表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/70

蒼山モカというVTuber。

 私は、VTuberが大好きだ。


 自分の本当の姿を隠し、自分とリスナーさんたちの間にバーチャルの体を挟み、配信をする。

 ネットで検索すれば私の素顔は少しだけ出てくる。活動以前にSNSにアップした写真を残している人がおり、一部の人が私の写真を公開している。

 でも、私はアバターを使ったVTuberをやめるつもりはない。

 VTuberにはVTuberでしか表現できないものがあると、私は思っている。

 これから弟くんが始めることもそう。


 私は、私が大好きな居場所を守るために、みんなで作るために、VTuberを続けていく。


「はーい、みんな、こんモカでーす。リアライブル所属兼雨宿家お姉ちゃん担当、蒼山モカです」


 三時になり、ついに配信が始まる。


「今回は雨宿家リレー配信に来ていただき、ありがとうございますっ」


『待ってたよ!』『本当にやってくれると思わなかった』『こんな配信大丈夫か?』


 いつもの配信よりもずっと、とてつもない量のコメントが流れている。


 通常、私の視聴者は平均数千から多いときで三万人くらいと幅がある。

 しかし今日はすでに視聴者数が五万を超えている。

 普段の私の配信を見に来てくれている人だけではない。

 世間で炎上している今回の出来事が世に出て少し日がたっている。本来なら下火になってもおかしくはないが、弟くんが薪をくべたことでこれまで以上に燃え上がっている。


 私たちのリレー配信を知る人は、中止は間違いないと思っていただろう。


 しかしココアちゃんのことがあってもお構いなしにリレー配信が始まるとあって、世間の注目度は増している。


 でも、私は私の役割を全うするだけ。バトンを、次のクルリちゃんに引き継ぐだけだ。


「雨宿家リレー配信一枠目は、歌枠だよ。ただ、配信が始まる前に少しだけ話をさせてね」


 一呼吸置いて、また話し始める。


「いろいろと、私たちの問題で騒がせてしまってごめんね。本当はこの配信に参加することも、リアライブルの運営からは止められてるんだけど。でもここで私が配信をしなければ、今後自信を持って配信活動を続けいけないと思った。だから私も配信をすることにしたの。それから絶対に、他のリアライブルメンバーには迷惑をかけないようにお願いね。なにか問題があった場合は、私がすべて責任を取るから」


『なんでそこまでするの?』『リアライブルの看板背負ってまでやることか?』『馴れ合い嫌い。配信辞めろ』


 もちろん一部。それでも批判的なコメントは、あふれんばかりのコメントの中でもよく通る。


「私がなんでこの配信をするか。その理由は簡単だよ。私が、雨宿家が大好きだから」


 でもそれ以上に、雨宿家のことを好きな人もたしかにいて。


『私も大好き!』『どこまでも応援する』『ココアちゃんがそんなことをするなんてわけない。俺も信じる』『雨宿家が、好き』


「え? みんなも好き? いや負けんが? 雨宿家好き負けんが?」


 リアライブルのみんなのことももちろん大好きだ。それでもそれと同じくらい、私は雨宿家のことを大切に思っている。


「クルリちゃんはおすすめのゲームを教えてくれるし、苦手なホラーゲームもいやいや言いながらも付き合ってくれる。弟くんは私のメンタルが落ち込んだときとかも、次の日学校があっても夜遅くまでお話ししてくれる。ココアちゃんは本当にVTuberが好きで、リスナーのみんなのことも大好きで。そんなココアちゃんを見ていると、私も初心を思い出して頑張ろうって思える。こんなにあったかい雨宿家といちゃいちゃするのも、みんなはできないんだぞー。いいだろー!」


 これだけは、誰も渡せない。

 私が守りたい、私の場所なんだ。


「ってね、マウントをとっていくー」


 恥ずかしくなって、少し笑って誤魔化した。

 言いたいことはとりあえず言えた。


「それからこの配信はいつも見に来てくれるみんなに。そして、私の家族にも届いてほしいって思ってる」


 マイクのエコーを入れ、音源を流す準備に入っていく。

 前振りは終わり、私の歌枠配信が始まる。


「それでは歌います。今日は聞けば元気ができる曲を、いつものテンション十割増しで歌っていきます。次のクルリちゃんにつなぐまでノンストップ。ぜひ楽しんでいってね!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ