
私はマラミの花が咲いているあたりを凝視したまま、背後にいるコリンさんに声をかけた。
……あれ?
返事がない。
不思議に思ってふりかえると、コリンさんが倒れていた。
「えっ、コリンさん!? 大丈夫ですかっ!?」
びっくりしてかけよった瞬間、木の陰から手がのびてきて、私の体が強い力でひっぱられた。
「え? ちょっと、誰!? ぎゃっ……うぐっ……」
と言ったまま、声がでない。
口に布をかまされたみたい。
私はがむしゃらに頭をふって、逃れようとする。
でも、がっちり抑えられていて、逃れられない。
頭上から、低い声がした。
「おとなしくしていてください。あなたに危害は加えませんから」
そんなことより、ちょっと、コリンさんに何したの!?
そう叫びたいのに、「うーうーうー」という声しかでない。
すると、その声は私の気持ちを察したように言った。
「ああ、その老人には少し眠ってもらっただけですから、ご心配なく」
抵抗むなしく、私の体はひょいと持ち上げられて、運ばれていく。
倒れたままのコリンさん。
すぐそばには、相棒のスコップが無残に転がっている。
ルーファスを守るどころか、あっという間にしとめられた、私とコリンさん。
悲しいほど、弱かった……。
ルーファス、見守れなくてごめん……!!
ということで、私、どうやらピンチです!
誤字報告、ありがとうございました。
読みづらいところも多々あるかと思いますが、読んでくださっている方々、本当にありがとうございます!




