第七十六話 SNSにアップされてしまいました
面白い出し物かと思っていた我がクラスの男女逆転メイド喫茶。
でも、昼頃から急に客足が少なくなってきてしまっているらしい……。
何か、あった?それとも、何か、はじまる?
文化祭のパンフレットを見直しても、特に今の時間帯に何かイベント的なモノが開かれるってわけでもないみたい。じゃあ、お客さんたちは?学校の生徒たちもみんな、何処に行っちゃったの!?
でも、たまーに……ごく少数だけれど、お客はやってくるものだからお店自体を閉じてしまうわけにもいかなくて、執事たちとメイドさんたちはお客さんにおもてなしをしていた。当然、私も。
「お帰りなさいませ!お嬢様!こちら、メニューになります。ご希望があれば写真撮影も出来ますからいつでもお声がけくださいね」
果たして今やってきたお客は、執事服を着ている女子が目当てなのか、それともメイド服の男子たちが目当てなのか……う~ん、分かんない!でも、チラチラと店内を見渡してはコソコソとスマホをイジっているんだよね……何してるんだろう?
見た目は、ここの同じ学校の生徒っぽいんだけれど……もしかして、何かスマホでされてる?
「あの~……お嬢様?スマホも楽しいかもしれませんが、良ければ執事やメイドたちとお喋りしてみては如何ですか?今はちょうどお客さんも少ないので、お好きな執事、メイドを選びたい放題になっていますよ?」
思い切ってお客としておとずれた女子生徒……に声をかけてみた。でも、相変わらず『い、いえ大丈夫です!』と言うばかり。そして、手元には操作途中のスマホ。……怪しい。これ、すっごく怪しい気がするのは私の気のせいかな?
「メニューは、どうします?特製パフェなんかお勧めですよ。あと、紅茶も……」
「い、いいです!ホント!」
「う~ん、では……お好みの執事かメイドさんと一緒に撮影でもしてみます?ほら、あっちで。すぐにポラロイド撮影ができるのでお写真もお渡しすることができますよ」
「……ぃ……」
「……はい?」
「しつこいって言ってんでしょ!私は私なりに楽しんでるの!……裕理サマのいるクラスだから見に来たのに、裕理サマは執事姿じゃないし……どうなってんの?このクラス!」
えーっと、もしかして、ぶち切れさせてしまった……?えっと、それに……私に対しても、怒ってる……?
「私は!裕理サマの執事姿が見たかったの!それなのに、……め、メイド服だって可愛いわよ!似合ってるわよ!でも、せっかくなら執事姿を見てみたかったの!」
お客が少ないなかで、大きな声を出していらっしゃる女子生徒。その声に、クラスメイトたちの視線は集まり、『なんだなんだ?』と様子をみているみたい。
でも、めちゃくちゃ言ってるなあ、この人。
「ちょっと!そこの男子!」
「は、俺っすか!?」
「なんで裕理サマは執事じゃないのよ!?」
なんと女子生徒に捕まってしまったのは、南クン。……うん、ごめん。この人なんかめちゃくちゃいろいろなことに対してお怒りのようで……南クン、頑張れ。
「は、はぁ!?」
「このクラスは男女逆転メイド喫茶なんでしょ!?なのに、なんで裕理サマはメイドの恰好なのよ!可愛いけれど!すごーく可愛いけれど!!!」
文句があるのか、メイド服を褒められているのか……どっちじゃい!
「あー……えっと、メイド服が余ったみたいで……」
「はぁ!?それだけ!?もう、こうなったら……こうしてやるんだから!!!」
怒り度マックスっぽい女子生徒はスマホでなにやら操作操作操作。一体、何をしたんだろう……。
「ふふん!裕理サマ見守り隊は怖いんだからね!覚悟しなさいよ!」
はぁ?と疑問を浮かべる私に女子生徒はスマホを向けてきて何度かカシャカシャ音がしていたから写真でも撮ったのかもしれない。
「ちょ、撮影は……!」
「裕理サマ!こんなところにいないでステージに立った方がよっっぽどお似合いです!」
ふん!と言いながら注文も取らずに帰って行ってしまった女子生徒。……一体、なんだったんだろう。ちょっとした嵐みたいな人だったなあ。
でも、許可も無しに写メを撮るだなんてちょっとマナー違反かな。見守り隊って言っていたし、体育祭の後辺りから私に憧れている一人なのかもしれないけれど、ちょっとやり過ぎかな……。今度会ったら丸子さん経由で注意してもらわないといけないかもしれない。
「……あ」
「どうしたの?」
「……今、なにげにこの学校の文化祭の写真があげられているアカウントがあったから見てみたら……コレ……」
南クンも暇になってしまったらしく教室の隅でスマホをイジっていたんだろう。すると一つのSNSの中にあるアカウントを見せてくれた。そこには……。
『男女逆転メイド喫茶なのに、裕理サマがメイド姿!メイド姿も可愛いけれど、やっぱり執事になってもらいたかった!!!……ぴぇん……』
という発信が。
すると、そのアカウントに対して、同意を示すコメントがずらずらーっと流れはじめていくではないか!こ、これは……えっと、大丈夫なのかな……。
しかも、さっき撮影したであろう、私のメイド姿がばっちりと画像として添付されてしまっている。なかには、
『このメイドめちゃくちゃ可愛いな!』
『どこの学校?』
『今日文化祭かよ!こんな子がいるならゼッテー行く!』
『メイドさいこー!』
『つか、裕理チャンってこの写真の子?可愛いじゃん!』
『こんな子にサービスされる客、サイコーじゃね?』
『メイド!メイド!奉仕!奉仕!』
『ご主人様の言うことは、ぜったーい!!』
『ちょいエロい写真撮ってきてくれー!』
『ボーイッシュも、また良し!』
『こういう子に命令させてぇ!!エロいヤツ!ww』
と、だんだんコメントが荒れてくるじゃない!
ど、どうしよう……えっと、さっきの子に言って、この発信を消してもらう?でも、今からじゃもう遅いのかな……うわ、私だってはっきりうつってる画像が掲載されているからいろんな人に見られている!?そ、そんな……さすがに、気まずい!!
ダダダッッッ!!!
「こ、コレは一体どういうことですかな!?めっちゃくちゃSNSが荒れておりますぞ!!」
凄い勢いで我がクラスにやってきたのは、二年生の丸子円さんだった。良かった、ちょっと声をかけようと思っていたところだったんだよね。
「丸子さん!あの、さっき来た女子生徒が……」
「おお!メイド姿の裕理殿!めちゃくちゃ可愛いですな!やっぱり写真だけでなく、ナマで直接見るのが一番ですな!!」
「あ、いえ……あ、ありがとうございます?」
「なはは!っと、それよりマズイですぞ!このSNSは利用者も多いモノ!画像も拡散されまくっていて何処の誰の目に入っているかも分かりませんぞ!!」
え。
そ、そんなヤバそうなSNSだったの?いや、でも、このSNSって利用しようと思えば誰だって利用できちゃうモノだよね。
「コメントもどんどん増えて!拡散された先まではさすがに追っていけませぬぞ!このままでは裕理殿が!!!」
「わ、私が?」
「良からぬモノの餌食になるかもしれませぬーっ!!!」
餌食って、そんな……。
で、でも、こういうSNSってみんな自撮りしているものじゃない?今は、騒がれているかもしれないけれど、ほら!もう少しすれば落ち着くものなんじゃないかな……と私は気軽に考えていたけれど、世のSNSというものは、それはそれは恐ろしいものなのだと後になって分かることになるのだった……。
文化祭!それは、学校内外からのお客もおとずれる一大イベント!
そして、写メを撮ってSNSをあげようものなら、それはそれは大きな事態に!!!
さて、この流れは落ち着く!?それとも大騒ぎの一つに発展してしまうのか!?




