表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/45

ジャナ国の王女とは

「ジャナ国の王女とは、明日、初めて会うんだ。第二王子のガイガーはジャナ国を訪問したことがあるから、王女に会ったことがあるみたいなんだけどね。まあ、ジャナ国とは国同士の交流もあまりなかったしね。今後はもっと交流していくことを見据えての王女の視察らしいよ」


「なるほど、表向きの理由がそうなのね。裏はわかんないけど……。で、会ったことがないのに、なんで、ルーファスが王女の案内をすることになったの?」


アイリスの質問に、バサッと音がしそうなほど長いまつげをふせて、ルーファスが物憂げに言った。


「本当は面識のある第二王子のガイガーが案内する予定だったんだけど……、まあ、いろいろあって、急遽、王命で僕に変わった。ジャナ国の王女は純血の竜の獣人だから、正直、どんな能力があるのか、つかみきれてない。案内するにしても、竜の獣人の血が濃いほうが安全だ。とっさに対応できるからね。といっても、1週間も案内できるほど自由がきくのは、王族のなかでも、暇な第二王子のガイガーか学生の僕しかいないからね」


そこでアイリスが少し声を落として、ルーファスに聞いた。


「その第二王子が案内できなくなった理由って、もしかして、あの王子妃が関係してる?」


ルーファスは驚いたように目を見開いた。


「あたり。本当にすごいね、アイリスは。それって勘? それとも情報? まあ、どっちでもすごいけど」


「今回は、ほんの少しの情報しかなかったから、勘ね」


よくあることだけど、ふたりの会話が全く見えない。


ということで、グレンを見た。

グレンが私を見て、首を横にふった。


そして、こっちもよくあることだけど、グレンもわかってない。

良かった、仲間だ!


が、とりあえず、私にもわかったことがある!


「つまり、第二王子は、また、ルーファスに迷惑をかけてるってことね!」


私の怒りのこもった発言に、ルーファスが反応した。


「ねえ、ララ。またってどういうこと? やっぱり、僕になんか隠してる? この週末、もしかして、なんかあった……? 確か、ジョナスが帰ってきてたんだよね?」


ドキッ! 

なんて鋭いの、ルーファス!


私は顔でばれないよう、表情筋を動かさないようにして言った。


「う……ううん、なにも隠してないよ! あの第二王子だから、きっと、いっぱいルーファスに迷惑かけてるだろうなと思っただけ! そう、私の勘! うん、それだけ!」


「声が裏返ってるわ、ララ。まあ、隠しても、ルーファスにはすぐにばれるのにね……」


残念そうに言うアイリス。


しまった、声は盲点だったわ……。

今度は裏返らないよう、声を低くして、言ってみた。


「だから、なにも隠してないよ、私……」


「今度は低すぎるわ、ララ」


またまた残念そうに言うアイリス。


すると、なぜか、私の頭をなではじめたルーファス。

とろけるような笑みを浮かべて言った。


「わかったよ、ララ。一生懸命、隠してるララもかわいいしね。でも、それをしゃべらせるのも、また、楽しいから、それは面倒な仕事が終わったあとのご褒美にとっておこうかな」


「ちょっと、ルーファス。そのセリフ、ものすごく気持ち悪いんですけど……。ぞわっとしたわ」


アイリスが顔をしかめてそう言ったあと、「あ、そうだ」とつぶやいた。


「ちなみに、王女様って年齢はいくつなの?」


「17歳」


「ルーファスと同じ年か……。婚約者はいるの?」


と、重ねて聞いたアイリス。

なんだか、声が鋭くて、尋問してるみたい。


「僕は聞いてないけど、どうだろう。王女だからいるんじゃない? ただ、王女の同行者にはいなかったけど」


興味なさそうに答えたルーファスに、アイリスの目が急に鋭くなった。


「同行していないということは、いない可能性が大ね。……まあ、ルーファスだから大丈夫だとは思うけど、一応、忠告しておく。ルーファスはムダに顔面がいいから、ややこしいことにならないよう気をつけて。そういうのがまわりまわって、ララに敵意をむけたら厄介だし」


ん? なんで、そこで私? 

しかも、アイリスの言い方に棘がある。


「わかってるよ、アイリス。ララにそんなことするような王女なら、国ごとなくなったほうがいいからね」


「え……?」


ルーファスが言いそうにない不穏なセリフに、驚いて、ルーファスを見る。


「冗談だよ、ララ」


そういって、ふわりと微笑んだルーファス。

そうだよね、冗談だよね。

あー、びっくりした。


うん、いつもの天使の微笑みだ。



そして、翌日。

宣言どおり、ルーファスは学園を休んだ。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ