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私が一番嫌いな言葉。それは、番です!  作者: 水無月 あん


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なんで絡んでくるの!?

結局、ルーファスが3人をひきつれて、庭にでることになった。


ルーファスひとりに対して、敵は3人か……。

警戒するあまり、ルーファスの護衛騎士モード全開になった私は、その危険性を予想してみる。


もちろん、この中で一番油断できないのは王女様だよね。

ルーファスに邪な気持ちがあるし、なにより竜の力もあるから、何を仕掛けてくるかわからない。


その点、私の天敵である第二王子は弱そう。

腕に覚えのない私が、武器の靴がなくても、全力で突進すれば倒せるんじゃないかと思うくらい。

ただ、無駄に近づくのは嫌なので、突進はしたくない。

ということで、やっぱり、靴を投げるの一択!


もちろん、ルーファスだったら、眠っていても第二王子に負けることはないと断言できる。


だけど、ミナリア姉様にしたことといい、心根がひんまがっているからね。

王子らしさを微塵も感じないような、姑息な手段だって平気で使うと思う。


ルーファスの優秀さに嫉妬して、あわよくばこの国を追い出そうと考えるような、まれに見る器の小ささは、清廉な心を持つルーファスの隙をついてしまうかもしれない。

そう考えると、あなどれない!


ロイスさんは、うーん、難しいな……。

人柄は悪くないと思うし、私自身、かなり同情してしまっているから、正直、ロイスさんのことは敵だとは思いたくないんだよね。

ただ、問題は王女様に逆らえないこと。


しかも、王女様がクロヒョウの獣人は身体能力が高いといっていたから、もしも、王女様の命で、ルーファスになにか危害を加えようとしたら、手ごわい相手になりそう。


ちなみに、勉強はもちろん、運動神経もいいルーファスは剣もかなり強い。

まともに勝負をするならば、3人まとめてでも大丈夫だとは思う。


でも、ルーファスの本質は天使だからね。

今日みたいに珍しく戦闘モードに入っていたとしても、基本、人の悪意には鈍いんじゃないのかな。


悪意をいっぱい持っていそうな王女様や第二王子に隙をつかれてしまったらと思うと、心配しかない……。


やっぱり、ここは、こっそりあとをつけて、ルーファスを守らなければ!


もちろん、私は腕に覚えは全くないけれど、ルーファスが危なそうになったら大声をだすとか、靴を投げるとか、庭の石を投げるとか、とにかく、できることはなんでもして、絶対にルーファスを守る!


幸い庭のことはすみずみまで熟知している私。

最短ルートを選んで、全力で走れば、マラミのところまで先回りできるかも。


きっと、何かしかけるにしても、マラミのところに行ってからだと思うし。


ということで、ここからマラミのところまで最短で行けるルートを頭に思い描き、先回りして、ルーファスを見守るイメージをしていると、立ち上がったルーファスが顔をのぞきこんできた。


「こっそりついてきたらダメだよ、ララ」


「なんのことだか……」


あわててとぼける私。


「ララの考えてることは手にとるようにわかるよ。僕も離れたくないんだけどね。でも、今は危ないからダメ」


だから、危ないのはルーファスだって!


と、心の中で叫びつつ、

「うん、わかった。ここで待ってるね」

そう言って、にこにこと笑ってみせた私。


ルーファスはふっと笑って、レーナおばさまのほうを向いて言った。


「母上、しっかり、ララを見ていて。ララ、嘘ついてるから」


ええっ、ばれてる……!?

驚いて目を見開くと、ルーファスが私の頭を優しくなでた。


「だから、ララの考えてることは手にとるようにわかるって言ったよね? おとなしく待っててね」


さわやかな笑顔でそう言うと、ルーファスは庭にでていった。


何故か、私に勝ち誇ったような笑顔をみせたあと、ルーファスのあとを追いかける王女様。


その王女様に無表情なまま、つき従うロイスさん。


更にその後ろから、不貞腐れた顔をした第二王子が、邪悪な気をまき散らせながら、だらだらと歩いていく。


「ララちゃん、ルーファスのことは心配しなくても大丈夫よ。ララちゃんに見せたくない顔があるから、ララちゃんについてこないように言ったんだと思うし」


レーナおばさまが言った。


「え? 私に見せたくない顔……?」


「あ、いえ、なんでもないわ……。それより、いろいろと個性の強いゲストばかりで疲れたでしょう? 国王様に命じられて断れなかったとはいえ、こんなお茶会に参加してもらって、本当にごめんなさいね、ララちゃん。今度、必ず、この埋め合わせはするわね。そうだわ。ララちゃんの好きそうなお茶があるの。私が淹れるから、ゆっくり休んでいてね」


「ありがとうございます、レーナおばさま」


私の言葉に、ほほえんだレーナおばさま。

私のために自らお茶を淹れてくれようとして、席をたった。


その優雅な後ろ姿を見ながら、「ごめんなさい、レーナおばさま!」と、小声でつぶやいた後、すぐに庭にでる手段を考えはじめた私。


そう、私はちっともあきらめてはいない!

ルーファスのあとをつけるつもり満々なんだよね。


こうなったら、あのドアまで走っていって、強行突破するしかないのかな。

でも、ドアの前には護衛のランダさんが立っているんだよね……。


うーん、なんとか見逃して、庭にだしてくれないかな。

あ、なんなら、ランダさんごと引っ張っていったらいいかも! 


でも、ランダさんは、体が大きいから、すぐに向こうにばれてしまいそうだよね……とか色々考えていたその時だった。


ガチャン!


大きな音がなった。


続けて、ガチャン! ガシャーン! ガキン! ガチャガッチャン!


食器が落ちる音や、割れるような音が連続して響く。


なになになにっ!? 一体、なにがおこったの!?


びっくりして音がなったほうを見る。

すると、王子妃が両手をふりまわすようにして、テーブルにあったカップやお皿を床に投げ落としていた。


「アンヌ様! どうされましたか!?」


驚いた様子で、レーナおばさまが声をかけた。


「あ……あ、あの王女っ……! 私に、なにをしたのよっー!?」


王子妃が手にフォークをつかんでふりまわしながら、叫び始めた。


「アンヌ様。危ないので、その手をすぐにおろしてくださいませ!」


落ち着いた声で、でも、きっぱりとレーナおばさまが言った。

それと同時に執事のキリアンさんとマイヤーさん、そして、護衛のランダさんが、王子妃を刺激しないようにさささっと近づいていく。


興奮状態の王子妃は彼らに気づいていない。


荒れ狂う王子妃の顔は、さっきまでの無表情とはまるで違って、怒りのあまり真っ赤になっている。


王女様の竜の力で操られていたけど、それがとけたんだ……!

もしかして、王女様が庭にでてしまって距離が離れたから、とけたのかな……!?


フォークを武器のようににぎったまま、手をふりまわす王子妃。


キリアンさんとマイヤーさん、ランダさんがいるから大丈夫だろうけれど、万が一にでも、まわりの人たちに危害が及ばないか、ひやひやする!


息をのんで様子を見ていると、王子妃は、その怒りに燃える目を、ぎっと私に向けてきた。


「ちょっと、そこの小娘!」


叫ぶ王子妃。


えっ、小娘……?  

それって、もしかして、私のこと? 


っていうか、私を見ているから、私のことなんだろうね。 


確かに、私は背が低い。

ちびっこだ……。


でも、そんな斬新な呼びかたで呼ばれたことは一度もない。


王子妃の表情を見ていたら、いい意味で呼んでいるはずもないけれど、無視すると、ますます暴れそうにも思える。


じゃあ、どうするのがいいか……。

挑発されたと怒ってみるか、それとも、刺激しないよう無難に返事をしてみるか……。


うーん、反応が難しいよね……。


とまどう私に向かって、真っ赤な顔の王子妃が

「今度は、あんたかー!」

と、憎々しげに叫んできた。


ええ!? ちょっと、いきなり、なに!?

どういう意味!?


しかも、なんで私に絡んでくるの!?


私は、そんなことより、早く庭に出たいんだけど!

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