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私の親友ララ 1(アイリス視点)

※ アイリス視点です。



私、アイリスには親友がいる。幼馴染のララベルことララだ。


私が初めてララに会ったのは5歳の時。


私はリンド子爵家のひとり娘。

お父様は色々事業をしていて、貴族というよりは、根っからの商人みたいな感じだ。

私もお父様に似たみたいで商売に興味がある。

そのため、お父様の仕事先についていって、見学させてもらったりしていた。


「明日、マイリ侯爵家に行く約束があるんだが、侯爵と私は学園で友達だったんだよ。アイリスと同じ5歳の女の子がいるそうだから、仕事の話をしている間、遊んでおいで」


遊ぶ……?


そうお父様に言われた時は不安になった。


というのも、私は同じ年ごろの女の子たちと話があわない。

例えば、人形遊びをしていても、私は人形で遊ぶよりも、どんな人形が売れるのか考えてしまうから。

なので、もちろん、友達はいない。


しかも、マイリ侯爵家っていえば有名な高位貴族だ。


この国は、昔、獣人だけが住んでいた国で、竜の獣人が王族ということもあり、獣人のほうが上という差別的な考えを持つ獣人たちもまだ残っている。

ほんと、いつの時代の話をしてるの? って感じだけれど、そんな頭に石がつまったような時代錯誤な獣人たちも、おもてだって、純血の人であるマイリ侯爵家の悪口を言う猛者はいない。


そんなのに限って、堅実で評判のいいマイリ侯爵家とつながって、得をしたいと、こびへつらうから。

しかも、マイリ侯爵家は人だけが住むというライナ国の王族と縁続きでもある。


つまり、獣人の血だけで優位にたっていると考えるような、そこらへんの獣人貴族たちとは比べ物にならないくらい、由緒正しいお家柄ってこと。


でも、そんなすごい家の令嬢なら、やっぱり、深窓のご令嬢だったりするのかな。

あるいは、ものすごく甘やかされてて、わがままだったらどうしよう。


同年代の女の子の友達がひとりもいない私には、正直、ハードルが高い。

でも、お父様のお仕事のこともあるし、絶対に怒らせてはいけない。


悩んだ私はお父様に提案した。


「資料をもらったら、今日一日、必死で覚えますから、明日は私が侯爵様とお仕事の話をします。だから、お父様が私のかわりにご令嬢と遊んでもらえないですか?」


私の真剣な提案に、笑い上戸のお父様は涙を流して爆笑した。


「アイリス。仮に君たちがケンカをしたとしても、マイリ侯爵はそれで怒ったりするような方じゃない。とてもおおらかで優しい方だから、きっと、娘さんも優しいご令嬢だと思うよ。会ってみなさい、アイリス」


翌日、私としては珍しく、ガチガチに緊張して、ララに会った。


第一印象は、「あ、妖精がいる」だった。


太陽の光をあつめたような金色の髪の毛はゆるやかにウエーブしていて、まっすぐに私を見る大きな瞳は、すっきりと晴れた空のようなブルー。

背中に大きなリボンのあるドレスを着ていたこともあいまって、まさに妖精。


「はじめまして。私はララベル。ララって呼んでね!」

と、にっこり笑ったところまでは、まだ完全なる妖精だったララ。


そんな妖精との出会いに、緊張がピークに達してしまった私。

つい口をついてでたのは、お父様の仕事を見学させてもらう時、相手の大人にするような、型どおりの挨拶だった。


私の定番の挨拶は、お父様の仕事の相手には「しっかりしたご令嬢ですね」と褒められるものの、同じ年ごろの子どもたちは、「あ、変わった子だ」と、一気にひいていく、しろもの。


そんな私の挨拶にひるむことなく、好奇心いっぱいの顔でララは私を見ていた。

挨拶が終わると、もう、何を話していいかわからなくて、口ごもってしまった私。


すると、ララが、すごい勢いで、次から次へと私に関することを聞いてきた。


しかも、それを知ってどうするの? みたいな質問ばかりで、おもしろい子だなあと思ったら、一気に緊張がとけた。

そして、気が付いた時にはもう、家にいるような素の状態でララと話していた。


その話のなかで、私が猫の獣人だと言った時、急にララが深刻な顔になった。


「アイリスは『つがい』に会いたい?」

と聞いて来た。


「番? うーん、別に。興味がない。それに、うちの家系は猫の獣人だけど、血が薄いから、番ってわからないみたい。だからどうでもいいんだよね」


「あー、良かったー! アイリスが、『つがい』にあこがれてなくて!」

と、ララが大きく息をはいた。


「なんで?」


「私ね、一番きらいな言葉は『つがい』なの。『つがい』って聞くと、くつをなげつけたくなるの」


「え、靴をなげる……? なんでまた……」


それから、ララは小さなこぶしをにぎりしめ、親戚のご令嬢におきたという、あの誰もが知る有名なできごとを涙ながらに語り、そして、第二王子に靴をなげられなかったことを悔しそうに語った。


「ちなみに、その時、ララと王子様はどれくらい離れていたの?」


ふと気になってきいてみた。


「ここから、……あそこの壁くらいかな」


結構、距離がある。

5歳の女の子が靴をなげて届く距離なんだろうか……。


「ララはなにか体をきたえてるの? それとも、遠くにボールをなげたりとかできるの?」


「ううん」


「なら、靴をなげても当たらないかも……とか思わなかったの?」


「そんなの思わないよ! だって、あのくつには、わたしの全部をとじこめて、あの第二バカ王子をやっつけようと思ったんだもん。ジョナスお兄様にとめられなかったら、絶対あたってたよ! わたしのところから、あの第二バカ王子のところまで、すーっと道があいてたもんね。なげろってことだったんだよ!」

と、力強い口調で話したララ。


「そっか……。ララなら、あてられただろうね」

と、すっかり、ララにのまれてしまった私。


見た目は愛らしい妖精そのものなのに、熱くて、まっすぐで、おもしろすぎる、この中身。

ララと一緒にいたら、なんだかとても楽しい。


私は、生まれて初めて、この子と友達になりたい、そう思った。


嬉しいことに、ララもそう思ってくれたみたいで、お互いの屋敷を行き来するようになり、6歳からは同じ学園に通い始めた。


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