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私が一番嫌いな言葉。それは、番です!  作者: 水無月 あん


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ロイスさんの気持ち

ロイスさんを見た第二王子は、嫌な笑みを浮かべて言った。


「まさか、ラジュ王女の話にでてきた公爵の息子が、今はラジュ王女の従者になり、ここにいるとはな……。それで、本当のところはどうなんだ?」


「本当のところ、……とは?」


ロイスさんが第二王子を感情のない目で見ながら、淡々と聞き返した。


「決まっているだろう? 俺が聞きたいのは、完全に番を忘れられたのかどうかってことだけだ。さっき、マイリ侯爵令嬢は番を忘れても、その娘自身を大事に思って身をひいたのではないか、などと言っていたが、相手は平民の娘。そんなことはありえん。もし、そんな気持ちがあるのなら、番を忘れきれてなかったということになるだろう? 俺は、お前が飲んだという、番を忘れる薬の代わりの物とやらの効果が知りたいんだ。中途半端に番を忘れるのであれば、それはそれで面倒だからな」


さっきから、このバカ王子はそればっかりだ!

自分のことしか考えていない。


あれだけのことをしておいて、ミナリア姉さまを傷つけたくせに、今になって、ミナリア姉さまに未練たらたらって、ほんと、最低すぎる!


「あら、ガイガー王子は私の言ったことを信用できないの? その代わりの物だって、副作用的とはいえ、完璧に番を忘れられるわよ。忘れたからこそ、ロイスはアルジロ国に行って平民にならずに、私の従者として、ここにいるのよ。あの娘を思って身を引いたなんて、ララベルさんの妄想よ。ララベルさんもただの人だから、そう思いたいんでしょうけれど、あり得ないわ。ただの人であるあの娘は、ロイスの番ということくらいしか取り柄がない娘だったし。それさえなくなったら、何も残らないじゃない。公爵子息でクロヒョウの獣人のロイスが、なにもない娘を大事に思うわけないわ。ねえ、そうでしょう、ロイス?」


王女様が隣の席に座るロイスさんに笑いながら聞いた。


王女様も、第二王子と同じで、なんて無神経なんだろう! 


「だから、ロイスさんにそれを言わせないでください! さっき、あんなに悲しみがあふれでる目をしていたのに……! 王女様は、ロイスさんのずっと近くにいて気づかないんですか!?」


気がついた時には、もう、私は叫んでいた。


王女様の顔が怒りで染まる。


「ちょっと、ララベルさん! あなたにロイスの何がわかるの!? 今日会ったばかりで、獣人でもないくせに!」


憎々しそうに私をにらむ王女様。


が、その横で、私を見るロイスさんの顔が苦しそうにゆがんだ。

大きな悲しみを耐えているようにしか見えない。


そう思ったら、その悲しみにひっぱられるようにロイスさんに向かって足が勝手に動き出す。


が、あれ……? 

前にすすまない……。


見ると、ルーファスが私の手をしっかりにぎっていた。


「ララは誰のところにも行かせない」


ルーファスは真剣な声でそう言うと、ロイスさんの方に鋭い視線を向けた。


「ララは君の番だった娘じゃない」


「……そんなことは、わかっていますが?」

と、感情のない声で答えるロイスさん。


その顔は、さっきまでの苦しみを耐えるような表情は消え、無表情に戻っていた。


「それなら、何故、力を使った?」


ルーファスがたたみかけるように聞く。


「え……?」


「あれが、クロヒョウの獣人の力なのかどうかはわからないが、さっき、君はララにだけ、変な力を使っただろう?」


「俺がクロヒョウの獣人の力を……? いえ……俺は、何も……使っていませんが……」


無表情だったロイスさんの目が、動揺したように揺れだした。


「なら、無意識か……。だとしたら、なおさら許せない。断言しておくが、ララは誰にでも優しいだけだ。君を特別、心配しているわけでもなんでもない。そんな心優しいララにつけこむな。すがりつくな。万が一、ララを君の番だった娘の代わりにしようだなんて思っているのなら絶対に許さない」


まわりが凍りつくような声で言い放ったルーファス。


「ちょっと待って、ルーファス! なんでそうなるの……!? つけこむもなにも、私は、何もされてないし、ロイスさんを見て、勝手に私が悲しくなっただけだよ!?」


私があわててそう言うと、ルーファスは首を横にふった。


「確かに、ララはあの従者に同情していた。いつだって、ララは優しいから、誰にだって、気持ちを寄せる。決して、奴だけが特別ってわけじゃない。だが、あの従者の視線からは、ララに向かう時だけ、わずかにだけど違うものが混じっていた。僕も目を使って威圧するからわかるんだ。どこか魅了に似た、ねばりつくような力がでていたんだと思う。おそらく、ララの優しさに訴えかけるようにして、ララの気持ちを煽り、ララの心を自分へとおびきよせようとしていたんだろう。それが無意識だったとしたら、余計に質が悪い……」


「ルーファス……! さっきから、あなたは何を言っているの? それだと、まるで、ロイスがララベルさんを気に入って、クロヒョウの獣人の力を使ったみたいじゃない? ありえないわ! そもそも、ルーファスは誤解している。この国にはクロヒョウの獣人がいないでしょうから、わからないかもしれないけれど、普通、クロヒョウの獣人に魅了のような力なんてないの。つまり、私やルーファスのような強い竜の獣人とは違って、ロイスは他人に干渉するような特別な力は持っていないわ。クロヒョウの獣人の能力は、身体能力の高さなんだから。そうよね、ロイス? あなたにそんな力、ないでしょう? もしも、そんな力があったら、私に黙ってないで報告するわよね?」


「…………はい」


興奮状態の王女様とはちがって、冷静に答えたロイスさん。

でも、なんだか、少し間があったのがひっかかった。


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