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きっかけ。

 僕にとって最初、VTuberという存在は、そういうものがあるという程度のふわふわとした断片に過ぎなかった。


 姉は僕が子どものころからネットで話題になっているイラストレーターだった。


 インターネットという存在が加速度的に大きく、広くなっていき、インターネットを使用した新たな取り組みが、雨後の竹の子のように生まれていた。


 今でこそVTuberは創作文化に関わる人によって知らぬものなどいないほどまで成長している。しかし、まだまだ当時は一部の人か知らない存在だった。

 視界の隅に映る、小さなろうそくの明かり。その程度のものだった。


 当時、僕は不登校だった。

 小学校高学年になったころに、登校することができなくなった。

 中学生になってからもそれは変わらず、家に閉じこもる生活が続いていた。


 将来は、さすがに両親や姉さんに迷惑をかけられない。そう考えて自宅での勉強は続けていた。

 パソコンを当時から使っていたのもその一環だ。

 両親はインフラ関係の仕事に携わっており、これからはさらにパソコンやデジタルがどんどん強くなると口を酸っぱくして言っていた。だから僕にも当たり前にパソコンを買い与え、ゲームやネットサーフィン、動画視聴するでもいいから、今のうちからパソコンに慣れておいた方がいいと言われていた。

 不登校ではあったが、学校から求められる課題はしっかりこなし、その傍ら、パソコンでバーチャルの世界に逃げ込んでいた。


 当時の姉さんは、僕にとってあこがれであり、近寄りがたい存在であり、あまり好きではない人だった。

 僕を旅行に連れ回したり、なにかと連絡をくれたり、あとになって思えば、弟である僕を心配してくれていたんだと素直に受け止めることができるのだが。

 でもまだまだ子どもだった僕は、姉さんという強い存在を受け入れられなかった。

だけど僕が中学生になったころ、姉さんから一通のメールが届いた。


 ――私の描いたVTuberがデビューするから、見に来てほしい。


 太陽カルア。

 当時まだまだ生まれて間もないVTuberという存在の一つとして生まれた、個人勢VTuber。

 素朴などこにでもいる高校生をデザインした、けれどその名の通り太陽のように明るいキャラクターだった。長い髪に太陽を模した髪留め、涼しげな半袖ブラウスの制服姿の、女の子。

 

 それが、僕にとってのきっかけになった。

 陰りに満ちた世界を照らす、日輪のように大きな光となった。

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