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私が一番嫌いな言葉。それは、番です!  作者: 水無月 あん


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約束

「では決まりだな! すぐにでも俺とアンヌは屋敷をでるから、ラジュ王女は、できるだけ早く、その物を用意……」


「ガイガー王子」


一気にしゃべる第二王子を王女様が強い口調でさえぎった。


「勝手に決めないで。別荘になる屋敷を持つことにひかれはするけれど、貴重な物と交換していいというほど欲しいわけではないわ。それに、私が本気でこの国に屋敷を持とうと思ったら、そうね……王家の息のかかっていない場所にしたいわね」


「何故だ?」


「深い意味はないのだけれど、単に疑ってしまうからかしら。ひっそりと監視されるんじゃないかって」


え、監視って……。


さっき聞いたばかりの事実そのまんまの言葉にドキッとする。

もしかして、第二王子が王家から監視されていること、王女様は察しているんだろうか……。


そう思った瞬間、体中から警戒する心がむくむくとわきあがってきた。

今なら、全身の毛を逆立てて警戒する猫の気持ちがよくわかる。


やっぱり、この王女様に油断したらいけない。

だって、ルーファスを狙っている王女様だから。ルーファスに害が及ばないように、一瞬たりとも気がぬけない。


「監視? そんなことはありえん」


「あら。ガイガー王子、どうしてそう言い切れるの?」


「俺は11年も住んでいるが、あの屋敷のまわりは静かで何もないから、監視するような怪しい人間がいたら、すぐにわかる。それに、もともとは王家所有の屋敷であったが、今は俺が譲り受けている。俺個人の持ち物だから、そんな心配は無用だ。ラジュ王女は竜の獣人としての力が強いから、用心などしない性格だと思っていたが、意外と用心深いのだな」


そう言って、第二王子は、ははっと笑った。


いやいや、笑ってる場合じゃないけど……。

11年の間ずっと監視されてるし、そのお屋敷も譲り受けてないんだって、と、心の中でつっこんでしまう。


「ガイガー王子。用心深さは強さでもあるわ。ガイガー王子は王族とは思えないほど素直ね。まあ、そこが魅力だとは思うのだけれど、もう少しまわりを見て用心したほうがよくってよ」


「俺が素直か……。褒められると照れるものだな」

と、笑みをみせる第二王子。


ん? 褒められる? って、いつ褒められた?


今の王女様の言葉は、第二王子が王族とは思えないほど単純すぎて、まわりが見えてない。もっと用心したほうがいいって忠告したんだと思ったけど……。


「フフ……。ガイガー王子って、私よりずっと年上なのに、そういうところ、かわいいわね。……わかったわ。ガイガー王子の望む物を用意するわ」


「本当か!? なら、すぐに屋敷を……」


「いえ、だから、それはいらないわ。でも、ただでというわけにはいかない。その物は貴重な物だし、なにより、それを用意するには、私にかなりの負担がかかるわ。私に何もメリットがないのなら、そんなことはしたくないの」


用意するために王女様にかなりの負担がかかる……?

一体、どういうことだろう……?


その時、すぐ隣にいるルーファスのまとう雰囲気が変わったような気がした。

見ると、王女様に探るような鋭い視線を向けている。


なにか重要なことに近づいてる……?

なんとなくだけど、そう思った。


「それだけ手にはいりにくい物なんだな。じゃあ、俺は何をラジュ王女にさしだせばいいんだ?」

と、何も考えていない様子で聞き返す第二王子。


「物じゃなくて、ガイガー王子本人を」


「は……? つまり、俺を望むということか……? いや、だが、その物をもらって番を忘れることができ、アンヌと離婚できたとしてもだな……、ラジュ王女と一緒になるのは気が進まないが……。正直、ラジュ王女は俺の好みじゃないからな。それに、せっかく番を忘れられたのに、自分の好きな相手を選べないのなら、飲む意味がないだろう……」


混乱した様子で、最低すぎる自分勝手な心のうちを垂れ流す第二王子。


「まあ、本当にひどいわね。でも、安心して? 私もガイガー王子は全然好みじゃないから。ガイガー王子と結婚したいだなんて思ってもいないし、これからも絶対に思うことはないわ」


「そっちもひどいな。……だが、それなら、よかった。じゃあ、俺本人というのはどういう意味だ?」


「私がお願いしたら、ガイガー王子には私の望むように動いてもらうってこと」


「ラジュ王女の望むように……? いや、それだと、俺にできないことだってあるだろう? たとえば、死ねといわれて死ねないようにな」


「本当に、ガイガー王子は私をなんだと思ってるの? そんなひどいことを私が願うわけないじゃないの。ガイガー王子にできるような、簡単なことしか頼まないわよ。ガイガー王子の身体を傷つけたり、財産を使わせるような頼みごとは一切しないわ。ただ、前もって約束してくださる? 私が望めば、いつでも動くと」


つきつけるように第二王子を強く見据える王女様。

金色の瞳がやけに光っている。


そして、その強い光の奥に、得体のしれない暗闇がひろがっているよう……。


私だったら、そんな約束絶対にしない。

いくら簡単なことであっても怖すぎるから。



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