第八十二話 フィナーレ
文化祭の締めくくり、まずはキャンプファイヤーから。
パチパチと火が付けられて燃え上がる資材の周りで生徒たちは楽しく見上げたり、なかには踊ったりしている人たちもいてとても楽しい光景になっていた。
「すごー……こんなに燃えるものなんだ……!」
組み上げられた資材たちが燃え上がる光景を、少し離れた位置から見ていた私はぽかんと口を開けながら見上げていた。それはそれは、だらしのない顔をしていたようで後ろからは笑い声が聞こえてきた。
「凄い顔。……つか、他は?クラスのみんなで過ごすんじゃなかったっけ?」
「遥。えーっと……それが……」
よくよく記憶を思い返してみると、クラスで過ごすっていうのは確か南クンと灯チャンが咄嗟に考えていた案だったような気がする……クラスメイト全員で同じ場所に固まって過ごすっていう話は確かあがっていなかったしね……。
「はぁ?なにそれ、じゃあ、今、裕理は一人ってこと?ラッキー」
私の隣には、二年生ながらもタメ口で話すようになってすっかり仲が良くなった遥が来ていた。もちろん私は準備を手伝っていたので着替える暇もないままここに来てしまったためメイド服姿のままである。なんとも、ちょっと……第三者から見ると異様に映っているかもしれない。
「あのお邪魔虫たちもいないみたいだし。珍しいね、裕理が一人だなんて」
「さっきまであちこちで準備で手伝っていたからね。今もちゃんと連絡しないとどこにいるかなんて分かんないよ」
今の校庭は生徒、そして教師だらけとなってしまっている。いくら私が目立つメイド服を着ているからといってもすぐには見つからないのかもしれない。特に、火を灯すときには、危ないから離れていて!と上級生から強く言われてしまったこともあり、だいぶ火からは離れた位置にいる。キャンプファイヤーの周りでは仲の良い人たちが躍っていたり、騒いでいたり、ちょっと良い感じのペアが生まれると一緒にダンスを踊っている姿も見られた。こ、こういうときって本当にダンスって踊ったりするんだ……。
「もうちょっと経って、この火を消したら花火をやって終わり。それが文化祭を締めくくりだからね。……あーぁ、裕理のメイド服姿もあと数時間で見納めになっちゃうわけかー……」
「そ、そう言うけれど、私はそもそも執事の服を着る予定だったんだよ?……ウチの、クラス委員長がいろいろと根回ししたに決まってるんだから」
「はは、でも。その恰好でお店はウケが良かったんじゃない?ちょっと危ないこともあったらしいけれど、裕理によく似合っててこっちとしては楽しかったしね」
酷いなあ……それに、ちょこっとは執事の恰好にも楽しみにしていたんだけれどね。それがメイド服を着させられることになるなんて予想もしていなかったもんだからこっちは混乱したまま接客することになって、ちゃんと接客できていたのかどうかすら怪しいんだよ。
「……この文化祭も終われば、しばらくは行事らしい行事も無いんだよね……つまんない」
「つまらない?」
「裕理と、空き教室でイチャイチャすることができなくなっちゃうってことでしょ?だから、つまんない」
「ちょ!……は、遥たちが首にいろいろしてくるから質問責めにあって大変だったんだからね!?」
「そりゃあお疲れ様。でも、好きだからいろいろしたくなるって当たり前でしょ」
う、うーん……そりゃあ好きな人なら触れ合いたいって気持ち……分からなくはないんだけれど……それにしたって、やり過ぎでしょう!!めちゃくちゃ麗華センパイに詰め寄られてキスもされて、挙句の果てに灯チャンからもキスされて……今日だけで一体何回キスをされたのか、もう数えられないほどだった。
「……ここまで言っても、裕理の意思は変わらないわけ?」
「……それは、まあ……うん……」
「あ!い、いたよ!!」
新たな声が聞こえた方向に顔を向けると、そこには南クンとじゃっかん疲れた様子の灯チャンがいた。そして、麗華センパイの姿もあったし、カメラを片手にブンブンと手を振ってくれる丸子さん、そして少し距離を置きながらもバチコーン!とウインクを飛ばしてくる尚センセーも待機していた。
このメンツって……所謂、私に愛とか好きって気持ちを飛ばしてきたメンツで、それぞれともそれなりにキスをしてきた仲でもあるんだよね。でも、これだけの人数に群がられとそれぞれと交わしてきたキスを多かれ少なかれ思い出してしまうことにもなってしまってキャンプファイヤーだけの熱だけではなく、顔に新たな熱が集まってくる気がした。
「ちぇ……見つからないと思ったのに」
残念そうに言う遥だったけれど、そこで黙っていないのが一年生組だった。
「あのなあ……佐久間は、アンタと付き合ってるわけじゃねえんだろ?」
「そ、そうそう!」
「これから、付き合う。それなら問題無いでしょ?」
遥の発言に、ピキリと何かの音がしたような気がしたのだけれど丸子さんは遥に詰め寄ってあれこれと言い放っているし、尚センセーなんか私の肩に腕を回してきて、よしよし、と頭を撫でてきた。麗華センパイは静かに私たちを見守って……いるというわけではなかったらしい。
「では!ここで、裕理さんに決めてもらえば良いのではありませんか!?」
「「「「「はあ!?」」」」」
「わたくしたちが、あれこれ言っていてもはじまらないのであれば裕理さんに決めてもらえば良いだけのこと!さあ、裕理さん!あなたの気持ちを今、ここで聞かせてくださいませ!」
え、えー……なんて、めんどうな……あ、いやいや、こういうのってこんな多くの人たちの前で堂々と言えるようなことだっけ?つまり、麗華センパイ的には、私の気持ちをはっきりさせたくて言ったのかもしれないけれど、そんなの……む、無理なんですけれど!!
「えっと、私はみんなのことは好きだけれど……その……」
「じれったい。裕理がキスしたいと思う人は誰なわけ?」
うぅ……遥の追加攻撃が大きい。私だって、こんなに大勢の人たちをたぶらかす……た、たぶらかしているつもりは全然無いんだけれど、それでもみんなと仲良く過ごしていきたいっていうのは嘘じゃないし……なんて応えるべきか……。
「わ、私は……やっぱり、みんなと仲良く過ごしたい!誰かと誰かを比べるとか、そういうのはまだ出来ないから!み、みんなには申し訳なく思っているし……こういうのっていけないことだとは思っているんだけれど……ど、どうしても誰かと……とは考えられなくて……だから、どうか……私とは仲の良い友人でこれからも過ごしてください!!」
私なりの告白……をしたつもりだと思う。
ガバッと頭を下げたのは、みんなに対して悪いと思うところもあったから。そして、まだ誰かと付き合うとかって考えにはいたらなかった自分への詫びでもあった。もしかしたら引っ叩かれる?嫌いになっちゃう?恐々、とゆっくりと顔を上げてみんなの顔をみまわしていけば……意外にも、みんなは笑っていた。というか、困った様子で苦笑いをしている?
「……それが、裕理の答えなら、ね……しょーがないか……」
「まぁ、でも私からの愛はこれで終わるわけじゃないからなぁ?」
「そうですそうです!隙あらば、いろいろな写真を収めに行きますぞ!!」
「好きって気持ちは、こっちは変わらねぇから……」
「わ、わたしも……好きだけど……な、仲良くしていきたい!」
「……仕方ありませんわね……」
「「「「「「これからも、よろしく」」」」」」
もちろん隙あらばいつでもどこでもみんなは私にキスでもしてくるんだろう。それにまだ抵抗する術が無い私はされるがままになってしまうんだろう。それでも……私たちの仲がこじれてしまうようなことにはならないみたいで、安心してしまった。
その時、空には大きな花火がいくつも打ち上げられて、私たちはみんながみんな揃って綺麗な花火を見上げていた。これからももしかしたらいろいろな出会いがあるかもしれない。また、私に好意を向けてくる相手があらわれるかもしれない。適度な友人関係を築きたかったけれど……この距離で過ごすことができている人たちがいるっていうのも……ちょっと悪くはないかな、と考えてしまう自分もいたので、心の中で、自分自身のことを叱咤していた。
が、今このときだけは、花火を見て感動していて、顔を見合わせては笑い合っていた。それでじゅうぶん……かなと思うのだった。
今作は、こちらで完結とさせていただきます。一応、クリスマス的なイベントはどうしようこうしようと悩んだりもしていたのですが、学生生活で一番盛り上がるのって何だろう?あ、文化祭か!なので、文化祭で一つの締め括りにしてみるのはどうだろう!?と思い、ここらで完結とさせていただきます。もしかしたら、後の学生生活(クリスマスだったりだとか、主人公が二年生に進学した辺り)で、また面白そうな案が浮かび、これは文章が出来そうだ!と思ったときには続編?第二部のような感じで、書かせていただくかもしれません。
意外と文化祭でいろいろなキャラとイチャイチャすることができたのでここで一旦線を引くのも一つかな、と思い。ここらで完結です。
ちょっとでも興味を持っていただいた方、いらっしゃいましたでしょうか?最後は誰とくっつくのかと考えた方もいらっしゃったでしょうか?意外にもお兄ちゃんが頑張っていたのでお兄ちゃんを登場させる回は、いつも以上に張り切って書いていた気がします。
ここまで見守っていただき、ありがとうございました!毎日のように読みに来ていただいている読者様もいたようで、とても嬉しかったです!そして評価なども付けていただいた方もいたようでありがとうございました!
良ければ、他にも連載している作品がございますのでお暇なときにでも覗いていただけると幸いです!!また、機会がありましたら、続編又は第二部、という形でお会いできたら嬉しいです!




