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私が一番嫌いな言葉。それは、番です!  作者: 水無月 あん


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27/82

気合を入れて

「いやあ、これで、アンヌが変わってくれたらすべて上手くいくんだがな。ガイガー、皆に感謝し、しっかり茶会を成功させよ」


国王様が第二王子に命じるように言った。


「父上。それなら、わが屋敷にロイド公爵夫人に来ていただいて、アンヌを手伝ってもらうということでは……」

と、第二王子がくいさがる。


「くどいぞ、ガイガー! おまえの屋敷にこだわる必要はないではないか。マクシミリアンの申し出を有難く思え! 

だいたい、アンヌがああなったのは、おまえが頼りないせいだ。あんなに大騒ぎして皆に迷惑をかけて、一緒になった番だろうに。しっかりせんか!」


国王様が声を荒げた。

第二王子が悔しそうに唇をかむ。

どろどろとした澱んだ気が、第二王子から発せられているのが見えるよう。


それにしても、ここまで自分の屋敷で茶会をひらくことにこだわるなんて、そこにおびきよせることに意味があるってこと……?

しかも、私を招こうとするのは、私をなんらかの形で利用しようとしてるってことだよね。


何か企んでるとして、ルーファスのお屋敷に場所が変わっても、その企みを続行できるのかな……?

いや、無理か。だって、ルーファスのお屋敷は守りは万全だろうし。


それと、気になるのは、王子妃が一体どういう考えなのかということ。

もし、第二王子と王女様が何か企んでいたとしたら、王子妃もその仲間ってことなのか、それとも、全く知らされていないのか……。

普通に考えたら、王子妃教育を途中でやめ、ずっとひきこもっていた王子妃が、いくら王女に謝りたいからって、いきなりお茶会を開こうとするなんておかしな感じがする。


あと、もしも、そのよからぬたくらみのターゲットが私なら、万が一にも、レーナおばさまやロイド公爵様やルーファスに迷惑をかけたくない。


ルーファスのご家族に甘えて、みんなに守られているだけじゃ、いくらなんでも不甲斐ない。

しっかり目を見開いて、第二王子たちが不穏な行動をしようとしたら私が阻止しないと!


私の天敵、第二王子のことは本当は視界にも入れたくないけれど、お茶会の日は絶対に目をそらさない! 全身が拒否しようが、そこは根性で、目を見開いて、ずっと監視し続ける!

それと、当日はもしものことを考えて、武器になりそうな、できるだけ、とがった靴をはいていくことにしよう。


そう気合を入れていたら、王女様がフフと楽しそうに笑った。


「それなら、お茶会はルーファスの住むお屋敷に招いていただけるのですね! それはとっても楽しみですわ!」


「マクシミリアンの屋敷は美しいからな。ラジュ王女も満足されるだろう」


王女様の言葉に、満足そうに答える国王様。


そんな王女様を見て、第二王子が驚いた顔をした。


「どうしたのだ、ガイガー?」


ロイド公爵様が、すかさず第二王子に聞いた。


「あ……いえ……」


そういって口ごもったまま、目で何かを訴えるように、王女様を見続ける第二王子。


「あら、ガイガー王子、気分を害されたの? でも、しょうがないわよね。この一週間、ルーファスに本当によくしてもらったもの。ルーファスの住むお屋敷に招かれるほうが、ガイガー王子のお屋敷に招かれるよりずっと興味があるもの」


冗談っぽく言って、美しい笑みを浮かべた王女様。


「ハハッ、それはそうだろうな。頼りないガイガーより、ルーファスのほうがいい男だしな」


国王様が上機嫌で王女様に返す。


すると、王女様は第二王子に視線を合わせて、言い含めるように言った。


「ガイガー王子、心配しなくても大丈夫よ。場所はどこであっても、ガイガー王子の望まれるお茶会を開くことは可能だわ」


「……あ、ああ。そうだな……」


王女様の言葉にはっとしたように、そう答えた第二王子。

どこか安心したような顔をしている。


私の頭の中のアラームがビービーと鳴った。

やっぱり、どう考えても、このふたり怪しい! 


気がついた時にはもう、私の口は王女様に向かってその疑問をぶつけていた。


「王女様。今言われた、望まれるお茶会とはどのようなお茶会のことなんでしょうか?」


「まあ、ララベルさん。そんなこと、決まってるじゃない。ガイガー王子の望まれるお茶会とは、招待したみなさんに喜んでもらえるお茶会よ。ねえ、ガイガー王子」


「ああ、もちろんだ」


そう答えると、ほの暗い笑みを浮かべて私を見た第二王子。

すぐに、第二王子の視線から私を隠すように体をずらしたルーファス。


「そうだぞ、ガイガー。ラジュ王女をはじめ、招待した皆を喜ばせられる茶会を開くよう、しっかりアンヌを支えよ。では、マイリ侯爵令嬢、無理を言うが参加してやってくれ。それと、レーナさん。アンヌを頼む」


そう言うと、国王様は王女様に向かって手をさしだした。


「では、ラジュ王女。王族の席に食事を用意しておる。王妃が待っておるから、そこまでエスコートしてもよいだろうか?」


「まあ、光栄ですわ、国王様」


あでやかな笑みを浮かべて、国王様の手をとった王女様。

そうして、ふたりが立ち去り、第二王子もそのあとをついて王族の席へと戻っていった。


やっと魔のような時間が終わり、私は大きく息をはいた。

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