両親に捨てられた僕が結婚するまでの話
こんにちは。今日野 おかずです。
趣味で小説を書いています。
初投稿で年齢制限があり、限られた人しか読めない小説から始まりましたが、時々誰でも読める小説も投稿しようと思っています。
僕の名前は髙橋 凪。十六歳。十六歳と言ったら、だいたい高校生ぐらいの年齢だろうか。
僕は3才の時に病院に行った時、脊髄小脳変性病と診断された。
病院の先生によると、運動失調やふらつきを中心とした神経変性疾患で、治療方法は今のところないらしい。父さんに病気の事を話されただけで、神経変性疾患という言葉の意味はよく知らない。
診断されたその日から、薬を飲んだり体を動かしたりして治療を始め、5年ほど前から入院してリハビリをしている。
僕には母親がいない。僕が脊髄小脳変性症を患っていると聞いた時、1人でどこかに逃げてしまったらしい。多分、病気の僕を育てるのが嫌とか、そういう理由。
だから母さんがどんな人で、どんな性格なのか分からない。
父さんは、仕事で中々お見舞いに来られないと言っている。
そして、僕が入院している病院の近くには、小さな公園がある。
毎日そこに来る子供は少し変わるが、楽しそうに遊んでいるのを見るのは暇つぶしにちょうどいい。
別に学校に通ってみたいだとか、大きな病気にかからず、普通に学校に通っている学生が羨ましいとか、思ったことはない。
僕には友達や両親の代わりに、僕には担当の先生がいるからだ。
「凪くん、おはよう」
「先生、おはようございます」
彼の名前は田中 純。僕の面倒を見てくれる先生で、「田中先生」と呼んでいる。
「そんなに硬くならなくていいのに~」
先生はよく「硬くならなくてもいい」と言う。
僕は、その言葉を「先生の口癖」として認識している。
「もうすぐ朝食の時間だけど、今日は食べれそう?」
「…少しだけ」
「待っててね」
先生はそう言い残して出て行った。
数分後、朝食を持った先生が来た。片手にはスプーンが握られている。湯気と共に、食欲をそそる匂いがする。どうやら、今日のご飯は雑炊らしい。
先生はスプーンで一口分の雑炊をすくって、息で熱を冷ました。
「はい」
――僕に差し出している。
スプーンを受け取ろうと手を伸ばすが、「やだ。『あーん』したい」と言われてしまった。
もうどうにでもなれ、と雑炊を口の中に入れる。
「はい、どーぞ」
「まさか、これを無くなるまで……?」
「え、普通そうじゃないの?」
「…ごちそうさまでした」
少したって、お皿の中にあった雑炊はもう無くなった。
先生がお皿を持って部屋を出た。
(今日のご飯、少ししょっぱかったな……)
そんなことを思いながらボーっとしていると、
「あれ……?」
何かが頬を伝っていったのを感じ、頬に触れる。
触った手は濡れていた。
「涙…?」
先生から聞いたことがある。「ストレスが溜まっていたら、自然と涙が出てくることがあるんだ」と。
今日は、先生に『おはよう』と言ってみようと思う。
先生とは長い付き合いだし、反応が見てみたい。
「田中先生、……おはよう」
「…へ……!?」
先生は驚いた顔で、固まってしまった。
しばらくして、先生は顔を赤くして泣き始めた。
「凪くんが……僕に『おはよう』って…、言ってくれた…!」
「そ、そんなに泣かなくても」
「わあぁあん!」
先生は急に僕の体に抱き着いてきた。
「田中先生、また騒いでるんですか?」
白衣を着た男の人が注意をしにドアを開ける。
「やだなぁ、院長。患者さんとお話してるだけですよ」
「はぁ…。次、声が聞こえたら担当変わってもらいますからね!」
「は~い」
今みたいに、先生は誰かに注意されても、真面目に聞いていないような表情で返事をする。
「凪くん、文字書いてみようか」
「…うん」
先生から紙とペンを受け取り、落ち着いて字を書いてみる。
やはり、その文字はふにゃふにゃとした形をしている。
「あらら」
先生が僕の書いた文字を見て苦笑する。
「じゃあ、次はアシストありで」
そう言って、先生はペンを持った僕の手を自分の手で覆う。
そして、手を動かして僕の名前を書いた。
「おー、出来たじゃん」
その後も、図形や五十音を紙が文字だらけになるまで書いた。
少しすると、先生が夕食を持ってきてくれた。
夕食を済ませて窓を見ると、外はもう真っ暗だった。この病院では完全就寝時間は九時。時計を見ると、5分前だった。
「おやすみ」
短い言葉が聞こえ、扉が閉まる音がした。
「おーい、朝だぞ」
「ふご…」
朝、先生の言葉で起きた。体はベッドから起こされていて、先生に抱かれている状態だ。
(……!…もしかして、いびきかいてた…?)
昔から、いびきが酷いのが悩みだ。もしかしたら、いびきをかいていたかも……。
「可愛かったよ」
「絶対うそ…」
「うん、確かに酷いいびきだったけど」
「やっぱり」
「素の凪くんが見れて嬉しい」
今までで一番と言えるほど、先生がニコニコと笑っている。
「……凪くんおねがい、一回だけ!一回だけでいいから、『おはようのキス』を!」
「え!?なんで……」
「だってほら、だいたいのカップルは毎朝『おはようのキス』してるじゃん!」
「僕たちカップルじゃない…」
「ねぇお願い、一回だけ……!」
「う……い、一回だけなら……」
僕から許可が降りた瞬間、先生はベッドに座っていた僕を押し倒した。少しい病室に、子供のようにはしゃぐ先生はもういない。
吸い込まれるように先生は顔を近づける。
時間が経ち、少しこの件で少し気まずくなったが、先生は何も無かったかのように僕に接してくれた。
そしていつの間にか夜になり、いつもとは少し違う一日が終わった。
朝起きると、先生がいない。
体は熱く、汗が滝のように流れている。
今日はなんだか体がおかしい。
「凪くん、おはよう」
「……おはよう」
まだ昨日の件で少し気まずい。
音がした方に目を向けると、水と薬を持った先生がいた。
「様子おかしかったから、薬」
「薬、飲みたくない」
「…嫌なの?」
先生の言葉にコクリ、と頷く。
呆れた顔をした先生は、ゆっくりと僕の体を起こして、薬を自分の口へと放り込んだ。
(……!?)
先生が顔を寄せてくる。照れ隠しに顔を下へ向けるが、僕よりも一回り大きな手に掴まれ、喉を反らすように固定された。
開いた口から舌が侵入し、薬を喉奥へ押し込もうとしている。
口の中で薬が溶け、薬の苦さを耐えかね、唾液とともに薬を飲み込んでしまう。
「ちゃんと飲めたね、良い子良い子」
数回優しく頭を撫でられる。
その手に、暖かさを感じて安心する。
「あ、一応水飲んでおこうか」
先生が水が入ったコップを差し出す。
コップを受け取り、恥ずかしさと共に飲み込む。
さっき水なしでカプセルを飲み込んだからか、コップに入った水を飲み干しても喉が痛い。
「先生、僕の病気って…、治らない?」
「うーん、症状が改善されるけど、治療方法は今の所見つかってないな~」
「そっか……」
「完全には治らないかもだけど、生活に影響が出ないところまで、リハビリ頑張ろ!」
「…うん」
――複雑な気持ちのまま時間が経ち、寝る時間になってしまった。
朝起きると、また何かがおかしい。
試しに数メートル先の手すりまで歩いてみる。
すると、少し立ってから倒れてしまった。
――歩けない。足に力が入らない。
近くを通りかかった看護士さんが、僕の体を起こして、車いすを持ってきてくれた。
しばらくすると先生が来て、「症状が悪化したのかも」と言った。
先生が、僕を車いすに乗せて広い中庭まで連れて行ってくれた。
そこで、一日中先生と色んなことを話した。
僕の病気のことや、将来のこと。友達のこと。それ以外にも、沢山話をした。
部屋に帰ってきて、頭まで布団をかぶって考え事をしていると、いつの間にか寝ていた。
――深夜、目が覚めてしまった。外は少し明るい。
「そうだ」
(父さんに電話してみよう)
LINEを開く。最後にLINEでメッセージを送った日付を見ると、4年前だった。
「……え?」
一週間前に、メッセージが更新されている。
でも父さんからは何の言葉もなく、電話番号だけ。
さっそく、電話番号を入力して電話を掛けてみる。
「悟……、悟おじさん…?」
悟おじさんは父さんの友達で、何回か会ったことがある。
通話ボタンを押して、少し時間が経ち、繋がった音がした。
「…もしもし」
「……凪か」
「悟おじさん…、僕のお父さんは?」
「はぁ……。お前、知らないのか。――お前は捨てられたんだよ」
「え――?」
「お前は捨てられたんだ。……こっちは仕事で忙しいんだから、もうあまり電話は掛けてこないでくれ」
ブツリ、と音がしてから、誰の声も、何の音も聞こえなかった。 そして僕は、父さんのLINEをブロックした。
――僕には、家族も親戚も、いない。
「お、いたいた」
先生の声がした。
「…って…大丈夫?何か…悲しい事あった?」
「え……?」
「今、凪くん…泣いてる」
そう言って、先生は指で僕の涙を拭った。
先生に、今さっきあったことを話す。
「…もし、凪くんが生活に影響があまり出ない所まで症状が改善されて、退院したとする。そうしたら、凪くんは家族がいなくなったから、生活が難しいよね?」
「…うん」
先生の話した言葉に、心が痛む。
先生は、僕の手を握りながらゆっくりと話している。
「じゃあ、僕と2人で暮らせばいい。そうしたら、僕も凪くんと暮らせるし、凪くんも生活に困らないから、一石二鳥だ」
ものすごいドヤ顔で先生は言った。
「でも、先生…。左手薬指に、指輪……」
先生の左手薬指には、指輪がある。
「ん?ああ、これ大丈夫、独身を隠すために付けてるだけだから」
「血繋がってない……」
「大丈夫、結婚したことにすればいい」
「僕未成年だけど…」
「退院した頃には二十歳超えてるんじゃない?」
「……」
「…そっか…うん、大丈夫」
「……?」
「人って、ぎゅーってされたら元気が出るの。……ほら、おいで」
そう言いながら、先生はそっと部屋の鍵を閉めた。
椅子に座った先生にゆっくりと抱き着く。
(多分、こっちが本性なんだろうな)
そのまま膝の上に乗った状態で数十秒が経過した。
すると、先生は僕の着ている服の中に両手を入れて、腰に触れた。
脇腹にかけて両手が移動する。
「…あ…っ」
背中に回した腕に力が入る。
――鍵は掛かっていても、大きな声を出せば周りに聞こえる。
そんな事が頭に浮かんだのか、先生は声を消すようにキスをした。
口がこじ開けられ、わずかな隙間から舌が入り込んだ。
からめとるようにして舌が触れる。
「びっくりした?」
すると、先生はズボンに手を入れようとした。
「そこは…、ダメ…、」
「大丈夫、続けてたら慣れてくるから」
「…っ…、」
「凪くん、顔真っ赤…、…可愛い」
「……っ」
余計顔が赤くなるような事を言われてしまった。
「…凪くんごと食べてしまいたい……」
そんなことを呟きながら、先生は僕の首を舐めている。
「先生…っ、」
「ん?」
「…嫌…、…」
「なんで?女の子じゃないんだし、妊娠しないじゃん」
「…でも…」
「これならいいの?」
先生が顔を近づける。しかし、先生は僕が思っていたこととは少し違うことをした。先生は、吸血鬼が血を吸うときみたいに首に唇を押し付けている。
少し時間がたった。
――扉の向こうから足音がする。
その足音はどんどん近づいてくる。
「もう気づいたか…よし、凪くんが二十歳超えた時、続きしよ」
――5年後――
「だから『寝ぼけて体触ってくるのやめて』って言ってるのに!」
「寝ぼけてるんだから仕方ないじゃん!」
「ねえ純ー、僕ここに朝ごはん置いてたんだけど、知らない?」
「あ、凪の朝ごはんだったの?僕の朝ごはんだと思ってさっき食べちゃった!吐いたら食べれるけど、どうする?」
「いらない!」
今日も、僕たちは急いで準備をする。
「あと5分で家出るから、凪、早く早く」
「ま、待って。僕のネクタイ」
「えー、トイレとかに置き忘れてないの?」
「それスマホにしか通じないから!」
「ネクタイは放っといて、ほら、『おはようのキス』は?」
「今日は無し!」
「じゃあ明日二回ね!」
「はーい」
純は、急いで僕を車いすに乗せて、家を出た。
いかがでしたでしょうか。
作者的に、最後のシーンが一番好きです。
感想や、好きなシーンをコメントに書いたりしてくれると嬉しいです。
これからよろしくお願いします。




