第四十九話 お兄ちゃんの悩み
お兄ちゃんへ。
私は最近、名も知らぬJKたちからラブレター+手作りのお菓子などなどを貰うようになってしまいました。
もちろん手紙の返事は誰にも返せていないし、お菓子を貰ったのだからお礼の一言ぐらいは言っても良いのかもしれないけれど名前も知らない女子高校生たちに私は困惑しています。正直、どうしたら良いのか分かりません。どうしたら良いでしょうか?
最近、妹の様子がどうにもおかしい。
何がおかしいって毎日のように荷物を抱えて学校から帰ってきているらしい。俺は直接その様子を見たわけじゃないが、母さんが言うには『ここのところ毎日なのよね~、何かあったのかしら~?』とのほほんと笑っているばかり。
はっきり言えば妹は何かに困っている様子だ。
いつもなら、夕飯時や家のなかで顔を合わせたときにちょっと茶化してみたりするとすぐさま飛んでくるはずの反抗的な言葉が無い。別に避けられているとかではない。元気が無い小動物のように見える。元気があるときももちろんあるのだが、だんだん覇気というものが薄れてきている気がする。体調でも悪いのだろう?いつだったか、高熱を出していたときがあったがそれも一日で治してしまうほどの健康優良児だ。
また、おかしな件にでも巻き込まれたか?
どうにも裕理は、自分でトラブル沙汰に飛び込んでいくくせに自分でなんでもかんでも解決することができると考えているふしがある。今時一人で何でもできることはたかが知れている。それも本人だって分かっているはずなのだが……。
ちょっと様子でも見てみるか。
普段なら絶対に留守のときであったとしても部屋には入れてくれない裕理の部屋。たまたまゆっくりできる日があったからと妹の部屋を覗いてみることにした。何か怪しげなものでも部屋に持ち込んでいたりしたらどうしたものか。と内心ヒヤヒヤしつつ部屋に入る。
特に怪しげなものは無し。これにはひとまず安心したのだがーーー
「なんだ、これは?」
勉強机、そしてローテーブルの上には手紙の山・山・山。丁寧に積み重ねているつもりかもしれないが、崩れ落ちていて床に散らばってしまっている手紙も多数ある。しかもそれのどれもが可愛らしいデザインの便せんばかりだった。
手紙なら読んで用無しになればゴミ箱行きにすれば良いものを、わざわざ保存しているのだろうか?ふと差出人の名前を見た。……これは、どう読んでも女子。一時期はキラキラネームだとか絶対にその漢字をあてて読み方が有り得ないような名前をしていることも流行っていたが、ここまで女の子らしい名前が並ぶのに男子、ということはないだろう。
まさか、これ全部女子生徒からなのか?
一応確認のためにパパッと手紙の差出人をチェックしていけばその名前は女子女子女子。なんだ、アイツ。女子高校生から手紙なんて貰っていたのか。なんだ、ただの手紙か……とやれやれ、と位置がズレそうになった眼鏡を直していた。
だが、あの妹がただの手紙なんぞで悩むようなタマだろうか?あの小さな体で(一般的な女子と比べると背丈は高そうだと言っているが俺からすればチビのままだ)大の男に立ち向かっていくようなヤツだ。一体どこでそんな技を覚えてきたのか分からないが、パンチだのキックだの、男に平気で拳を上げ、蹴りを飛ばすようなサルみたいなヤツだ。
さすがに手紙の内容にまで目を通すわけにはいかないだろう。もし、勝手にそんなことをしてみたら……『勝手に何してんの!?お兄ちゃんなんて大っ嫌い!!』としばらく口をきいてくれないかもしれない。それだけは避けなくては。
だが、この手紙の山が裕理の悩みの一つになっているのは明確だ。手紙で悩んでいるとすればやはりその内容も把握しておきたいところだが……それは当人から確認するとしよう。
食事まで時間がある時を見計らって思い切って妹に気になっていたことをたずねてみることにした。
「裕理。最近、お前大荷物を抱えて帰ってくるんだって?何を持って帰ってきているんだ?」
「へ!?べ、別に……ちょっと貰いものがあって」
「貰いもの?」
やはり手紙だろうか。手紙なんて一通や二通貰ったとしても大した荷物にはならない。が、妹の部屋を覗いたとき、そこには数えきれないほどの手紙があったはず。
「あ、そうだ。今日、手作りだってお菓子貰ったんだけれど、一緒に食べる?」
菓子?
既にラッピングがほどかれている中身を見ればクッキーが。見た目はザ・手作り感が満載の。ちょっとでこぼこしている感も手作りらしさが出ているが、これを俺に食べろと?
「せっかく貰ったのに食べないのは勿体ないじゃん」
「……もらう」
サクッ
うん、普通に食えるもので良かった。怪しげな何かが入れられていたらその場で吐き出す覚悟をしていたが、特に怪しげなものは入っていないらしい。甘さは、くどくなく、控え目で食べやすいと思う。
「お前、いつもこんなもの貰ってきているのか?」
「ま、毎日じゃないけれど……その、ちょっといい……?」
途端に声の声量を落としはじめる妹。どうやら内密にしたいことがあるようだ。それを兄である自分には打ち明けてくれるのか。……うん、可愛い妹だ。
「その、同じ学校に通う女子から手紙を貰うんだけれど……その手紙の返事をどうしようか考えていて。返事って書いた方が良いのかな?それとも何もしなくて良いのかな」
やっぱり女子生徒からの手紙だったのか。
それにしても今時、わざわざ手紙を書いてよこしたのか。珍しい。
「手紙の内容にもよるだろう。どんな内容なんだ?」
まさか妹のスリーサイズを教えろとか、好きなものを教えろとかだろうか。そんな手紙だったら即燃やして良いと思う。いや、俺が即燃やす。
「そ、それがー……す、……」
「す?」
「好きだとか……付き合ってくださいとか……いろいろ言われていて」
「はあ!?」
これはこれで燃やしてやりたいが、一応妹宛ての手紙だったな。
というか、差出人は女子だったよな?コイツ、同性から好かれているのか?確かにコイツはお淑やかな感じは一切無くてどちらかと言うと中性的な感じだ。世の中には恰好良い系の女子に憧れる女子が存在しているし、コイツも憧れたりして好かれたのか?というか、野生のサルそのものだ。しかし……まさか同じ年ごろの同性に好かれるとは……いや、嫌われていないだけマシなのだろうか?複雑だな。
別に妹の恋愛事に対して注文を付ける気はない。そこら辺は本人のしたいようにし、満喫してくれれば……でも、時には恋愛で迷ったり困ったことがあればいつでもお兄ちゃんを頼ってくれ!と思っていたが、まさか女子からの手紙で相談を受けるとは。
「お前はどうしたいんだ?」
「私は……せっかく書いてくれたものだし、返事ぐらいは書いた方が良いのかなって思うんだけれど」
「だったらそうすれば良いんじゃないか?」
女子相手だから戸惑っているのだろうか?俺も……いや、俺の場合同性から怪しげな手紙を渡された時点でアウトだろうな。俺にその気は無い。が、コイツはどうなんだろうか?手紙に困ってはいるようだが、手紙の内容には困っていないのだろうか?
「お前……同い年の女子だろ?そいつらから好きだとか、付き合ってほしいー、とか言われてなんともないのか?」
コイツに回りくどい言い方は無意味だ。ここは、ドストレートに聞くのが一番だろう。
「へ?どう、なんだろう。別に嫌とかではないけれど」
ううん?どっちなんだ、こいつ?今まで恋愛沙汰からかけ離れていた生活を送り過ぎていたのが災いしたのだろうか。友愛と恋愛がごちゃ混ぜになっているんじゃないだろうか?
「つまりは、女とキスとかしても平気なのかってことだよ。嫌じゃないのか?」
すると妹はボボッ!と顔を赤らめて視線をキョロキョロと動かしはじめた。あー……そういう反応するわけか。もしくは既に誰かにされているとかか……。
「平気なんだな。つか、今時のやつらは女同士でもくっつきあっててマジで交際してる関係なのか仲良い友達付き合いのままなのか分かんねぇよ。距離が近ェ。別にお前が女が好きでも俺は良いけれど。手紙だったか?特定のヤツだけに返事するぐらいなら、返事は誰にもしない方が良いんじゃねえか?そういう特別視とかしたらまた騒がれるだろ?」
女たちの嫉妬はスゲェからな……。それがコイツを巻き込んでトラブルの発端になるのだとしたらこれ以上線を越えてやり取りをするのはお勧めしない。
「そっか。……もう少し考えてみる」
「おう、そうしろそうしろ」
変なところで抜けてて、変なところで生真面目な妹。
そんな変なヤツだからトラブルに巻き込まれることもある。これは、まだまだお兄ちゃんが見守ってやらないとダメだろう。部屋に無断で入ったことはもちろん言えていないが、たびたび覗いてチェックしてみるのも妹を守る一人としては大切なことなのかもしれない。
お兄ちゃん的に同性愛とかってどうなんだろう?っていう会になりました。たぶん、自分は無し!だけれど妹が幸せになるなら異性でも同性でも良い。もしくは妙な男に引っかかるぐらいなら同性の方が……とかって考えているのかもしれません!
手紙と聞くと今だと何に使われることが多いのでしょうねぇ?ファンレターとかもあるのでしょうか。手書きはたまに良いなぁって思うときがありますよ!!
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