第四十一話 男が女性に服を贈る意味、分かってる?
えーっと、今日は遥と出かける日になりました。(遥は『デートでしょ、デート』と言い張っているんだけれど、お、お出掛けお出掛け!!外出だから!)
そういえば遥ってどんなことが好きなんだろう?今日で好みとかどんなものに興味があるのか知ることができたらまた一歩仲良しに近付けるかな?
「……足、出し過ぎなんじゃない?」
待ち合わせをしていた場所には先に遥が来ていたらしい。もう二、三分ぐらい早く行動した方が良かったかな?遅れるのだけは失礼だと思って待ち合わせ時間よりも五分前には着いたつもりだったんだけれど遥はそれよりも早かった。
それに、私の姿を見て一言、ちょっとイライラしたように呟かれた冒頭のセリフ。
私服は動きやすいのが一番!と思っている私は、服にそこまでこだわりがあるわけじゃない。でも、最低限の私服はちゃんとあるからね!
今日は遥とのデート……じゃなくて、お出掛けだったから結構歩いたりするのかな?と思ってショートパンツに薄手のカーディガンを合わせてきた。が、どうやら遥的にはお気に召さないらしい?ごくごく普通の恰好だと思うんだけれど、男子目線からするとまずかったりするのかな?
「まずは服、いこ」
スッとごくごく自然に差し出される遥の手。……ここで取らないのは逆に不自然かな?相手にも失礼かな?と思って手を取ると優しい力加減でぎゅっと握ってくれた。おぉ、こういうところはデートって感じがしなくてもないけれど、あくまでもお出掛けです!!
「遥、服が欲しいの?」
「いや、今日は裕理にプレゼントしたいんだよね」
え。
てっきり遥自身の服を見に行くかと思えばまさかの私へ!?
ちょ、ちょ……服ぐらい自分で買えるし!それぐらいのお小遣いはあります!!
「ちょっと今の裕理の恰好……他の人に見られたくないし」
そんなにご不満!?
いつもこんな恰好をしているんだけれどね!?
っていう遥は、落ち着いた色合いの重ね着とパンツスタイル。シンプルって言ったらシンプルなのかもしれないけれど無駄が無くてとても遥に似合っていると思う。きっと自分に合うファッションとか分かっているのかもしれない。
「着いた。ちょっといろいろ見て待ってて。裕理に合う服、見繕ってくるから」
「え、ちょ……」
一緒に見るんじゃないのか。
う~ん?デートと張り切るわりには私を置いてなにやらあちこちお店のなかで見回ってみては悩み、あれこれと物色していく遥。は、早い。一つ一つの動作が。
私が落ち着いて服を見る暇もなく、『はい、これ、試着してきてよ』と手渡された何着かの服。ばっちり女物。女物の服を選ぶことに躊躇とかってなかったんだろうか?
フィッティングルームに促された私は『急がなくていいから、ちゃんと全部着てきてね?』という遥からの言葉にこくこく頷くと試着室に入り込んだ。
「……スカート?それから……(カーディガンと体のラインがそのまま出てしまいそうなぴっちりと体に合うキャミソール?)」
そもそもあまりスカートを履かないから(制服は別物!)私服でこういう服を着るのはちょっと落ち着かない気がした。まぁ丈は制服のスカートと同じぐらいの丈だったから安心。もしもミニ丈のスカートとか持ってこられたら突き返していたかもしれない。
思っていた通りキャミソールは体のラインに合ったもの。さすがにこれだけで外は歩けないだろうから、その上にカーディガンを着れば外出しても変に思われはしないだろう。でも、もうちょっとクール、というか、落ち着いた色物を選んだり、私がきゃぴきゃぴしている女子っていう感じではないからパンツスタイルでも用意されると思っていたが、意外と女の子らしい装いにされてしまった。
試着室を出れば近いところで待っていたらしい遥にちょっとドキドキしつつ『どう、かな?』と聞いてみると上から下まで眺めた遥はうんうんと満足そうに微笑みながら『似合ってる。可愛い』とドストレートに感想を述べた。
う、嬉しいんだけれど……ちょっと恥ずかしいかも。
「じゃ、じゃあ着替えるね」
「ちょっと待って」
元の服に着替えようとしたところで腕をとられてそれ以上歩けなくなってしまう。遥は近くにいた店員さんに声をかけると『このまま着ていきたいので、タグの処理お願いできますか?』と言ってきたではないか!
え、えぇ!?この恰好で出かけるの!?
ちょ、ま……どうしよう、かなり恥ずかしくなってきた!
だってスカートだよ?お、女の子らしい恰好だよ!?
「恰好良い彼氏さんですね」
洋服の処理をしてくださっている店員さんからこそっと小声で話しかけられると『か、彼氏ではないので!』と言い返したい!でも、顔に熱が集まってきてしまってまともに応えることができなかった。『い、いえ、別に……』とか、『そんな……』とか全然意味不明な言葉ばかりを呟いていたばかりする。
「うん。さっきの恰好よりも落ち着く」
私の私服ってそんなにおブスでしたかね!?
もともと着ていた服は紙袋に入れてもらい、今は遥が持ってくれている。
「……ショートパンツって裕理に凄く似合ってるよ。活発そうな感じがするし。でもさ……めちゃくちゃ足出てるでしょ?」
ショートパンツってそういうものなんだけれどね。
ガックリと自分のファッションセンスの無さを指摘されたようで肩を落としていれば『う~ん』と唸っている遥。
「好きな人の体をじろじろ見られるのって嫌なんだよね」
あー……はっ!!だったらファッションセンス自体には問題は無いってことだよね!良かった良かった!!
「あと、さ。……裕理は絶対に分かってないと思うんだけれど……男が女性に服を贈る意味って知ってる?」
「意味?……えーっと、好みの服を着てもらいたいから、とか?」
「それも当たりだと思う。でも……他にもあるんだよね」
他?
他ってなんだろ……例えばマニアな服が好きだったりすれば女の子にそういう服を着させて楽しみたいとか?視覚的に楽しみたいとかだろうか?
答えをもらえないままお茶を飲んでのんびりと過ごしたり、本屋に立ち寄って好きな作家は誰だ、とか今気になってる作品はこれだ、とかって話で盛り上がった。これ、もしかしてごくごく普通に『デート』しちゃっているのでは!?
夕方になるとそろそろ帰ろっかという話になり、自宅の近くまで送ってくれる遥。めちゃくちゃ『デキる彼氏』として他からは映っていることだろう。
でも、なぁ……私的にはまだもやもやしてしまうわけで……。
「あ。そう言えば他にもある意味、言ってなかったよね」
「あぁ、服の意味?知ってるなら教えてほしいんだけれど……っと」
手をぐいっと引っ張られると抱きしめてきた遥。
一応、言っておきますが、ここは道のど真ん中です!!(人の目、そもそも歩いている人はいないけれど……)
「ちょ、な、なに!?」
「……脱がしたい」
「は!?」
「男が女性に服を贈る意味には、脱がしたいって意味もあるってこと」
……ひぇっ……
悲鳴らしい悲鳴もあげることはできず、息を飲んだ。なんか変な『ヒュッ』って音が口から出ていた気はするけれど抱きしめたまま遥は続けてーーー
「ねぇ。このままさよなら、なの?キスぐらいしちゃだめ?」
あ、ぅ……顔が熱い顔が熱い顔が熱い!!!
なんで、そんな簡単にそういうことを口に出せるの!?
「……もし僕が嫌いだったらぶん殴ってくれても良いから。……ね?裕理、今日楽しかった。ありがと……」
近い、近いよ!
遥!!このままじゃ、ぶつか……っ……
ぎゅっと目を閉じたときだった。
私の唇にフワッと柔らかいモノが当たったのは。それはすぐに離れることになって、遥も抱きしめていた腕を離してくれたおかげでお互いの間に距離ができ、気付いたら目を開けていて、目をぱちくりさせていた。
「また、デートしようね。それじゃ」
私の私服が入った紙袋を渡してくれると、遥は自宅へ向かうべく方向を変えた。ちらりと見えた横顔はほんのりと赤くなっていて、初めて出会った頃の遥を思い出してしまった。
も、もしかしなくとも……今……き、ききき……キス、されたぁぁぁぁ!?
熱いままの顔、そして行くときとは違う装いで帰ってきた私に『あらら~、どうしたの~?顔が真っ赤よ~?』と心配するママ。急ぎ顔を洗って一刻も早く顔の熱を冷まそうと努力しているのだけれど、冷たい水に触れるたびに唇に当たった感触を思い出してしまってしばらく顔の熱が冷めてくれることはなかった。
お読みいただいている皆様、いつもありがとうございます!今回、はじめて読んだ!っていう方もいるかもしれませんね。一応、言いますがGL作品を目指しています。作品的にはハーレム要素も含んでいるのですが、GL要素で楽しんでいただけると幸いです。
手が早かったぁぁぁぁ!!!しかも、なんでもやることなすことイケメン!!
ちょ、ちょっとはドキドキしていただけたでしょうか!?少しでもドキッとしていただけたのなら嬉しいです!!
ま、まさか遥とくっついちゃうの!?と先行きが気になるかた、是非『ブックマーク』や『評価』をしていただけると嬉しいです!!ご感想もいつでもお待ちしております!!




