闘鶏の真実
【分水嶺】
分水界(地上に降った雨が二つ以上の水系に分かれる境界)になっている山の屋根。転じて物事がどうなっていくかが決まる分かれ目。
時は平安末期。武士が二つに分かれて戦う中、一人の男は迷っていた。その内容はどちらの陣営に味方すべきかということ。彼はこの地域で一大勢力を誇る水軍を率いる立場についており、彼の決断が武士たちの勝敗を左右すると言っても過言ではない。
「平氏につくべきか。源氏につくべきか」
男が部下にそう問うと、ある部下は「源氏につくべきだ」と声を上げ、ある部下は「平氏につくべきです」と進言した。
男とその部下がいくら話し合っても結果は出なかったため、男は天に任せることにした。彼らは闘鶏神社に行き、赤い鶏を平氏、白い鶏を源氏として戦わせることにした。
話は少し前に遡る。
男の元に密偵として潜り込んでいた源氏方の男は密かに焦っていた。源氏の勢いは火を見るより明らかであり、少々の説得で彼らが源氏方につくと思っていたからである。
(時流すら読めぬ愚か者たちめ……)
彼は内心男たちを馬鹿にしていたが、それで男たちを味方につけるという任務が失敗に終わっては堪らない。どうにかして説得しようと、戦略上のことから、武将の人柄まで、使えるものは何でも使って説得をしようとした。
しかし、話は纏まらなかった。平氏も密偵を送り込んでいたのか、議論が白熱してしまったのであった。
「では、天に任せようではないか」
神仏を信じる男が言った。他の者も「そうだ」「それが良い」と賛同し、試合が三日後に執り行われることになった。
白を源氏、赤を平氏として戦わせると知った時、密偵の男は血の気が引いた。
(天に任せる? 冗談じゃない。こちら側が圧倒的に不利ではないか)
白の鶏は体が弱い個体が多い。彼は普通に戦っては一勝することすら難しいと分かっていた。
彼は方法はないか考える。一瞬でも騙せれば良いのだ。男たちが源氏に一度味方をしてしまえば、水軍が強い平氏と言えど、すぐに決着がつけられる。
彼はその日の晩、闘鶏神社に忍び込んだ。
「奇跡だ!」
「これが神のご意志だというのか!」
結果は源氏方の圧勝。七回中七回が白い鶏の勝利に終わった。こうして、彼らは源氏方として戦うことに決め、平氏を滅亡へと導いたのだった――。
「奇跡は作るものだ」
男たちが盛り上がる中、冷めた口調である男がそう呟いた。
「赤い方が原種に近く体格が大きく、昔の白い鶏はアルビノみたいな感じだった」と聞いて、思いつきました。歴史上の出来事をモデルにしていますがフィクションです。実際にあったかもしれないし、なかったかもしれない。勝つ確率が1/2とすると、七回連続で勝つのは1/128。無いとは言えませんが、そう都合よく勝てるとは思えませんね。
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