表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

奈良県吉野郡天川村大峯山

修行場


奈良県吉野郡天川村大峯山山頂、快晴、午前11時。

今日は、ここで一般人も交えた3日間の仏教入門講座が、午後1時から開かれると聞き、私は静岡県から参加した。物好きというだけでは参加できないほどハードルの高い場所での講座ではある。事実、この山頂に達するまでの交通手段はなく、すべて自分の足で踏破しなければならなかったのだ。しかし、半年ほど前にこの講座に参加した友人が、驚くほど変わったのを見て、興味を覚え参加してみたというわけだ。

入門講座とは言っていたが、昨夜の説明会で、実際は参加者一人に対し修験者が二人ついて、個人の願望をできる限り成就させるといった内容であり、それだけで中身が濃そうだと思えた。

私についてくれた修験者は、60代前半と思われる蓑田と名乗る小柄な男性で、もう一人は30代半ばぐらいの長身の男性で桐野と名乗った。


「私は、永松陽介と言います。静岡から参りました。」蓑田は私をじっと見つめながら、よろしくと一言だけぶっきら棒に挨拶しただけだったが、桐野は講座の予定を詳しく説明してくれた。

そして、「あらかじめ気を付けておくこと……。」と前置きして、「講座が始まると、意外なことが起きます。その出来事の内容は私たちにも教えられていませんが、確実にあなたの心に変化をもたらす何かが起きます。私たち二人の役目は、その何かが起きた時に、あなたが危険な目に遭わないようにする、あるいは、危険な行動をとるのを防ぐことです。」

「?」

危険な…という言葉が私を少しの時間沈黙させたが、素人なのでそれは考えてもしようがないことと割り切って、この場はそれでおしまいとなった。ただ、蓑田はそんな私を見て、「そんなに心配する必要はないワ。」

先ほどのぶっきらぼうな挨拶とは異なって、柔和な顔で話しかけてきた。

桐野も言葉には出さないものの、頷いている。

「さあ、入山前の食事に行きましょう。」


多少、都会的な雰囲気の精進料理を粛々という感じで食べ終えた参加者は、なんとなく落ち着かない心で講座開始の午後一時を迎えた。

参加者の数はおよそ50名程度。参加するにあたって着用するように指定されていた白の作務衣姿で、思い思いに座っていた。

やがて、参加者の前に紺の作務衣姿の講師と思しき男性が登場した。


「皆様、午後一時となりましたので、講座を開始いたします。私は当寺の住職をしている藤中経哲ふじなかけいてつと申します。あらかじめお断りしておきますが、この講習は非常に体力を消耗する内容を含んでおります。大峯山の山頂ということもあり、………。」少しばかり脅かしが強いかなと思える説明が終わった。


直後に、それはいきなり私の体に襲い掛かってきた。そう、まさにそれとしか表現できない力であった。次の瞬間、それはもう消え去っていた。

「今のは何だろうと思っているでしょう。これが本当の気の力です。巷間言われている気とは全く異なっていたはずです。では、改めてもう一度気を味わっていただきます。」

本能的に体を固くして身構えたが、今度は優しい力であり、柔らかい布が体の表面を滑って行った感覚であった。


「気を自由に使える、これがこの講座の目指すところです。しかしそう簡単に会得できるものではありません。今回の講座では、気を出せるようになるまでの準備を、各自の体にセットするところまでを行います。」

二度にわたる気を感じたことで、参加者は全員、圧倒的な力を持つ存在が目の前にいることを、否応なしに認めざるを得なかった。

そして、その直後から全員が完全に受け身の状態になっていた。


最初の講座は延々3時間に及んだが、興味深い事柄が次々に提示・展開されるので、心は大いに活性化されていった。そのせいか、疲れはまったく感じない。むしろ、次には何が語られるのかの期待が、心の中でぐんぐん大きくなっていくのを実感していた。

一緒に受講していた参加者にも、目に生気が宿っており、講座を受ける身であれば普通なら眠そうな顔をしているものが必ず何名かは居るはずであるが、全員がこの場の雰囲気に浸ることが心地よいと思っているように見えた。

ただ、講師からは、講座間の休憩時間や食事・風呂の時間においても参加者同士の話は禁止されていた。その理由は説明されていなかったが、次の個人レッスンに移ってから、禁止の意味が自然と理解できるようにプログラムが組まれているとのことだったので、それ以上思い悩むことなしに極めて平静な気持ちで、次を待つことにした。


個人レッスン


「私はずっと願っていた。今の自分でできることはたかが知れている。しかし、現実には無理だなと思える能力がありさえすれば、世の中を良くすることが出来るのに……。」

「どんな能力を欲するのかな。」

「青臭いと言われるかもしれないが、世の中の腐った部分を地上から抹殺したい!」

「どんなビジョンがあるのかな。」

「自分の見える範囲で起きた汚職事件や賄賂など、政治がらみの汚い裏取引を白日の下に晒して、人間社会から事実上抹殺することだ。」

「他には?」

「ハラスメント絡みの事件を放って置けないし、勿論強盗事件や誘拐事件などの解決もしたいし…」

「それは、凄く高尚で崇高ともいえる心がけだ。しかし、それくらいなら、これからお前に授ける能力で、造作もなく実現可能だ。」

「そんなに凄い力を授けてもらえるのか。」

「今からお前に与えられる能力は、とても強力なものだから、使いこなせるかな。私を安心させてくれるならば、ずっとその能力を使えるままにしておくが、そうでない場合は……、」

「そうでない場合は?」

「ただの凡人に戻して、ここから降りてもらうだけだ。ここの記憶を消し去ってね…。」


体が傾いていたのか、桐野の手が私の体に触れた。

その瞬間、意識が戻った。今の会話は夢の中のことだったようだ。

そう勝手に思い込もうとした瞬間、蓑田がふっと顔を和ませて言った。

「今のは、あなたの心と私の会話だったんですよ。」

?私はこの瞬間、間違いなく怪訝な顔をしていただろう。

「いきなり、心と会話した経験はいかがでしたかな。この場の持つエネルギーの助けを借りて行うこの技は、下界ではまず実現できないもの。ただ、講座ではいろいろな経験をしていくうえで、頭の固いままでは疑いばかり先に立って理解できないことが多いので、少し手荒い方法ではあるが、いわゆるテレパシーを知ってもらい、心の壁を取り除くという寸法。」

桐野が言葉を足した。

「これは、あなたの心の耐性もテストさせて貰っています。こんなごく入り口の経験でさえ、錯乱状態になって山を下りる人がかなりいるんです。とにかくも、あなたは十分に余裕を持って最初のテストに合格しました。次のステップに進みましょう。」


「心の持つエネルギー量は、気のレベルでしか語られることはないのだが、もっと物質的な力をも持っているということを知っておいて欲しい。物質に働きかけて、熱し、移動し、粉砕し、固化し、浮遊させ、消滅させ、実体化させる能力を、現在の人類の中でも、ほんの一握りのものだけは生まれた時から身に付けているが、其れを意識して使っているものは、そのまたほんの一握りなのが現状だ。

しかし、この力を持った者たちを全員覚醒させることが出来たなら、世界は間違いなく変えることが出きる。それほどの力を、心のエネルギーは持っていることを、これからはいつも意識してほしい。」初対面の時のぶっきらぼうさとは反対に、蓑田は熱っぽく語った。


午後3時半からの講座が始まったが、驚くことにもう参加者は半分以下になっていた。

さっき桐野が言っていた【心の耐性】が無かったものが、30名ほどいたことになる。

確かに、心と心の会話の経験は、ひどくショッキングな体験ではあったが、いわゆる超能力の世界では当たり前に語られている言葉であるテレパシーを、実際に体験することは、普通人にとってはとんでもないことなのだろう。

「その通り、だからこそ永松さん、あなたは選択された人材としても残れたんです。」

ぼんやりと少し前の出来事を回想している自分の思考の中に、先ほどと同じような思念が言葉となって頭の中で囁いた。しかも、その声は蓑田ではなく、桐野のように感じられた。

「流石ですな。」今度は間違いなく蓑田の声。


すると目の前に、フッという感じで桐野と蓑田が現れた。

流石に少し驚いたが、この地では超能力現象は、どうやらたやすく発現できるようだ。

今度は生声で、蓑田が話す。

「永松さん、あなたはどうやら先天的にかなり精神的に訓練を積んできている魂をお持ちのようだと、我々は見ている。テレパシーと言いテレポーテーションと言い、ただの素人だったら、その現実を目のあたりにした瞬間、大いに驚愕し、場合によってはわめき叫び、はたまた、沈黙してしまう。

しかし、あなたは違う。これだけ堂々と状況を掴めているのなら、最初から高度なレベルの訓練を受けて行って欲しい。これは、我が主、藤中経哲からの伝言でもあり、われら講師陣の意向でもある。」

私は意識してテレパシーを発信しようと試みた。

「それは、願ってもないことです。まさか自分の意識が、そのような段階にあると判断されようとは思ってもいませんでした。確かに、滝行こそ経験してはおりませんが、瞑想作法を教えていただいたことがあります。また、その作法を応用して、自分なりの講座を開催していた時期も有りました。リラクゼーションが体に及ぼす影響は、かなり理解しているつもりです。」


蓑田も桐野も満面の笑みで、こちらを見ている。

「素晴らしいですよ、永松さん。完全にテレパシーをマスターしてらっしゃいますね。これなら、全く問題なく私たちの修業を、受け入れていただくことが可能です。」桐野の言葉に、蓑田も深くうなずいている。そして、一歩進み出た。

「これから、藤中経哲の部屋に参りましょう。」

内心、これは凄いことになってきていると思う反面、自分の思考は垂れ流しになってしまっていることに気付いた。ここで、面白いことに、いきなり脳の中のイメージではあるが、脳全体をシールドするためと思われる煌めくようなシートが現れた。このシートを使えば、自在にテレパシーの発信をコントールできるのかもしれない。

自分の意志で、シートを脳に貼り付けてみた。


桐野が寄ってきて、口を開いた。

「いいですね、これでご自分の思考を発信すべき時と遮蔽する時とを、操れるようになりました。シールドは完璧です。途中からあなたの思考が読めなくなりました。速やかにさまざまな技法を習得できる素地をお持ちだとの我々の見立てに狂いはありませんでした。」

それからの数時間は、藤中経哲とのマンツーマンの講義を受けることになった。

非常に密度の濃い内容であり、脳の奥底にまで浸み込んでくるような感覚の波を感じ、その波に情報が載せられてくるというイメージで、講義は進んだ。


流石に、その数時間の講義を終えると、激しい疲労感が襲ってきた。

部屋で休息するようにと言われ、桐野に連れられて付いた部屋の扉には、「高電圧注意・部外者入室禁止」と、寺にはふさわしくないような文字が書かれていた。

中に入ると確かに高電圧を取り扱う部屋のようで、かなり巨大な絶縁碍子で支えられたベッド状のものが設えられている。

「あなたは、静電気による高電位治療をご存知ですか?」桐野が口を開いた。

「どんなものかは以前に雑誌で読んだことはありますが、経験したことはありません。」

「目の前にあるのが、その装置で、かなりレベルの高いものだそうです。私自身は詳しい知識は持ち合わせてはおりませんが、私の経験では心身の疲労回復には、目覚ましい効果があります。」

「電圧はどのくらいなんでしょうか。」

「疲労度にもよりますが、最大で200万ボルトだそうです。ただ、静電気ですから電圧がかかるだけで電流は流れません。もっとも、電圧が高くなるにつれ、指先のようなとがった部分からは、ぼーっとした光を見ることがあります。これは、コロナ放電と言われる類のもので、人によっては僅かにチリチリ感を持つことがあるようですが、私は感じませんでした。」

「しかし、200万ボルトというのは、少しばかり心構えが必要になりますね。」

「そんなことはありません。ただ、リラックス状態に導いてくれて、深い眠りが訪れるだけです。センサーの働きで、体の状態の変化によって架電する電圧が自在に変化しますが、それを感じることなく、目覚めは爽快ですよ。さあ、このベッドに横になりましょう。」


促されるままに、おずおずといった感じでベッドに横になった。

「さ、ではプログラムが開始されます。ゆっくり、お休みください。」

スタートします、と機械的な声が聞こえたすぐあとから、ブーンという低い音が部屋に小さく響き始め、その音がかなり大きくなってきたなと思ったその後は覚えていない。


賦活力


単純な深い眠りだったようだ。自然に目が覚めた時、高電位療法のベッドに寝ていたことを思いだした。しかし、今はそんな装置はどこにも見当たらず、極めて普通の日本間に敷かれた布団の中にいた。

大峯山の修業の一日は終わったのかなと思っていた時、桐野が顔を出した。

「いかがでしたか。顔色が良くて、安心いたしました。」

ここで、なぜかいたずらっぽい顔になった桐野の口が発した次の言葉は、驚きであった。

「さあ、下山の用意をいたしましょう。三日間は早いものです。」

「もう三日も!?」私は時計を覗き込んだ。間違いない、あの開講のあいさつを聞いた時から、もう三日たっていた。

「驚かれたでしょう。丸二日も眠っていらっしゃったんですよ。それくらい、マンツーマンの講座は消耗するのです。でも、それに耐えられると見こんだからこその今のあなたがあるのです。そして、これからはあなたが本当に驚く番ですよ。」


テレポーテーション


「私があの高電位療法のベッドで寝た後、どなたがこの部屋まで移してくださったんですか。目覚めた時、何故ここにいるのかが疑問だったんですが………。」

「そう、まさにそこの部分で永松さんはきっと驚かれますよ。この映像をご覧ください。」

高電位療法のベッドに横たわっている私を見下ろす角度の映像がいきなり目の前に展開した。

「今見えている映像は、テレパシーと同じ回路からあなたの脳に送り込まれています。」

道理で、鮮明なはずだ。

覚醒まで、約3分…目的地の和室までテレポートする準備を開始します。?機械が発している音声か。テレポートまであと5秒。4・3・2・1!

0のコールとともに、私の体はベッド上から消えた。


画面が変わった。誰もいない和室。テレポートまであと5秒。4・3・2・1!

0のコールとともに、私の体は布団の中に忽然という感じで現れた。

何と、機械による物質伝送なのか?

「その通りです。下界においては不可能な機械による物質伝送が、この地ならではの特性で、可能になっているのです。」桐野のいつもと変わらない落ち着いた説明を聞くと、不思議と納得してしまう。


「この環境下では、いわゆる超能力はとても発揮しやすいように感じますが、ここで体得した能力は下界でも有効に発揮できるんでしょうか。」

私の問いかけに対し、桐野から即座に答えが帰ってきた。

「懸念されているとおりです。おそらく、ここで修行のとば口にまで達したくらいでは、下界では何の現象を引き起こすことはできません。超能力を発揮出来るようになるためのいくつかの条件を体得し、それをいつでも自分の意志の下で完全にコントロールできるようになって初めて、環境に左右されない真の超能力を発揮できるようになるのです。

今回の研修はすでにもう終わりの時刻が迫ってきております。この続きは、またの機会にいたしましょう。」

確かに、もう下山しなくては、明日の仕事に間に合わない。急いで支度をしていると、驚いたことに藤中経哲が姿を現した。

「永松さん、この度のご参加誠にありがとうございました。初めてのご参加でしたが、お持ちの経験や知識、そして何より精神面での訓練をすでにかなり積んでいることに鑑み、あるお誘いをここにしたためました。どうぞ、お帰りの道すがらお読みください。では、道中ご安全に。」

藤中経哲は手にしていた書状を手渡して、桐野に意味ありげな目配せをして一礼して戻っていった。


桐野はやや呆然とした面持ちで、藤中経哲を見ていた。

姿が見えなくなると、やや上気した顔で話しかけてきた。

「永松さん、ちょっと凄いことが起きたようです。その書状、今は実は開くことが出来ません。この地の影響が消えるお帰りの列車に乗りましたら、すぐにお開けください。おそらく、あなたの人生が大きく変わると思います。」

そして、さらに言葉を継いだ。

「私はここに来て以来、主君がこのような行動をとったことを見たことがありません。今、蓑田も呼びます。」

その言葉が消えないうちに、桐野の横に蓑田が実体化して、すぐに口を開いた。

「永松さん、私があなたと頭の中で会話したことを覚えていますか。その内容も覚えていますか。」

「勿論です、あんな驚くことは初めての体験でしたので。私の願うことを実現できる力を身に付けて……という内容でした。」

「これから、あなたを桐野と二人で下界の登山道の入り口近辺にまでテレポートさせます。これによって、意識を保った状態でのテレポートを経験していただきます。厳密な意味でのテレポートは、意識を移動の目的地に投射して、障害物や他人に見とがめられない状況を確認してから行うものですが、そこを今回は私たちが行ってしまいます。その後、私たち三人で同時にジャンプいたします。」


ここで、桐野がふっと消えたかと思うと、すぐに姿を現した。

「目的地、確認。」

いきなり、眼前に別の景色が見えてきた、と思ったら、もうそこに立っていた。そこは、三日前にバス停から降り立った場所から、100mと離れていない場所だった。

「目的地に付きました。間もなくバスが来る時刻です。では、近々お会いしましょう。」

あっけないほど簡単に、二人は立ち去った、いや、テレポートしていった。


書状


いったい何が書いてあるのだろう。しかし、書状は開こうにも開くことが出来ない。まだ、道場の結界の中にいるためなのか。

ここで、はっと思い立った。まだ、結界中にいるのだとしたら、自分の能力もある程度強く発現できるのではないか…?

でも、それはいったいどんな能力なのか。透視か?あるいは、モノに触ってそこから思念を読み取るサイコメトリー能力か?


いろいろと考えるより先に、書状に意識を投入してみることにした。

とたんに祝福を受けているような嬉しい気持ちが浮上してきた。いきなりの感動が心を支配してしまった。言葉が聞こえる。

「おめでとうございます。最終テストの課題をクリアしましたね。」

この声は、藤中経哲師?

「その通りです、永松陽介さん。あなたは思考だけで、思考の主を見分ける能力もお持ちなのです。そして、今あなたは私とテレパシーで会話していますが、ただのテレパシーではありません。先ほどあなたが模索したサイコメトリーによって、その持ち主のテレパシーのチャンネルを開き、そこに意識を投入する方式を取っておいでなのです。オヤ、間もなく、結界を出る地点を通過します。その後、どんな変化が現れるかよく観察しておいてください。では、失礼します。」


半年後


永松陽介は、新宿中央公園を見下ろすビルの10階で、カウンセリングを行っていた。

心理カウンセラーは、国家資格と民間資格があるが、そのどちらも持っていないので、心療の看板は出せないが、口伝てで広がる評判はだれにも止められないものだ。

今の永松のオフィス「遊泳」は、宣伝の類は一切していないが診療を受けたい予約客で溢れている状態になっている。


理由は簡単。誰もが持っている悩みを、心の襞から掘り起こして読める能力を使い、解決策を直接、細胞の記憶にインプットできるのであるから、余計な悩みなど発生させる余地を与えない。そんな目覚ましい効果をだれしも実感できる療法なので、予約が殺到するのも無理はない。何しろ、一度の診療を行えばたちどころに悩みが解決してしまう。


あまりに評判が立ってしまうと目立ってしまうので、1日限定5人までと診療対象を絞ったせいか、妙なプレミアム感が自然と醸成されてしまい、思惑とは裏腹に評判はいや増していった。

この手の評判が立ってくると、キワモノを求めている三流週刊誌が接触してきたが、自分の能力をおちゃらけに使うことが目に見えていたので、二度目の電話の時に拒否のイメージを心に焼き付けて、再度接触しないように処理した。


体得した能力のおかげで、忙しい日々を送ることになってしまったが、それなりに「診療」を続けていると、厄介なことも起きてくるものだが、永松が持つことになった能力は、一度でも人的接触さえあれば、その後はリモートでもその対象となる人物に精神的処置を行うことが可能なので、大概のトラブルは避けられる。何より、通常は必ず巻き起こる金銭に絡むトラブルは、事実上起きてみようがない。それは、税務署でも同じこと。すべて予防できるということは、何と素晴らしいことなんだろうと、永松はつくづく思っていた。


しかし、人間は飽きることを知る動物である。今のままでは、新しい展開は開けそうもない逼塞感を感じ始めていた時、いきなり大峯山からの招待状が届いた。

「永松陽介殿

貴殿のご活躍は、この地でも伝わってくるほどの評判を得ているようで、誠に喜ばしいと思います。しかし、既にお感じになられているように、この状況をただ続けていることに若干のモヤモヤをお持ちではないでしょうか。

このお手紙は、そういった将来に向けてさらに何かをしたいというお考えをお持ちの方にお届けしています。


つきましては、以下の要領で、当寺でのフォローアップセミナーを開催したくご案内申し上げます。………………」


開催要項などの記述の後に、不思議なことが書いてあった。

「なお、参加したいとのご希望をいただければ、当日朝8時にお迎えに上がります。なお参加を希望される場合は、その旨思念を飛ばして頂ければ、それで完了します。」

私はそんなに自分のテレパシーの能力を普段考えもせずにいたが、改めて普段の診療の手順を手繰ってみれば、人の心に深く食い込んで情報を取ってきて、それを修正し、正しい情報を焼き付けているわけだから、かなりもう手練れの域に達していることになる。

改めて、かなり凄い能力を磨いてきているテレパスになっていたことに気付かされたのが、この手紙であった。


開催日まで、あと10日ほどあったが、私は躊躇うことなく「参加します。」と強く思念した。

思念を送ったとほぼ同時くらいのタイミングで、「そんなに息巻かなくても、十分思念は届いていますよ、永松さん。」と、いきなり生身の人間の声が聞こえてきた。桐野であった。

「お久しぶりです。強力なテレパシーですね。随分、訓練されていらっしゃるんですね。」桐野は嬉しさを顔いっぱいに浮かべて、私の右斜め前の地上から5cmぐらいの場所に浮いていた。

空中浮揚。超能力にあこがれを抱いた子供達なら、必ず一度は夢見る能力。しかし、実現することは、皆無。そう信じられてきた事実が、今、目の前に実在している。大峯山のあの特殊な場-結界-の中でなら、様々な能力が比較的楽に実現できているものの、ひとたび結界から外れれば、普通人は普通の能力しか発揮できないはず。しかし、桐野にはそれが出来ていて、現にこうして極めて安定した状態で浮いている。


「今回のフォローアップセミナーでは、今のこの私と同じことを体得して頂くことが、一つの課題に挙げられています。」

「その空中浮揚をですか。」

「そうです、ただし、それは一つのツールであって、空中浮揚を活かして様々な能力を開花させていきます。それと、もう一つ、お伝えしておくことが有ります。これから、私と一緒に弥山の山中までテレポートしていただきます。」

「今の私でも、テレポートが可能なのですか。」

「いい質問です。半分可能というお答えは如何ですか?」桐野はいたずらっぽく笑ってから言葉をつないだ。

「今回、私のアシストが有れば、今の永松さんなら十分テレポートできる精神的能力をお持ちであると、導師である藤中経哲が言っておりましたから、間違いないでしょう。」

桐野はさらに続けて、こういった。

「これから、セミナー開催の日までの10日間余りを使って、私が毎日テレポートの訓練にお邪魔します。お仕事の方は、だんだんと抑えて、出発に備えてください。いくらテレポートと言っても、ここから奈良の山中までとなると、それなりの体力を使いますので、セミナーの休み時間に、一時的にここに戻ってカウンセリングを続けることは、流石に無理ですから。」


そして、訓練が開始されたが、それは、予想したよりもハードなもので、到着予定地点をまず透視して、安全であることを確認し、加えて他人に見咎められないことも確認したうえで、はじめてテレポートするわけで、透視そのものに最初は戸惑っていたが、そこは講師陣が見込んだ「訓練を積んだ魂」なので、速やかに能力は向上していった。

訓練に慣れるにつれて、体の疲労度が減じていくようなった。そのことを桐野に伝えると、それは、体のエネルギーを効率的に利用できるようになったからとの答え。

そして、もう一の重要な発見があった。それは、テレポートする地点間の距離の大小を、普通の認識しか持たない一般の意識レベルで考えてしまいがちであることである。

しかし、その感覚は、テレポートの訓練が進むにつれて希薄になって行った。距離はあくまで気持ちの上での遠さであって、実際にはこの力が働く世界は、距離の概念が異なるのか………?


訓練もかなり佳境に入ってきた6日目の朝、私は桐野に疑問をぶつけてみた。

「桐野さん、2日ほど前から疑問に思い始めていたことなんですが、最初、弥山迄のテレポートは、体力的の………とのお話でしたね。でも、最近はそんな感じがしなくなってきて、自分の限界はあるかもしれませんが、距離感を意識しなければ、かなりの長距離でも何の問題もないのではないと考えるようになってきたんです。」

「流石ですね、実はその通りです。その意識をお持ちになれたのなら、今、この瞬間でも、弥山までテレポートはできるのです。早速、試してみましょう。」


弥山山頂


「最初は私がリードしますので、あとをついて行くくらいの気持ちでいて下さい。では、まず着地点を俯瞰しましょうか。」

桐野は軽い調子で話している。私は彼の見ているビジョンをおすそ分けして貰うような気分で、弥山山頂の着地点を眺めた。すると驚いたことに、藤中経哲がこちらを見上げていて、エッと思う間もなくテレポート自体を終了してしまった。

経哲は目を細めて、私に話しかけてきた。

「いかがですか、特大のジャンプを終えた気分は。」

「導師、永松さんは素晴らしいですね。いきなり、着地点透視モードからテレポーテーション動作に切り替えても、何のためらいもなく追随してきていました」

桐野は私と経哲を交互に見ながら、やや上気した様子で早口で語った。

「そう、彼の先祖にとってはそれくらいのことは、たやすかったのですよ。実はもともとの能力自体は、彼の魂が何代にもわたって修行してきた成果でもあるのですよ。」


そんな二人のやり取りを、私は少しばかりこそばゆさを感じながら聞いていた。ふいに経哲が振り返って、ニヤッと笑いながらこう言った。

「永松さん、今この地でなら、あなたはもう空中浮揚はいとも簡単にできますよ。桐野さん、少しだけ手伝ってあげてください。」

その言葉が終わるか終わらないうちに、体が浮き上がった。

「浮き上がったこの感覚を覚えてください。いったん、降ろしますので、この感覚をなぞって浮き上がってみて下さい。」

たったの一回で、分かるものなのか少しばかり懐疑的になりつつも、気持ちの上では浮き上がろうと強く念じた私の体は、余りの集中のためにそばの木立のてっぺんまで一気に飛び上がってしまった。意外なほどの高度に、一瞬で到達したことに私はたじろいでしまった。

「前回のテレパシーの時と同じですね。力まないことです。」

桐野がそばに浮かんできて、のんびりと話しかけてきた。経哲は少し離れてニコニコしながら眺めているだけである。

再び経哲がのんびりと言う。

「折角ですから、このまま本堂に向かいましょうか。」


個人レッスン-Ⅱ

「永松さん、一般に知られている超能力の種類はどのくらい有るかご存知か。」

久しぶりに、蓑田が講師であった。私も、超能力と言われているものの種類に興味を持ったことが有ったが、頭の中は整理されていない。思いつくままに声に出してみた。

「先ほど経験したばかりの空中浮揚や空中移動、それに、テレポーテーション、念力、念写、テレパシー、プレコグニション、ポストコグニション、クレヤボヤンス、エンパス、タイムワープ、サイコメトリー、パイロキネシス、物品引き寄せ、テレキネシス、記憶交換………。う~~~ん、これくらいですか。」

「かなりの数を知っておるな。後、ヒーリングや幽体離脱、物体通過なども有る。」


ここで、いったん蓑田は黙って何か考えているようであったが、ゆっくりと口を開くとこんな質問をしてきた。

「超能力は、世間一般で思われているような事実だけではないのだが、それはどんなものか考えたことは有るかな。」

いきなりの基本的な質問であった。

いろいろな能力を頭に浮かべながら考えたが、明快な答えは見つけられなかった。

「では、ヒントを出そう。テレポーテーションをするときの手順を思い返して下され。」

その言葉を聞いた瞬間、答えが分かった。

「いきなりのジャンプは事故に繋がりますから、着地点を事前に透視して安全確認を行いました。単独で能力を発揮できる場合もありますが、例えば、空中浮揚とか空中移動の時には、雨や風、そして高空になれば酸素の欠乏に対する対策も必要ですね。それと、………」

「永松さんは、本当に諺のように、一を聞いて十を知るタイプのようじゃ。おっしゃる通り、いくつもの能力を合わせないと、自分の身に危険が及ぶことがあるわけで、そのための対策を瞬時に編み出せること自体も能力と言える。では、空中移動の時に、………」


と、このような具合で、蓑田との訓練は半月ほど続いた。

そして、ある日の午後、いつもの本堂の中ではなく、離れの小振りの講堂で訓練しているときだった。いきなり蓑田が疲れを見せる顔に変わった。

「永松さん、突然で申し訳ないが、少し疲れがたまってしまった。今日はこれで終わりにする。しっかりと訓練についてくる意気込みがとてもアグレッシブなので、ついつい自分の体力を考えずに訓練を進めてしまった。明日は、丸々一日、休養することにしよう。」

確かに、このハードな訓練は、教える方にもかなり負担はかかるであろう内容だったので、今日はもう終了と思ったときの会話であった。蓑田は少し体をかがめながら、ゆっくりとその場に座り込んだ。

いきなり、私の口が勝手にしゃべっていた。

「もし、私で良ければ、少し生体エネルギーを注入させていただけませんでしょうか。」


ここで、考えもしない展開が待っていた。

「素晴らしい、永松さん、さっそくここでやってみましょう。」

藤中敬哲がその場に現れたのだ。桐野も一緒に。

思わぬ助言をもらったのに意を強くして、自分の感性を信じて蓑田にエネルギーを注ぎ始めると、桐野からサポートするかのような別のエネルギーが照射されて、蓑田の様々な部位を私に指し示している。

その指示に従って、必要と思われるエネルギー量を加減しながら注入作業を続けた。


「はい、そこまで。」藤中敬哲のしっかりとした声が響いた。

「永松さん、ありがとうござる。」と言って立ち上がった蓑田はなぜかしてやったりの顔である。

藤中が言った。

「蓑田さん、あなたの役者ぶりは大変なものですね。永松さんの潜在能力を見極めて、ヒーリングの奥義を、この短時間で試された。しかも、結果は見ての通り、適確で見事な対応ぶりを示された。」

何と、今のも訓練の一部だったのだ。


いつもは控えめな桐野が、やや上気した風で、言葉を発した。

「エネルギーを注入する作業は、実は相手の体の状況を見極めて、必要な型と必要量を相手の反応具合によって適切に調整する難しさがあるのですが、ガイドエネルギーを発している私がうらやましくなるほど見事な調整ぶりでした。それにしても、蓑田さんは注入されているエネルギーを必要としないほどご自分のエネルギーに満ち溢れていらっしゃるので、そのエネルギーを本堂で訓練されている他の参加者に分けていらっしゃる。いや、勉強になりました。」


そばで見ていた藤中は、満足の笑みを浮かべながら、しばらく佇んでいたが、いきなり「ついてらっしゃい。」と声を発しながら、ジャンプした。私たち3人が、後を追ってジャンプした先は、本堂の参加者のど真ん中であった。


昇格

本堂の中には、10人ほどの修行参加者が厚めのマットレスに整然と横たわっていた。

「導師、皆、休憩時間に入ったばかりで、いきなりこのように眠ってしまいましたが、先ほどまでの講義で何か特別疲労するようなことが有ったのでしょうか。」

講師陣がジャンプしてくる光景には既に慣れているのか、いきなり声をかけてきた男性がいた。助手なのだろうか、恐らく30歳前後。

蓑田が手を上げて、手の平を前に向けて口を開いた。

「大きく二つのことが起きた結果、参加者がみな寝入ってしまったのだ。しかし、今はそれを説明する段階ではない。あなたがもう少し進級したら、その講義を授けることになる。」


「進級か?」永松は、何気なく、その言葉だけ頭の中で反復してみた。

「そうですよ、修行のレベルはかなり細かく設定されています。けれど、永松さん、あなたはいわゆる飛び級で訓練の段階を走り抜けてしまうので、我々としては、あなたは自分で先を切り開いていく開拓者としての目で見守っているだけです。時折、少しの刺激、そう、先ほどのヒーリングパワー発現に蓑田さんが手を貸したようにね。」

桐野の説明が頭に響いた。彼の言葉はいつも簡潔なので、理解しやすい。

「そして、もう一つ付け加えるならば、あなたが蓑田さんに投入したエネルギーを、彼がここの参加者全員に分け与えたのです。この安らかな状態は、結果的にあなたの投じたエネルギーによって得られたリラックスと言えます。」

今度は、藤中経哲が思考に割り込んできた。

この時、永松の頭に閃いたことは、講座初日の冒頭で導師が参加者全員に気を放ったことを思い出し、それに近いものを自分が発したのではないかという思いであった。

ただ、あの時は1回目と2回目では、気の性質がかなり異なったという確とした記憶が有ったので、気というものは、一律なものではなく、相手を思いやる状況に応じて、無限のバリエーションを持つものかという漠とした概念が頭に浮かんだ。

そこまで考えが及んだとき、フッと答えが映像のフラッシュバックの形でもたらされた。

それは、自身が運営している新宿のリラクゼーションサロン「遊泳」で、訪れてきた人々一人一人に対して異なったアプローチをしている自分の姿であった。

確かに、このサロンでのヒーリングは、すべて個人毎にチューニングして行っている、というより、人の心は多様であり、画一的になど対応できないものという前提でカウンセリングをしているのであるから、当然の帰結と言える。


「導師」と桐野が声を発した。

「永松さんの心的エネルギーの深耕は、私から見てすでに現在の育成プログラムの最終段階をクリアーしていると判断しています。今ご自身で気付かれた内容が、…」

いきなり、藤中が手のひらを桐野に向けて言葉を制し、話し出した。

「桐野さん、あなたの言葉を遮って申し訳ない。皆迄申す必要のないことです。それは、もうこの地でこのような場でこれだけの結果を出してきたことを踏まえて、次の段階に進んでいただきたいとの結論を、申し述べることにいたしましょう。」

藤中の横で蓑田がほほえみを浮かべながら、同意の意思を頷くことで表現している。


千日行


藤中が口にした「次の段階」とは何を指すのだろうか。一般的な修行においての、所謂、普通の超能力的な技術については、ほぼマスターしているとのお墨付に近いものを貰った今、何が次に控えているのか見当がつかないでいた。

永松にしては、ここまで順調すぎるくらい順調に訓練を重ねてきたと、桐野にしても蓑田にしても、そして藤中も同じ認識を示している。


「アッ、!」答えがいきなり降ってきたので、思わず声が出てしまった。

導師たちは、その瞬間を待っていたかのように口を開いた。

「さ、永松さん、今聞いた声を教えてくださいますか。」

藤中がゆっくりと言った。

「先ほどのヒーリング体験は、結局私の発したエネルギーを蓑田さんが道場の訓練生に分けていたとの部分にヒントが有ったのですね。」

永松が三人に同意を得るかのように、言葉を切った。

桐野が口を開いた。

「そこまでは大変に見事なお答えです。では、その先を続けてください。」


永松は多少上気しながら、珍しく答える声がやや小さい。

「では、私一人の個人のエネルギーは、いったいどのくらいの影響力を持っているのかの疑問に辿り着きました。さらに、自分一人ではなく、他からの応援をいただいてエネルギーを合わせるとか、あるいは、自然界などのエネルギーを利用させていただくことができたなら、エネルギーをコントロールするだけで、自分の負担は最小限で済ませることができていながら、今は想像もつかない影響力を持つことが可能になるのでは………。」


「見事、見事ですぞ、永松さん。」

蓑田が感情をあらわにして、軽く拍手している。

「先ほどのヒーリング訓練でそこまで考えが及ぶのが、永松さんの特性とは思っていたが、ますます以て素晴らしい。」

蓑田の興奮が伝わってくるような声の大きさであった。これほど蓑田が感情をむき出しに

するのは、初めて見た。


藤中がつつと永松の前に歩を進めた。おもむろに懐からなにやら書物を取り出して、永松に手渡した。

「よいですかな、これは、禁断の書ではなく、荒唐無稽の書と敢えて申し上げる。内容はまさに破天荒なもので、普通に読んだのならただの創作としか思えないかもしれないが、実際に起きたことが、本人の手によって綴られておる。この書を読んで、あなたがどのような行動を取るか、私たちは関知しない。もちろん、危険が及んでも、自己責任で処理してほしい。

目的だけ申し上げる。これは、昔から伝わる深山幽谷をめぐる激しい修行である「千日行」が形を変えて世の中に出てきたと思って欲しい内容となっておる。

その修行と同等のものを身に付けて、この弥山に帰山していただけることを願うものである。」

桐野はじっと目を閉じていたが、カッと目を見開いて強い語調で話し出した。

「永松さん、あなた自身の理性を信じて、行動していただければ、危険は及ぶことはない。しかし、好奇心が勝った場合には、その結果は予測不可能であることも伝えておきたい。」


【第一部 了】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ