亀裂。
「ああ、くそ。最近マジでつまらねぇ……」
YouTubeの投稿も最近うまくいっていない。視聴者数は下がる一方。
投稿した動画はほとんど伸びることなく、登録者数もほとんど増えず、何が気に入らないのか減る日さえある状態だ。
さらにはテストで赤点を食らってしまった。これから補習まで待っている。もうなにからなにまでうまくいかず、腹が立って仕方がない。
鬱屈とした気分で中庭を歩いていると、視界の隅に見知った顔が映った。
二階にある二年生の教室で、小学生時代の同級生が女子生徒と楽しそうに談笑していた。
雨宮の野郎だ。女の方は、最近雨宮とよく一緒にいる女子生徒。
雨宮は小学校が一緒で、中学は別だったが高校でまた一緒になった。
あいつは、不登校だった。
いや、俺が不登校にした。
別にあいつがなにかをしたとかそういうわけではない。ただどこか気に食わないところがあったのだ。
そしてなにより、ただ単純にいじめるのが楽しかった。そんな理由でクラスメイトと一緒にからかっていると、いつの間にか不登校になっていたのだ。きっちり担任から呼び出され説教を食らったが、大したこともしてないのに怒られる理由には納得がいかなかった。だから当然聞き流していたし、説教の内容なんて一単語も思い出せない。
高校で見かけたときは驚いたが、少し雰囲気が変わって、だけど以前よりも確実におかしくなっているように感じていた。
陰気な顔をしているが、見かけたときはたいてい心ここにあらずいった様子で、なにをしているのかもよくわからないやつになっていた。
ただ、最近はよく今いる女子と一緒におり、人づてに聞いた話では付き合ってたりはしていないそうだが、それでもなんか二人でいるときは楽しそうにしていた。
それが、正直むかついた。
あんななにもしていないやつが、別に秀でているものもないあいつが、ただ楽しそうにしているところに、腹がたった。
ふと、女子の方が眼鏡を外した。
いつも似合いもしない黒縁メガネをかけていると思っていたが、外すと意外に整った顔をしているように思えた。ダサい三つ編みをしていることもあって未だに不細工にも見えるが。
しかし、どこかでその顔を見た気がした。
いや、前もそんな風に思ったのだ。
どこだろう、あの顔を見たのは。
しばらく考えに耽っていると、暗い空からぽつぽつと降る雨が、勢いを強めた。
雨宮の方はどうでもいい。けど俺は、女の方がやけに気になった。
本当ならこのあとは赤点の補習だが、一日くらいさぼってもいいだろう。
ちょっと寄り道して帰るのもいい。
ちょうど、動画のネタを一つ暖めいたじゃないか。




