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私が一番嫌いな言葉。それは、番です!  作者: 水無月 あん


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勝手なことばかり

キリアンさんがお皿にとってくれた桃のジャムが入ったマカロンを食べてみる。


「ほわあ、おいしい……!」


あまりに美味しくて、思わず声がでた。

そんなに大きな声ではなかったのに妙に響いてしまい、皆さんの視線が集中する。


「ほんと、ララはかわいいね」

と、微笑むルーファス。


いや、それを言うならルーファスのほうでしょ?

今のその邪気のない笑顔、どこから見ても無敵のかわいらしさだから。


なんて考えていると、テーブルの向こう側から、あきれたような声がとんできた。


「信じられないくらい食べるわね、ララベルさんは。やっぱり、幼児にしか見えないわ。まさか、こんな人が……いえ、いいわ」


途中で話すのをやめた王女様。


こんな人が……のあとは、流れ的に私への批判的なことが続きそうだとは思うけれど、変なところでやめるから気になってしまう。

悪口であっても、そこまで言ったのなら、言いきってほしかった。


あれ……? なんか、ぞわっとする……。

と思ったら、第二王子が私をじっと見ていることに気がついた。


なに!? 

不気味なんだけど……!?


すると、第二王子が遠くを見るような目をした。


「ミナリアも甘いものが好きだった。厳しい王子妃教育の合間に、そんなふうに、おいしそうに食べていて、愛らしかった……。マイリ侯爵令嬢、やっぱり似てるな、あの頃のミナリアに……」


はああ……!? 

ミナリアねえさまに自分が何をしたか忘れたの!?


都合よく、思い出にひたらないで!  


と、怒りをこめて第二王子を見返した瞬間、隣の席の王子妃が席を立った。


ケーキ用のフォークが床にころがり、甲高い音が鳴った。

というか、今、王子妃はフォークを落としたんじゃなくて、床に投げつけたように見えたんだけど!?


でも、いくらなんでも、私の見間違いだよね? 

お茶会で、そんなことしないよね……!?


「おい、アンヌ! 一体、なにしてるんだ!? 恥ずかしいだろうが!」


第二王子が顔をしかめて、声を荒げた。

王子妃の顔がぐにゃりとゆがむ。


「恥ずかしい!? やっぱり、ガイガー様は、平民だった私が恥ずかしいのね!?」


「は? 何を言ってる……?」


「あの女と比べて、私のことが恥ずかしいってことなんでしょう!? あー、ミナリア、ミナリア、ミナリア……! 一体、いつまで、あの女がついてくるのよ!? ガイガー様だけじゃない、王宮でもどこでも、みんなみんな、あの女と比べて私のことを馬鹿にして……。あの女は、私と違って、環境が恵まれてただけじゃない!? 私だって、貴族の令嬢に生まれてたら、なんだって、できたわよ! 生まれた時から教育をうけられるんだから、できてあたり前よ! それなのに、私が、さも劣っているかのようにみんな馬鹿にして……。許せない!」


恨みのこもった目で第二王子を見ながら、まくしたてる王子妃。


「アンヌ! 誰もそんなことは言っていないだろう!? それに、ミナリアは……」


「あの女の名前を口にしないで!」


「落ち着け、アンヌ! 王女の前なんだぞ!?」


「それがなに? 今日だって、私はお茶会をしたいなんて言ってないのに、勝手に、話をとりつけて、無理やり連れてきたくせに。その王女と組んで何をこそこそしてるのやら。私と別れて、その王女と一緒になりたいとか? ああ、でも、王女はあなたの好みではないわね。あの女に似ても似つかないし。だから、そこの親戚の子に目をつけたってわけ? 甘い環境でぬくぬくと育って能天気なところが、あの女にそっくりだしね」


ゴンッと隣から重い音がした。

ルーファスがこぶしを机に落として、王子妃を鋭く見据えている。


「王子妃。それ以上、ララをおとしめることを口にするのなら、相応の覚悟を」


冷気を漂わせながら、言い放ったルーファス。

そんなルーファスを見て、王子妃は「はっ」と、ゆがんだ顔で笑った。


「はいはい、わかったわ。その子についてはガイガー様に関わらない限り、別にどうでもいいから。まわりの人たちに愛されてるのも、ほんと、あの女と一緒ね……。でも、そんな完璧な貴族令嬢だったのに、あの女は、ガイガー様の番じゃなかった。平民だった私が、この国の王子の番だったなんてね。誰もがほめたたえるあの女は、平民の私に負けたの。ああ、おかしい! だって、結婚式当日に捨てられたのよ。不幸な女よね!?」


そう言い放ち、よどんだ目を私に向けてきた王子妃。


勝手なことばかり言って……!


ぶちっと頭の中で何かが切れた音がした。


「ミナリアねえさまは不幸なんかじゃない! ものすごく幸せに暮らしています! それに、ミナリアねえさまが、みんなに褒められるのは、公爵家に生まれたからじゃないわ。沢山の努力をしてきたから! それに、みんなに愛されるのは、自分のことより人のことばかり思うような優しい人だから!」


気がつくと、王子妃に向かって私は叫んでいた。



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