第八話 JKですって!ここにもいるわよ?
ちょっとちょっとー、待ちなさいな。
JKですって?だったら私のことを忘れないでちょうだいな。
え?誰って……佐久間裕理のクラス担任の美影尚よ!忘れたとは言わせないわよ~?
は?JKじゃない?なーに言ってんの。JK(女性教師)でしょうが。
ふふん。佐久間、なかなか可愛い顔してるじゃないの。
ここは一つ大人の魅力でもみせてあげようかしら!
転校初日には危うく問題を起こすところだったけれど、私が言いたいこと(言うべきことを言っただけだよ?)をビシッと言うだけで自体は終わったようで安心安心。
夜、亜里沙センパイからメールが届いたことにはびっくりしたものの転校初日をねぎらってくれる言葉ばかりで本当に感謝感謝だった。途中、サッカーボールが当たったことを心配する言葉があったもののすぐに赤みは消えたし何事も無いと伝えた。
さすがにクラスメイト全ての名前と顔を把握するにはまだまだ時間がかかりそうだけれど学生生活にはまだまだ時間があるし、余裕をもって過ごしていきたいなぁ!
友達、も。
友達って説明するには難しいんだけど、私が考えるに……本当に困ったときには助け合う関係!
そんな人もこの学校で見つけられたら良いんだけどねぇ。
あ、亜里沙センパイや南クンだって別に嫌いじゃないんだよ!?
でも、こっちが勝手に友達認定しちゃうと申し訳ないっていうか……「出会ったばかりなのに友達ヅラしないでほしいわね(しないでくれよ)」なんて面と向かって言われたらさすがに傷つきますから!
えーっと……じゃあどこまでいけば友達っていっても良いんだろう?
う~ん、難題かな……。
初日以来、話すようになったのは他にもいるのよ?
教室で私の前の席の女子生徒。
土屋灯チャン。
それから灯チャンつながりで知り合うことになった柊雅人パイセン。
取り敢えずこのメンツは顔と名前を間違えることはなし!!
名前も顔も間違えるのってかなーり失礼に値するからね!(ここテストにでまーす!)
でも、転校してきてから結構な頻度でお世話になっている人がもう一人いるんだよね。
それはーーー
「おー、おはよう!裕理!今日も早いじゃないか!」
言いながらバシバシと背中を叩いてくるのは我がクラス担任でもある美影尚センセーである。
この人こそが、めちゃくちゃ私に声をかけてくるわ、何かにつけてお世話をしてこようとしてくる一人なのだ。
私が転校生だからもしかして気合を入れている?
私が知らないってだけで実はめちゃくちゃ生徒思いのセンセーだったりする?
理由は定かではないんだけれど、まぁ気軽に話しかけてくれるセンセーっていうのは嫌いじゃない。
前いたところでは顔を見ればまず文句もしくは注意。
特に何もしていなくても名指しで文句の嵐だったからフレンドリーに接してくれるセンセーの存在は嬉しかったりする。
おかげでバシバシ叩いてくるセンセーのスキンシップにも慣れましたよ。
初日は帰宅して背中をみれば案の定うっすらと背中が赤くなってました……どんだけ力強いのよ、まったく。
「おはようございます、尚センセー」
まず呼び方。
一応、教師だよ?(一応って失礼だったかしら、ごめんね)
それなのに美影センセー美影センセーって呼んでいたら突拍子もなく「尚センセーって呼んでちょうだいな?」って言われちゃったんだよ!?
小学校とかなら親しみやすい先生相手にそう呼ぶのも、アリかな?って思うんだけど、ここ高校ですよ!?え、そんなにフレンドリーで大丈夫なんですかね!?
もちろん最初は私も戸惑っちゃって苗字のほうで呼んでいたんだけど、ある日苗字+センセーって呼んでも全然反応してくれなくなっちゃって……何かまずいことして怒られてるか、聞こえないのかな?って思ってそのときは下の名前+センセーって呼んだの。そしたら瞬時に反応してくれたんだけど!?
ちょっと涙目?にもなっていたように見えたし、何があったんだセンセー!?
「ん、よろしい。裕理は最近朝ずっと花の手入れか?熱心だねぇ!よしよし!」
灯チャンと話すようになって仲良くなってきている実感があるのは朝登校してきてからHRがはじまるまでの時間に花壇の手入れも一緒にするようになっているからだ。
植物オタクと呼ばれている灯チャンは最初は「チワワか!?」と思えるぐらいにびびりさんに見えたんだけど花の前では堂々としていてギャップがあった。
他のクラスメイトも灯ちゃんの違った一面をみれば「すげー!」って感動するのかもしれないのにね。人付き合いが苦手って言ってるけれど花のお世話で分からないことがあれば丁寧に分かりやすく教えてくれるし、一緒にお世話をすることで時間も共有できているから親近感があがってるかも!?って私としては考えちゃうわけよ。
……これで灯チャンの方は「うざったい」なんて言葉が向けられたら私、不登校はじめちゃうかもしれないから「私と灯チャンって仲良くなってきてるよね?」とは聞けずにいる。
「うわわ!頭!な、撫でないでくださいって!ぐしゃぐしゃになるじゃないですか!ショートヘアだって乱れるんですけど!!」
バシバシ叩くは、頭もぐしゃぐしゃに撫でてくるわ、大変だよ?
あ、精神的には苦じゃないんだけど。
髪の毛が。
ほんっっっとに、ぐっしゃぐしゃになるまで撫でてくるの尚センセーってば!
だから後で直さないと。
ぐっしゃぐしゃの状態で教室に入ってみたら奇異な目で見られること絶対だから、ね……
このときは自分がショートヘア好きで良かったとすら思えちゃうよ。
でも、あまり他の生徒に対して頭をぐっしゃぐしゃに撫でてる尚センセーって見たことないんだよね。
もちろん廊下とかHRがはじまるまでのちょい早い時間に教室にやってきた尚センセーには誰かしらの生徒がそばにいて何かしら話こんでいる姿は見る。
ただ、スキンシップ?
私にするようなことをあんまり他の生徒にしないよなぁ……って思うわけ。
これ、転校生に対するいじめなんじゃ……?
教師がいじめの発端となっちゃまずいでしょ!!!
でも悪意みたいなものは感じないし、むしろ逆なんだよね。
ペットとか家族に対する優しさみたいな……きっと歳の離れたお姉ちゃんがいたらこういう感じなんだろうか?って雰囲気がある。
我が家にはシスコンの兄貴はいるけれど、こういうスキンシップをすることはないし。
ママも娘を大事にしている雰囲気はあるけど尚センセーとはなんか違う。
「んー?どうした?何か悩み事でも出てきたかな~?」
不意に頭を撫でていた手が止まるとじぃぃっと顔を見つめられてきた。
しかも……ちょ、距離が近……くない!?
これ、どっちかが眼鏡をかけていたら絶対にガチン!ってぶつかる距離だと思うんだけど!?
あ、あたる……鼻先があたりそう……!!!
慣れないところにある他人の顔の距離に思わずびしりと固まってしまった。
う、動けない……。
動いたら、ぶつかってしまいそうで!!!
「……ぷっ……あははは!!裕理、可愛いねぇ!!!」
しばらくかちこちに固まってしまった私を眺めてから距離を離した顔をふいっと横に背けた尚センセーはいきなり噴き出して笑い始めてしまった。
な、なにごと!?
ほら、登校してくる生徒たちも「なんだなんだ?」と不思議がってますけど!?
「いや~、可愛い生徒で嬉しいってことさ。……だから今度会うときにはもう少し可愛いところ、見せてよ……?」
さきまで笑っていたのに急に真顔になったかと思えば真面目な顔を私の耳元に近付けてわざとらしく囁くように告げてきた。
「ひゃわ!?な、なな……!!」
「くっ……ふ、あはは!!」
あ、熱い……え、何がって……か、顔だよ!顔!!
絶対、赤いし!!
っていうか、いきなり何するんですかセンセーは!!!
最近のいじめは、な、なんていうか……破廉恥なんですか!?
あ、とか、う、とか言葉にならない文句を言っていると「ごめんごめん」と謝ってくれるがまだひぃひぃ言いながら笑ってるし!
ムカッ
ちょっと今日の尚センセーは生徒にちょっかい出し過ぎだと思います!
フレンドリーかと思っていたら、まさかの生徒イジリが好きなようだと判明した尚センセーにイラッとしつつあまりにも見たことがなく感じたことのない他人との距離感にしばらくは顔の熱がおさまりそうにないな、と感じたある日の朝だった。
JK(女性教師)と迎えたある日の出来事でした。
まさかちょっかいかけるナンバーワンに選ばせていただいたのが担任の美影尚センセーになるとは……でしたか??
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